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【短編版】頑丈王妃は、国王陛下に愛されたい

作者: 林檎

 


「ウィレミナ、私はそなたを妃として迎えるが、愛することはないだろう。それでも、嫁いでくれるか」


 自ら輝くような金の髪に大空を写し込んだかのような澄んだ青い瞳の、びっくりするほど美しい造形の人。

 若く、国民に大人気の国王陛下にそう言われて、私はこの方に憂いがないような返事をしなくては、と思い、


「ええ。私も陛下のこと、ちっとも愛していませんから大丈夫です!」


 と、元気に答えた。

 父が隣でヒュッと息を呑む音が、やけに大きく謁見の間に響く。



 私の名前は、ウィレミナ・ブリング。

 建国以来、国に忠誠を誓いお仕えする伯爵家の娘だ。

 隣にいるのが、その父。国史を編纂する部署に代々就いている、現ハノーヴァ伯爵。母のアマンダは、今私の目の前で玉座にお掛けになっている、国王陛下・ライアン様の乳母をしていた。

 そのライアン様は、ちょっと目を細めてから僅かに笑う。フッ、てカンジ、美形は何しても絵になりますね!

「……そうだな。こちらから愛さないと言っているのに、そなたにそれを強いるつもりはない。王子を育て、最低限の公務をこなしてくれればいい。そなたから何か希望があるなら、聞こう」


 しかしそこでふと、陛下は形の良い眉を顰める。

「……ああ、だが、他の男と恋愛することは許すことが出来ぬ。悪いな」

 直球。

 私が愛人でも作ってどこぞの馬の骨の子供とか孕んだら、ちょっとややこしい問題になりますものね。

 その点うちは兄様達は順調に出世してるし、社交界デビューを控えた器量よしの妹達もいる。私一人が恋の一つもせずに子守に青春捧げても、お家としてはノーダメージ。

「いいえ、陛下もご存知の通り、私はもう恋なんてこりごりなので問題ありません」

 私がにっこり微笑んで言うと、陛下は苦笑した。


*


 この十日前、私が婚約者である男に盛大に婚約破棄を宣言されたのは、この国の社交界に出入りしている者にとっては非常に新しい記憶だ。それは陛下も例外ではない。

 あろうことか、その「前」婚約者は王家主催の夜会会場に、婚約者の私ではない令嬢を伴って現れ、

「婚約者の分際で、指一本触れさせない堅物女のお前となんて、婚約破棄する!!」

 と大声で叫んだものだから、さあ大変。開いた口が塞がらなかったわ。

 だってそうでしょう? 結婚するまで清い身を守るのは淑女の務め、それは婚約者に対してだって変わらないこと。

 だというのに別の女を連れてきて、そんな理由で婚約を一方的に破棄しようだなんて、連れてきた令嬢は貞淑を捨てている、と言っているも同じだもの。

 まぁ、その前婚約者はベロベロに酔っぱらっていたし、令嬢の方は真っ青になっていたので、大方どれほど寵を得ても結婚出来ないことに業を煮やして、酔った勢いで私との婚約を破棄させよう、て女の魂胆だったのでしょうけれど。

 意気込んで着いた先が王族主催の夜会じゃあ、のぼせ上がった酔いも恋も一気に冷めるってものよね。


 私と言えば、悲しいことにその場の誰も私を助けてはくれなかったので、仕方なく自分のナイトは自分で務め上げた。

 今説明したことを大勢の前で詳らかに指摘して身の潔白を示し、むしろ前婚約者の有責で婚約破棄をつきつけてやったのだ!

 あれは我ながら見事な逆転劇だった、王都一の劇場で演目になってもいいような武勇伝。ただし、喜劇だけどね。

 さすがに婚約破棄は認められたけど、私は私の強さを証明しちゃったもんで、今後私に求婚しよう、だなんて思う紳士はいなくなってしまった。仕方がないので弟妹の世話をして、弟妹が結婚したらその子供を世話して、子守として生きていこう。

 と思ったら、たった一人いたのだ。

 それが、来賓として夜会に来ていたこのライアン陛下。


 その陛下は六年前に即位と同時期に結婚しお妃様を迎えたが、彼女は男子を一人産んですぐに亡くなってしまった。

 元々体の弱い方だったと聞いてはいるが、妃としての仕事やプレッシャー、そして出産、と立て続けに起こったことに御身が耐えられなかったのだという。お可哀相に。

 そんなわけで次に国王陛下が二人目の妃に望んだ条件が、一も二もなく丈夫であること。

 先のお妃様の子である、王子様を過不足なく育てることが出来ること。

 さらに、重ねて、丈夫であること。

 それはもはや、鉄板と結婚なさった方がよろしいんじゃございませんこと??


 もうお分かりですね、特技はケーキを等分に切り分けること、木登りから落っこちる幼い弟をキャッチしたこと数知れず、の長年培ったちびっこのお世話メソッドにはちょっと自信のある、大家族の長女・私に白羽の矢が立ったのです。選考理由、頑丈!!

