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60話「……もう帰ろ」



「付き合ってください」


 文化祭準備の喧騒から離れ、校舎裏まで連れてこられた僕は開口一番そう言われる。

 隣のクラスにいたことは覚えているが、名前は思い出せないこの少女。

 さすがに、「何に付き合えばいいの?」と聞き返すような人間ではないので、覚悟を持って答えようと頭を回す。

 そうしているうちに、言葉が足りないと思ったのか付け足してきた。


「加賀谷くんはあたしのことなんて知らないかもしれないけど、あたしはあなたのこと見てました。

 笑い方とか、声とか、全部好きです。

 ……幼馴染の子と仲が良かったのも、分かってます。

 でも……付き合っては、いないんですよね? なら、あたしと付き合ってください」


 真っ直ぐな告白の言葉。

 ああ、久しぶりに告白された。中学の頃も何度かあったけど、やっぱりこの感覚は慣れない。

 下手な言葉で断ったら傷つけてしまう。

 別にそれでもいいと言えばその通りなのかもしれないけど、勇気を出して告白した人を冷たくあしらうのは、なんと言うか自分の中の美学とか哲学とかに反する気がして嫌だった。


「ごめんなさい。君とは付き合えないよ。僕は君のことを何も知らないし、そうじゃなくとも今は誰とも付き合う気ないし」

「っ! なら、お試しでどうですか? ちょうど文化祭もありますし、その時にでも……」


 半泣きになりながら食い下がる女子生徒に対して、胸が締め付けられそうになりながらも首を横に振る。


「僕は……あんまり軽い気持ちで付き合おうとか思えないタイプなんだ。ごめんね。ほんと、ごめん」

「そう……ですよね」


 まだ何か言いたげだった女子生徒は、そこまで言うと首を横に振って言葉を止める。


「今日は、時間をくれてありがとうございました」


 女子生徒は涙声でそう言うと、僕を置いてその場から去っていく。


「はぁ……」


 思わず口からため息が漏れる。

 なんかどっと疲れた。

 朝からずっと文化祭の準備をしていた肉体的疲労感と、今の精神的疲労。二つが重なってもう何もしたくないくらい疲れている。


「……もう帰ろ」


 時刻はちょうど16時を回ったところだ。

 離脱する人が出てきてもいいだろう。まだ準備初日だし……無駄に豪華なことしようとしてるから、5日間準備に費やせるとはいえなかなかキツそうではあるけど。


 僕は教室に戻ると、委員長を見つけて話しかける。


「ごめん、なんか疲れて頭痛いから今日は帰っていい?」

「あ、そうだな。うん、人一倍働いてもらってるから、今日はもう大丈夫だ。休んでくれ」

「ありがと……また明日ね」


 僕は礼を言うと、鞄を持って教室を出る。

 ……なんか、ここ最近ずっと調子が悪い。


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