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11話「やっぱりこうなった」



 やはりと言うべきか、やらかしたと言うべきか、僕は今風邪をひいていた。

 というのも、昨日体育で小野が僕にばかりパスを回しやがったせいで僕の限界を超えて動くハメになったのだ。そのせいで僕の体はあっさりダウン。免疫が低下したせいで簡単に風邪をひいてしまった。


「……休むか」


 体温計に表示された38.1という数字を見て、僕はそう決めた。少し頑張れば学校に行ける程度の倦怠感だが、無理に学校に行くと心配をかけてしまうし、風邪をうつすのは申し訳ないのでやめた。

 くるみと学校に連絡を入れて、朝食としてパンをインスタントコーンスープに浸して食べる。

 するとくるみから『わかった。絶対安静にしてね?』と返信が来たので、『わかってるよ』と返す。


 朝食を食べ終えて使った食器をシンクに置くと、大人しくベッドに戻る。

 スマホで動画を探して観ていると、すぐに眠くなってきたのでその眠気に身を任せて寝ることにした。


 いくら風邪だといえ寝続けることはできず、12時くらいに目が覚めてしまったので、仕方なく起きてキッチンに向かう。

 お茶漬けの素を、昨日の残りのご飯にかけて、そこにお湯を注ぐ。

 できたお茶漬けをぱぱっと食べて、朝と昼の分の食器を洗う。

 だいぶ調子が良くなったので、汗で湿った下着を変えて、洗濯機に放り込む。洗濯は明日まとめてしよう。

 暇になってしまったしせっかく家にいるので、掃除機をかけることにする。

 リビングと自室、廊下に普段は誰も使わない父の寝室、それと客間やトイレなど、一通り思いつくところに掃除機をかけて回る。

 普段なら鼻歌を歌いながら掃除するのだが、歌おうとしたら咳が出たのでやめた。


 その他一通りの家事を終わらせると、いよいよやることがなくなったので、テレビをつけてゲームをやる。

 やるのは最近流行りのFPSだ。やり込んでるわけじゃないからそんなに上手くはないけど、その分敵も同じくらいの強さの人が多いので、特にイライラすることもなくゲームができる。あんまり負けてイライラするタイプじゃないし。


 しばらくプレイすると疲れを感じたので、ゲームをやめて本を読むことにする。この前買った本をまだ読めていなかったので、この機会に読んでしまう。

 本と栞を持ってきて、ソファーに座って本を読む。





「体調はどう?」

「っ! びっくりしたぁ、くるみか……」


 急に後ろから話しかけられてびっくりして体を震わせてしまう。

 慌てて振り返ると、よく知った顔だったので、安心して体の力を抜く。


「って、風邪うつすから来なくていいってメッセージ送ったじゃん……」

「見たけど無視してきた。だって、どうせ綾人安静にしてないでしょ?」

「いやいや、安静にしてたよ?」

「じゃあ、今日は掃除できてないんだね? 任せて」

「あ、いや、掃除はさっきしたよ?」

「じゃあ食器洗いは?」

「それもさっき……」


 僕がそう言うと、くるみはわかりやすくムスッとした顔をして、腕を組む。


「掃除も洗い物もしておいて安静にしてたとは言わない」

「でもほら、洗濯はしてないし火も使ってないよ?」

「家事してる段階で安静じゃない。

 ……はぁ、きて正解だった。夕飯は作る気だったでしょ?」

「……ソンナコトナイヨ」

「片言になってるし……はぁ、風邪治ったら殴る」

「……できれば優しく」

「やだ。

 はぁ、ほんと綾人は……今日の夕飯はわたしが作るから」

「え、でも…」

「わ、た、し、が、つ、く、る、か、ら」

「……お願いします」


 いつにも増して強い圧に耐えきれず、諦めて頼むことにする。


「安心して。料理どころか家事全般壊滅的なわたしだけど、綾人が風邪引いた時の食べ物の作り方だけは叩き込まれてるから」

「え、なんで……?」

「こういう時に作るため」

「……毎度毎度本当にお手数をおかけして申し訳ございません」

「そう思ってるなら早く治すために安静にして欲しいんだけど」


 いや、自分では安静にしてるつもりなんだけど。

 どうも、よく風邪をひくせいでだんだん耐性がついてきて、多少の熱なら余裕で動けるようになってしまってる。

 動けるのに家事も何もしないのも申し訳なくてついつい家事をしてしまう。


「ま、まだ作り始めるには早いし、綾人が家事してたせいでやることもないから、ゆっくりするけど」


 くるみはそういうと、僕の隣に座ってスマホを触り始める。

 僕は手元に持ってきていたペットボトルのスポーツドリンクを一口飲んでから、本の続きを読み始めた。

 しばらく読んでいると、ふと思ったことがあって、なんの気無しに質問してみる。


「そういえば、くるみって僕風邪引いてる時には変なこと言わないよね」

「へんなこと?」

「変なことは変なことだよ。その……ヤろう、とか……」

「ああ……だって、風邪引いてる時にそう言われても困るでしょ? 風邪引いてる時くらい気を遣ったりはする」

「……なんかごめん」


 思ったよりもちゃんとした理由があって、そういう質問をした僕の方が申し訳なくなってしまう。

 てっきり、なんかまたくだらない理由なのかと思ってたから……


「まぁ、熱っぽい顔でうっすら汗かいてる綾人見て何も思わないわけではないけど。というか押し倒したい」

「オイ」


 前言撤回。謝って損した。

 僕が不満げな表情をしていることに気が付いたのか、くるみは「冗談だよ」と言うと、夕飯を作りに台所へ向かう。


 ちなみに、くるみが作ってくれたおかゆは、普段の料理もどきとは違って、ちゃんと食べられるものだった。


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