 ちなみに私、八人兄弟です。今の母は二人目。お父様ったら、やるぅ。


*


 陛下は、私を見てあの華麗な逆転劇を思い出したのか、口元を手で隠す。

「あれは非常に見物……ではなく、大変な災難だったな」

「ええ……ですが、おかげでこんな素晴らしいお話をいただけたのですから、人生どう転ぶか分からないものですね」

 今見物って言った! 絶対言った!! この王様、美形だし優秀だけど、食えない男~~~~


「私、公務などを行えるような才女ではないのですが、お役目が務まりますでしょうか」

 びしばしと私が陛下を睨みつつ言っても、彼はしれっと答える。

「構わん。これまで妃は不在だったのだ、これからも公務は適宜別の者に任せる、最低限の役目をこなせば問題ない」

「…………それって、王子様に既に乳母がいるわけですし、私自体必要ないのでは?」

 不思議に思ってつい言ってしまうと、父がまた息を呑む。大丈夫ですか、息吐いてますか?

 しかし寛大な陛下は頷き、私の疑問に答えてくれた。さすが非公式の会談、無礼講のおかげで命拾いしたわ。

「私に次の妃を娶れとうるさい輩が大勢いてな。その点そなたの父は要職だが、権力闘争に無縁の部署だ。家の格はやや劣るが……歴史のある家柄だしな」

 そりゃあ国史の編纂部署って絶対必要だから要職と言われているけれど、実質閑職ですものね! 有史以来ずっとその部署で代々務めている我が家の国内での位置づけはつまり、そういうことです。

「なるほど。女避け」

「一言でいえば、そうだ。嫌か?」

 金の髪に神々しいまでの美貌の王様は、そんな風に仰る。


 ここで不敬だの何だのと言われるのならば、このお役目は断るつもりだったけどさすが王様、こんな条件を引き受けてくれる貴族令嬢なんて他にいませんものね。

 乳母は乳母をやりたがっている貴族夫人は大勢いるし、妃になりたい貴族令嬢はもっと大勢、それこそ山ほどいる。でもどちらも、となると途端に誰もいない。

 しかも、皆が一番欲しがってる権力と寵愛はナシ。

「……わかりました。謹んで、お受けいたします」

 私がにっこり微笑むと、謁見の間に漂っていた何ともピリついた空気が緩む。ピリつかせたのは、私だけどね!


「ですが、ひとつ質問が」

「許可する」

「王子をお育てするのに、陛下は参加なさらないんでしょうか?」

 私は少し考えてから、そう訊ねた。再び場は凍り、陛下は秀麗な眉を顰めた。

「……それを任せる為に妃を娶るのだ。それに、世話自身は乳母がいる筈だが」

 親はなくとも子は育つ。

 私自身、実の父母はどちらも仕事で忙しかった為、ほとんど育ててくれたのは血の繋がらない現在の義母だし、血の繋がりなんてなくても義母のことを敬愛している。

 まして相手は王子様。世話をする者にも遊び相手にも事欠かないだろう。

「実の息子を育てるのに、全く関わらないおつもりですか? それが王家の方針だというのなら、構いません。陛下自身に意思があるかを確認したいだけなので」

 それでも母親役は必要だろうと妃を娶りまでするのに、実の父親は何もしないのかな、と疑問に思っただけだ。

「嫌味な言い方をしておいて、よく言う」

 くっ、と愉快そうに陛下の唇がつり上がった。


 ああ、前言撤回。

 血の繋がりなんて気にしていないような言い方したけど、やっぱり多忙を理由に放っておかれたことは、私、ちょっと根に持ってるみたい。

 先代お妃様はお亡くなりになっているので責める筋合いじゃないけど、陛下に関してはせっかく生きて同じ王城に暮らしているのに、全然王子に関わらないなんてそりゃないんじゃない? て思ってる。

 自分のことを陛下に八つ当たりしちゃってるみたいで申し訳ないけど、王子様のことを考えてもあながち的外れなお話じゃない筈。


「いいえ? 御多忙な陛下に過ぎたことを申しました」

「急に殊勝になられても、気持ちが悪いな」

 乙女に失礼な。ちなみに父はまた隣で息を呑んでいる、本当に大丈夫ですか?


 でもでもだって、この機会を逃したら陛下に直接聞ける時なんて来ないかもしれないし、次世代の王を育てるなら方針はハッキリしておきたいところじゃない!?

 ほんの少しの後悔と怯え、でも必要なことだという自信に裏打ちされて、改めてしっかりとその場に立った私に、陛下は鷹揚に頷いてくれた。

「分かった。確かにアマンダの娘なのだから間違いない、と思ってそなたを選んだが、今日顔を合わせたばかりの者に丸投げするのは、王としても父としても無責任だな」

「ですね」

 つい小声で反応しちゃうと、陛下は片眉を面白そうに上げる。お父様はもう息してないかも。

「小癪な。……まぁいい、王子を育てることに、私も出来る限り関わると約束しよう」

「……それがよろしいかと」

 王様ったらフトコロが深いわ。一国民として誇らしく思います。

「だが、私は本当に多忙だ、そこは留意しておいてくれ」

「勿論です、その為に私が呼ばれたんですものね」

 美しい所作で礼をしてみせると、陛下はあからさまに呆れた溜息をついた。

「まったく……ハノーヴァ伯爵。そなたは、いい娘を持ったな」

「は……! 身に余るお言葉でございます……」

 陛下の言葉に、何とか息を吹き返したお父様が頭を下げるので私も倣う。


 今、絶対、陛下は「いい娘」、のところを「いい性格した娘」ていう意味で言ったわよね。皮肉だ!

 ちらっと陛下を見上げると、彼は大層ご満悦にニヤニヤと笑っていたので、私は自分の想像が当たっていたことを確信した。

 そちら様も負けず劣らず、いい性格ですこと!


 *


 陛下との会談後、王命であった為婚姻届をすぐに書き、何事もなく承認された。

 一人目のお妃様であるルクレツィア様がああいう最後を迎えたので、ということで私が二人目の妃となったことは、ごくシンプルに発表されただけで式や祝いの会もなし。

 新人の働き手でももう少しお祝いされるのでは? とつい愚痴ったらその日の内に部屋に高価なワインが届けられた。プレゼントで私が絆されるとは思わないで欲しいわね! まぁ。美味しかったけど。


 そして翌日、件の王子様にお会いする日。

「お前、お母様のアトガマを狙ってるのか」

 手にはおもちゃの積み木を持ち、しかしながら随分尊大な口調で仰る、五歳児。この国の唯一の王子様、ディーノ殿下だ。

 同じ美しい金の髪で、陛下にそっくりの将来を約束された幼いながらに整った造形。瞳は青みの強い紫の瞳なので、こちらはお母様似なのかしら、とっても綺麗だわ。

 ふくふくのほっぺは子供らしく、白い頬は愛らしく紅潮している。見た目は、まごうことなき天使だ。


「殿下には、お初にお目にかかります、わたくしウィレミナ……」

「名などどうでもいい。おい、答えろ!」

 癇癪のように積み木を投げられて、周囲にいたメイド達が悲鳴を上げる。

 それを私が危なげなくキャッチすると、皆の目がハッとした。弟妹相手で子供の癇癪は慣れてるわ、挨拶も名乗りも許されずに向けられるとは思わなかったけど。

 積み木の城のてっぺんにそれを置くと、私はにっこりと微笑んだ。あまりのにっこり加減に、ディーノ様は何か引いている。失礼ね。驚くのはこれからよ。


 私はディーノ様の向かいの椅子を自分でさっ、と引くと、そこにどかっと座った。

 これには周囲も目を剥く。そりゃあそうだ。私はド新人かつ二日目とはいえ、誓約書を交わした以上は身分は王妃。お妃様なのだから。こんな粗野な動きは王城の人にはあり得ないだろう。

 でも今はこのお子様の度肝を抜いて、私を「私」として認識させる必要があるの。普通の宮廷人やってたんじゃ、殿下にとってはただの下々、それじゃあダメなのよ。

「お答えしてあげるわ、王子サマ」

 ぴん、と小さな可愛いお鼻を弾いてやると、彼はむっと唇を尖らせた。なんて愛らしい。

「私はあなたのお母様の後釜を狙ってるんじゃないの、既に正式に後釜なのよ」

「嘘だ!」

「嘘じゃないわ。昨日きちんと結婚誓約書にサインして、大司教様に認められたもの。陛下と私は夫婦よ」

「嘘だ嘘だ!!」

 がしゃーん! とテーブルの上に積み上げられていた積み木が、床へとなぎ倒される。慌てて片付けようとメイドが駆け寄ってきたので、それを手で制した。いちいち片付けても、どうせまた散らかされるんだから、話が終わってからで構わない。

「本当よ。国王陛下でも、大司教様にでも、誰に聞いてきてもいいわよ」

「う……だって」

 ディーノ様は顔を上げて、視線を彷徨わせた。迷子のようなその姿に胸が痛くなるが、この子を傷つけたいわけではないのだ、きちんと話さなくては。

 やわい子供の身も心も、大人の無神経で傷つけることがあってはならない。

 ディーノ様は年の割には賢いが、癇癪が多い、とは先に話を聞いておいた乳母の言だ。彼女も私も、原因は分かっている。これまでは対処しようがなかっただけ。


「でも、私はあなたのお母様じゃないわ」

「え……」

 ディーノ様が驚いたように私を見つめる。ようやく、「私」を見てくれた。

「あなたのお母様は、一人だけでしょう?」

 そう言うと、ディーノ様はこくりと頷く。

 五歳の子供が遊ぶには、対象年齢が低い年季の入った積み木。これは先代王妃様、つまりディーノ様のお母様が生まれてくる子供の為に用意したものだ。

 それを大切にすることと八つ当たりをすることは、この子の中では矛盾していない。ディーノ様は行き場のない思いをぶつけていたのだ。

 私は椅子から立ち上がると、ディーノ様のすぐ傍に膝をつく。彼の青紫の瞳は、何をするんだろう、と不思議そうに私を追っていた。

 素直で可愛い子。屈託がなくなったら、きっともっと幸せそうに笑ってくれる。


 私は彼の母親ではないし、母親にはとうていなり得ないけど、でも彼が真っ直ぐ育っていく手伝いは出来る。

 思いが大きすぎて紐解く方法が分からない時に、ヒントを与えて一緒に考えることなら、出来る。


「ディーノ様のお母様は、ルクレツィア様だけです。今までも、これからも」

「……そうだ、僕のお母様は、お母様だけだ。……なのに、ここに来る女は皆、新しいお母様が欲しいでしょう、と言う」

 無神経甚だしい発言に、その「女」とやらに怒りが込み上げる。

「そんなの無視して大丈夫! 私が保証します」

「……お前にホショウされてもな」

「あら、私王妃ですよ? この国で二番目に偉いんですから、信用出来ますでしょう?」

 実際のところは、権力ゼロなので信憑性もゼロですけどね。でも母親を亡くして、寂しがっている子供に私利私欲でそんなこと言う女は悪! で間違ってないでしょう?

「二番目にえらいのは僕だ」

「え、嘘、私じゃないんですか?」

「僕だ! お前は」

「お前、じゃなくてウィレミナっていう立派な名前があります」

「……ウィレミナ」

「はい、ディーノ様」

 ふふ、と微笑むと、ディーノ様は私の手を握った。小さな手は意外と力が強くて、離さないとばかりにきゅっと握られると、胸が締め付けられるような気持ちになる。


「……さっきは積み木を投げて悪かった」

「そうですね、人に当たったら危ないので、もうやめてください」

「うん……ウィレミナ」

「はい」

「……お母様になりに来たんじゃないなら、ウィレミナはここに何をしに来たんだ? お父様のことが好きなのか?」

 なんて可愛いんだろう。母親に成り代わられる不安が消えると、次は父親を取られてしまうことを心配している。

 これは思っていたよりももっとずっと、家族の愛情に飢えているみたい。乳母は遠慮しすぎているのかしら?

「私の方にも事情があって、陛下のことを好きだから来たんじゃありません。今ここにいるのは……」

「いるのは?」

「ディーノ様の家族になりたくて」

「家族?」


 ディーノ様は瞳を丸くする。

「ええ。夫婦だって、血が繋がってなくても家族にはなれるんですから、私とディーノ様も頑張ったら家族になれると思いませんか」

 私がそう言うと、ディーノ様は悩むように唇を尖らせた。何でしょう、可愛らしい。

「まだお前と」

「ウィレミナ」

「……ウィレミナ、と会ってから少ししか経ってないから、分からない」

「それもそうですね。じゃあお互いを知る為に、一緒に過ごしてみましょう」

 ぱちんと手を打って提案すると、ディーノ様は困惑しつつ頷く。

 私に裏がないか考えを巡らせているんですね、本当に裏なんてないんだけど確かに突然現れた女がこんなこと言ってくるのって控えめに言ってうさんくさいよね。本当に賢い子。


 全力で頑張るつもりではあるけれど、私は別に何か保育的な資格を持つ者でも経産婦でもない、ただ小さい子供の世話をたくさんした経験があるだけの、うら若き乙女だ。

 まだまだ経験足りないし勉強もする必要があるだろう、ここからは乳母や他の世話役達ともよくよく話し合って、ディーノ様との家族としての関係を育んでいきたい。

 きっと陛下は実母のような、愛情や安らぎ、時にはきちんとディーノ様を叱れるような役割を私に要求しているのだろうけれど、そんな「理想的な実母」なんてどこにもいないでしょ。

 子供が百人いれば、お母さんも百人いて、その子とそのお母さんにとってのベストな形があるだけで、その形は百通りある筈だ。

 でもディーノ様が次代の王で、私や乳母達の所為でモンスターに育ててしまっては大惨事。


 *


 と、いうわけで大見栄切ったものの不安になったので製造元にも関わってもらおうと、陛下と妃の夕餉の場に王子も招待してみました。

 テーブルはなるべく小さく! と指定したので、部屋は広いが私達三人が囲むのはサイズはごく普通の丸テーブルだった。ディーノ様は子供用の椅子にちょこんと座り、とても緊張しているが、父親である陛下をキラキラとした瞳で盗み見ている。

「あら、このワインは初めて飲みますわ」

「……ああ、西の新しい産地のものだな」

 元々時間のある時はなるべく夕食は一緒に摂る、というのは決まり事だったのだ。おそらく陛下なりに愛のない結婚の埋め合わせと、何か不満はないかを聞く為に時間を設けてくれているようだ。

 それが食事の時間を兼ねていて、結婚して数日経つがこれが初めての機会なあたり、本当に忙しい方。

「そうなんですね……美味しい。とっても好きな味です」

「まだあまり流通していないが……そなたが気に入ったのならば、少し多く入れるように言っておこう」

「まぁ、ありがとうございます」

 そして息子を育てることに出来る限り参加する、という言質もいただいていたので、今夜だけは何としてでも来てください、て陛下にお伝えしてもらって、見事マッチング成功! やーいい仕事しました、私。


「ディーノ様、もう少しソースかけますか?」

 本来貴族の食卓って夕食は子供と摂らないものだけど、うちは家族が多かったこともあって皆で食べていた。面倒が多いし、騒がしいけど、コミュニケーションの場としては最適だし、美味しいものを食べていると気持ちも幸せになるから、割と砕けて話しやすいと思うのよね。

 少なくともお見合いみたいな状態よりは。

「い、いや、いい……」

「そうですか? このソース、美味しいですよ」

 とはいえ、最近知り合った年上の女友達の食事に招かれて行ったら、滅多に会えない父親がいて王子様は固まってしまっているし、久しぶりに会う自分のミニチュア版みたいな息子にどう接したらいいのか陛下も困惑しているらしく、ぎこちない。

 ご飯を食べればいいんですよ、ご飯を! 何の為に会談じゃなく、食事の席に集めたと思ってるんですか、ご飯を食べる為ですよ。

「……仲がいいな、そなたらは」

 陛下は柔らかい視線でディーノ様を見て、私に視線を移す。え、なんでこっちをそんな優しい顔で見るんですか? ドキドキしちゃうじゃないですかっ

「えっと、ライアン様! ディーノ様は数学が得意なんですよ。陛下もそうなんですか?」

「ん? ああ、そうかもな……」

 陛下はちょっと考え込む。それを見て私はピンときた。


「さては陛下、苦手科目とかないタイプですか……」

「……そうだな」

 嘘でしょう? 私は目を丸く陛下の麗しいお顔を見つめてしまう。正しくは睨みつける。

 王子に生まれて、この容姿で、苦手なものがないとか神様は不公平! ちょっとぐらい息子とギクシャクしてるぐらいがお似合いよ!

「ということは、数学がお得意なのはルクレツィア様の方でしょうか? 羨ましいです、私は数字関係が本当に苦手で。領地経営の手伝いをしている時も、怖くて何度も確認してましたから」

 お肉にナイフを入れながら言うと、二人はハッとしたように私を見た。亡くなった方のお話をするのはタブーですか?

 これは内心ビクビクだったけど、今やルクレツィア様の思い出話を出来るのはお互いぐらいしかいないのだから、出来ればクリアしておきたい。

 ダメだったら私が顰蹙を買うだけで、お互いを責めたりはしないだろう。

「……そうだな、ルクレツィアは数学理論の本を好んで読んでいた」

「そうなのですか!?」

 それを聞いて、初めてディーノ様が反応した。

 ライアン様も一瞬驚いたようだったけれど、すぐに落ち着いて頷く。


「ああ、ルクレツィアはこれといって不得意なことのない才女だったが、好んで読んでいたのは恋愛小説よりも数学の理論や哲学のものが多かったな」

「哲学! 哲学は、まだ僕には難しいのですが、興味のある分野なのです……!」

「そうか。そなたはあの賢いルクレツィアの子だ、少し早いかもしれぬが興味のある分野があるのならば、学習に取り入れてみるか」

 え、それは本気で言ってるんですか? ディーノ様はまだ五歳ですよ?

 と、私は陛下を睨むが、親子は何やら打ち解けてしまっている。頭のいい人の考えること、わかんなーい。お肉美味しーい。


「あ、ディーノ様、お野菜残してますよ。全部食べる約束じゃないですか」

「そっちこそ、キノコ残してるぞ。まずお前……じゃない、ウィレミナから全部食べる見本を見せろ」

「はーん? 置いてただけですし? 食べますとも」

 大人の余裕で苦手なキノコを口に入れたが、顔には出てしまっていたらしい、ディーノ様もライアン様もニヤニヤと笑っている。そっくり親子め。

「……ほら! 食べましたよ、次はディーノ様の番ですからね!」

 私がそう言うと、ディーノ様は嫌そうに可愛らしい顔を歪めたが、ここはライアン様も加勢してくれる。

「そうだな、ウィレミナは食べたのだからディーノも食べなくては」

「……お父様は、苦手な食べ物はありますか?」

 ディーノ様は迷うように野菜に視線を巡らせてから、時間稼ぎのつもりか初めて自分からライアン様に話を振る。

「うん? ……そうだな、幼い頃は苦みのある山菜はあまり好まなかった覚えがあるが……苦手という程ではなかったか」

 ほらね、完璧人間め! 私は内心で陛下を罵る。何となくそれを察したライアン様はこちらをチラリと見たが、すぐにディーノ様に視線を戻した。セーフ!


「大人になるにつれて、味覚が変化していくものだ。だが、今苦手なのはすぐには変えようがないな。では私が半分請け負うので、半分ならば食べることが出来るか?」

「え、お父様が半分食べてくれるのですか?」

 子供の頬が紅潮し瞳が煌めく。私は思わず胸が熱くなってしまった。

 私や、乳母や、その他の誰も、ディーノ様にこんなにも嬉しそうな表情にさせることは出来ない。

「ああ。だが、次は一人で食べるようになれ」

 ほんの僅かに、ライアン様が微笑む。

「はい!!」

 ディーノ様が元気に返事をして、苦手な野菜を半分こする親子を眺めながら私は何とも言えない気持ちを味わっていた。


 胸は高鳴るし、少し焦りのようなものも感じる。

 素晴しい光景を見たと思い、ズルいと囁く声も聞こえる。

 二人を近づけてあげたかった。それは本当。だけど今疎外感のようなものを感じていて、でもこれは寂しさじゃない。


 もっと後になって分かる。

 これは、嫉妬だ。


 では、誰に対して?


 *


「……最近陛下を見ているとモヤモヤするんですよね」

 この城の中で、私がこんな話を出来る相手なんてディーノ様しかいない。麗しい天才児は、さっそく哲学の入門本を読んでいて、分からない箇所は自分で辞書などを使って調べている。

 本当に頭がいいんだなぁ……と感心する横で、私も淑女教育として刺繍をさせられています。繕いものは得意なんだけど、刺繍ってこう……美的センスがいるよね! 難しいね!!

「……それは、恋というやつではないか?」

「………………本の話ですか?」

「ウィレミナの話だ」

 私は衝撃を受け、まず糸の始末をしてやり掛けの刺繍を脇に置きディーノ様の広げている本に恋などという文字が並んでいないことを確認して、また着席すると首を傾げる。

「私?」

「なるほど、ウィレミナは驚くとそういうカンジになるのか……」

「私を観察対象にしないでください」

「身近な人をよく見るのは大切なことだと、本にも」

「そこは本の話!?」

 大声を出しても、部屋の端で控えているメイド達はちっとも気にしない。私が来て早々、慣れるのが早いわね彼女達も。

「何も不思議なことではないだろう? お父様は美しく、とても魅力的な男性だ、好きにならない方がおかしい」

 ディーノ様の父親大好き全開の言葉に、私は微笑ましい気持ちになりたいのに、内容の所為で浸ることが出来ない。


 これが、この気持ちが恋!?

 浮き立つような感覚と身が震えるような衝撃、でもすぐに現実が戻ってくる。

 最初にそもそも愛することはないだろう、と言われているので、この恋は前途多難だ。

 それに何より、


「ディーノ様は嫌じゃないんですか? 私が陛下を好きになるの」

 最初は母に成り代わられること、父を取られることを厭っていた子だ。

 せっかく仲良くなれたのに、これで関係が悪くなるのならば生まれたての恋心なんて殺してしまいたい。

「嫌じゃない」

「ええ? どういう心境の変化です……」

 あっさりとした返事に、私は驚く。割と最近のことですよ!?

「あの時は、得体の知れない女が入ってくるのが、嫌だったんだ。でももうお前は……ウィレミナだろう?」

 テーブルに乗せていた私の手をきゅっと握って、ディーノ様は微笑む。

 その笑顔はまさに天使……!!


 王子様の魅力にくらくらしつつ、彼とそっくりな陛下も柔らかく微笑むとこんな感じなのだろうか、と考えてしまう。

 最近いつも、何を見ていてもすぐに陛下のことを考えてしまうのだ。これが恋なのだと指摘されると、自分の中に驚くほどしっくりと馴染む。

「ウィレミナがお父様と恋仲になったとしても、僕は何かを失うわけじゃない、とよくわかった。好きな人が幸せになるってことは、僕も幸せだということだ」

「っ、ありがとうございます……!」

 教え導くつもりでここに来たのに、導かれているのは私の方だ。

 ああ、この子はこんなにも優しく賢い。将来、どれほど皆に慕われる素晴らしい国王になるのか、本当に楽しみだ。

 私はずっと、それを見守っていきたい。

 出来れば、とても近くで。


「うー……でも陛下と話すキッカケがないんですよね……」

「食事の席であんなに喋っていたのにか!? それこそ僕を話のネタにすればいいだろう!」

 この王子様ってば、本当に有能!


 *


 そんな話をしてから間もなく、再び陛下との食事の機会が巡ってきた。

 ディーノ様は、私を応援するということで今回は二人きりにしてくれる為に欠席。貴重な機会を作ってくれた王子様の為にも、この恋を成就させる為に私は全力で押していくつもりだ。

 愛することはないだろう、と言われはしたが、愛してはダメとは言われていない。まだまだうら若き乙女の私、彼以外の人と恋愛は許されないけれど、その彼と恋愛することに何の問題があろうだろうか?

 ディーノ様に認めてもらった私は、今は無敵だ。国王陛下、お覚悟を!


 食事は和やかに進み、前回気に入ったと私が言ったワインがまた用意されていて、覚えていてくれたことに嬉しくなる。

 そして陛下に誘われて食後酒のグラスを持ってバルコニーに出ると、眼下に素晴らしい王都の夜景が広がっていた。

「綺麗! いい眺めですね」

「ああ。前回はディーノに構いきりで、そなたの話をあまり聞くことが出来なくて拗ねていただろう? せめてもの埋め合わせだ」

「拗ねてません! ……でも、ふーん……これは結構得点高いですね」

 高級なワインよりこんな風に気遣ってもらえる方が、よっぽど嬉しい。

 そのまま静かに夜景を見ていたら、ライアン様が話を始めた。

「ディーノは随分そなたに懐いているようだ」

「賢い方なので、あの方に認められたことは誇らしいです」

 つい本当に嬉しくて笑うと、陛下も目を細める。


「そなたに頼んで正解だった。……最初はアマンダに頼もうとしたのだが、五歳児と戦える体力はもうない、年を考えろと叱られた」

「ああ、母なら言いそうです」

 うんうん、と私は頷く。私のこういうところは母譲りなのだ。

「代わりにウィレミナを推薦されてな。まぁあの騒動で、素質があるのは十分に分かっていたし、アマンダの娘ならば問題ないか、とお前に招聘を掛けた」

 選考理由、身も心も頑丈! 陛下は大層お目が高い。

「母の推薦でしたか……これは荷が重いですね」

 何せ実母のアマンダ・ファウスは、私の父との離婚歴があるものの現国王を育てた女傑として国中の働く女性の憧れであり、現在は王立女学校の学長を務めているのだ。

 まだまだ身分社会・男社会のこの国にあって、新設の女学校の初代学長。それだけで母がどんな人なのか、推して知るべしってカンジよね。ゴリ強です。ゴリゴリに強い、じゃないです、ゴリラみたいに強い、です。


「あ、でも母のような働きを期待されているのでしたら、無理ですよ。私は母に育てられていませんので、彼女の教育メソッドは一切知らないので」

「は? 何故だ」

「何故って、私が生まれてすぐに母はまた王城に出仕し、あなたの乳母をしていたからではないですか」

 そっと手で示すと、陛下は美しい青い瞳を見開いた。

 陛下は私の兄と同い年であり、それゆえに母・アマンダは陛下の乳母の一人として選出された。兄と私は三歳違い、出産で一度宿下がりしたものの私をぽーんと産んだ後はまたすぐにイキイキと働きに出ていた人である。

 陛下は母に大層懐いていたらしく、他の乳母よりも長くお仕えしていた、というのは家族じゃなくても知られていることだ。


「それは……すまないことをしたな」

 ぎこちなくそう言う陛下に、なんだか私は笑ってしまう。お互いもう大人なのだから、ここで謝られたところでどうなるものでもないのだ。

「構いません。母は好きで仕事を選んでいたし、幼い陛下を責めるつもりもありません」

「……アマンダは、他の者と違いハッキリ意見を言ったりきちんと叱ってくれるところが、私には必要だと感じたんだ」

「高貴な方は自分で子育てしませんものね。乳母や世話役に信頼のおけるものを選ぶのは当然のことです」

 うんうんとまた頷くと、陛下は私を見下ろして目を細めた。

 突然シリアスなカンジの表情とかされるとドキッとするじゃないですかーもー。

「……私を責めるつもりはない、と言ったな。では……アマンダのことは、恨んでいるのか?」

 驚いた。そんな感傷的なことを言う人だとは思っていなかったからだ。

 案外、陛下は素直ないい人なのかもしれない。

「恨んでないですよ」


 ちょっと肩から力が抜けて、私は自分でも驚くぐらい穏やかな気持ちでそう言えた。でもまだ陛下の視線は、私の中の嘘を探るように細められている。嘘じゃないですってば。

「うちの乳母も他の使用人も兄もいましたし、特に不自由はなかったです。当時は少し怒ったりしていたと思いますが……今何か思うことはないですね」

「そうか」

「ただ、」

 言いかけると、陛下の視線が私に戻ってくる。うーん、ちょっとクセになりそう。

 だってこの国で一番偉い、しかもこんなに美しい人が私の言葉に反応してくれるのよ? 夢中になる前に、自分にブレーキかけておかなくちゃね。

「寂しかったです」


 だって、この人は私を愛するつもりはないんだから。

 またまた前言撤回。無敵なんて嘘。精一杯頑張るつもりだけど、恋が破れた時に好きになり過ぎていたら辛くなる。

 母の喪失を知る私は、こういうところが少し臆病だ。


「……そうか」

「お母様は、私じゃないよその子供のところにいるんだ、って思うと、腹が立つよりももっとずっと寂しかったです」

 こんなこと今更言っても何にもならない。

 何不自由なく育ててもらったし、母は陛下の乳母として仕事にやり甲斐を感じていた。だから、これは正しく私の感傷なのだ。

 当事者の陛下にも、本当は聞かせるべきではない、本音。


「それは」

「だから、謝罪の言葉は結構ですって。本当に……誰かを責めるつもりはないんです、ただそうだった、てだけで」

 なんだか作り笑いにも精彩を欠いちゃうな。こういう時はもっと気にしてません! ていう溌剌とした笑顔を浮かべてしんみりした空気ごと吹き飛ばしちゃいたいのに。

「……だから最初の顔合わせの時、私にディーノを育てることに参加するように言ったのか」

「あーはは、その件は本当に不敬でした……」

 何だかんだ言って、婚約破棄直後で気がたっていて、もうどうにでもなれ、ぐらいの気持ちだったのだろう。あの時の私は、正直あのまま投獄されてもおかしくないぐらい不敬だった。それでもよかったのだ。

 でもまぁ傷ついた乙女なのだから、無罪だろう。陛下もきっとたぶん絶対そう思ってくれているのだろう、彼は僅かに首を横に振る。

「いいや。結果、今私がディーノと良い関係を築けているのは、間違いなくそなたのおかげだ。礼を言う」

 その言葉で、最近の私の奮闘は随分と報われるというものだ。

 すとんと私の胸に落ちて来た優しい響きに、自然と微笑むことが出来た。


「……こちらこそ、おかげで素晴らしい余生が過ごせています」

「余生か」

 また陛下が目を細める。何だか今度はちょっとムッとしているような?

「ええ。婚約破棄された時に、令嬢としての私は死にました。今は、子守としてディーノ様をお支えすることが、私の願いです」

 そりゃあ恋が実れば万々歳だけど、それはまだ告げるのは早いだろう。


 あの小生意気な天使の顔を思い浮かべて、私は肩を竦めて笑う。

 そりゃあもうとびきり生意気な子だけれど、聡明で優しい子。あの子がこれからたくさん様々なことを経験して、この国の次の王様になる、と考えるとドキドキしてくる。

 どんなに素晴らしい王様になるんだろう! て。

「あの方が立派な次代の王となる、そのお手伝いが出来ると思うととても胸が熱くなります。……きっと母もこんな気持ちだったのだろうな、と思うとますます憎めなくて」

 私が少し恥ずかしく感じながら言うと、陛下は手摺りに乗っている私の手を指さした。

「触れてもいいか」

「? 勿論です、こう見えて私はあなたの妻ですよ」

 妻! これを逃せば次のチャンスはなかなか来ないだろうと、言ってみたかった単語を使ってみたけど、言った端から恥ずかしくなって赤面してしまう。


「……私は、私自身のこともそなたのことも、何もかも見誤っていたようだ」

「え!? まさか、妃クビですか?」

 ぎょっとなって慌てて言うと、陛下は肩を震わせて笑った。

 おお……美形の笑顔、破壊力半端ないですね。卵の殻ぐらいならこのひと笑いで割れるんじゃないですか? パリーンッ! て。


「ってぎゃあ!」


 キスした! この人! 私の手にキスした!!!

 持ち上げた私の手の甲に、触れるだけのキスをした陛下は、何故か挑むように強気に微笑んで宣言した。

「いや。クビどころか、契約更新だ」

「けいやくこうしん」

「私と恋をしてくれ、我が妻よ」

「は………」


「宣言を翻してすまない。だがそなた……ウィレミナと恋をしたい」

「な、ななな、なんで突然……」

 顔が真っ赤になっていくのが分かる。助けてディーノ様!

 しかし願い虚しく、目の前でかの王子様のように、否王子様よりもさらに輝かしい笑顔を浮かべたライアン様が私を抱き寄せる。

 いやまぁ私妻なんでキスとかハグとか構いませんけど!? いや、構うかしら!? え、でも嬉しいけど!!??


「ディーノにばかり構うウィレミナに、拗ねていたのは私の方だ。今度は私のことを見てくれないか?」


 はぁーーーー!!?? 私はめちゃくちゃあなたを見てますし、既にしてますけど!!!


 恋!!!



読んでいただいてありがとうございます!

この度連載版を始めまして、短編では削ったエピソードなどを入れて再編集したものを公開中です。そしてその後の国王家族のことも順次書いていくつもりですので、もしよろしかったそちらの方も読んでいただけたら嬉しいです!

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