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チカラ  作者: KJ
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よく晴れた空に澄んだ男の声が響く。

「えー皆さんこんにちは。村長のバランです。本日は年に1度の煌迎祭です。16歳になる皆さんは天からの光を受け入れ、そして更なる飛躍を願っています。それ以外の方々も今日のこの日、煌迎祭の間だけでも悩みや不安を忘れて楽しみましょう。光よ、我々に幸を与えたまえ。では、私は次の準備があるので失礼します」

白髪頭に長く伸ばした髭。煌迎祭だからなのか着ている服は黒く、所々に白い点の様な刺繍が施された物を着ている。挨拶を終えた村長は空に向かって祈りを捧げ、次に煌迎祭に集まった村の人々に慈し深く礼をすると、自分が住んでいる住居の方へと歩いて行った。

「あの人レアキャラよね。滅多に村に顔出さないし」

「確かに。普段何をしてるのだろうか」

煌迎祭の開始に間に合ったカイトの側にはハム、それから周りには今年16歳を迎える者達が集まっていた。緊張しているのか立ったまま微動だにしない者や不安なのか周りをキョロキョロとして落ち着きが無い者、酒を片手に騒ぎ倒す大人達を眺め冷静になろうとしている者と色々な様子が伺える。

ハムは無表情で考え込んでるカイトを見て笑っていた。


その頃、村長のバランは自宅に帰り何かの準備をしていた。バランの左手には透明な玉があり、玉の中央では白い光が小さく明滅している。

「我に光を!」

天を仰ぐバランは涙を流し叫んでいた。

「誰だ?!」

しかし、そこを邪魔する者が現れた。

バランは自分の世界を邪魔され怒り糾弾した。

「光への冒涜です!この場からすぐ立ち去りなさい!」

「チッ。これだからザラ教徒は嫌いなんだよ。すぐ叫ぶし。はい。その左手に持ってる物を俺に寄越しな」

その人物は全身を隠すローブの間から右手をだらりと伸ばして差し出す。

「これはダメです!大切な受皿なのです!ザラ様に認められた者に与えられる物なのです!」

バランはすぐさま玉を懐に抱え込む。

「ザラ教徒は皆んな同じ反応をしやがる。本当よく教育が行き届いてるな。関心関心ってね」

その人物は言葉を言い切るや否や、ローブを脱ぎ捨て、バランに向かって飛び込んでいった。

その姿はまるで獣の様だった。

「教徒さんよ。冥土の土産に俺のチカラを教えてやるよ。チカラが好きなんだろ?」

「違います!私は天から降り注ぐ光に魅せられただけでチカラ自体には興味は無い!」

「さっき天井に向かって叫んでたのはなんだったんだよ!」

獣の男はバランの頭に目掛け足を振り抜き蹴り飛ばした。

「おら!どうした!ヤル気あんのか!」

頭の何処かを切ったのか流血しているバランはうっと呻き声を上げながら立ち上がる。

「私は光を受け止めたいだけだ。初めて光を受け止めた時の至高の幸福感を感じる事は、今後どんな人生を送ったとしても無いでしょう」

バランは今の状況では考えられない恍惚な表情で語っていた。

獣の男は言葉を溜息に混ぜ吐き出した。

「まぁいいや、俺は食って取り込んだヤツの部位を自分のモノにすることができる。腕を食えばソイツの腕が俺のもんになる。偶に食っても俺のもんにならないモノもあるけどよ、たぶん俺の体の構造から離れ過ぎてるからだろうな。そだ、最近は馬鹿でかい狼の野郎を食ってよ、めっちゃ不味かったな」

両者は同じ様な表情で語り合い事態は終息していくかと思われたが、終わる事は無かった。

先に動いたのはバラン。履いていた靴を丁寧に脱ぎ、腕を体の前でクロスし獣の男の元へ歩いていく。

「なんだ?なんだ?新しいお祈りの仕方か?じゃ、俺も跪いてお祈りしなきゃ•••」

不恰好な姿で向かってくるのを笑いながら待ち、祈るポーズを取ろうとするが、硬い何かが腹部を捉える。そのまま後ろへ飛ばされ壁に衝突し、壁に掛けてある輝く光の絵が頭に落ちてくる。

「蹴った後に言うのもなんですが、光はあなたを許しはしないようだ。私もあなたを許しません。」

男は蹴られた衝撃で気を失いそうになったが、落ちてきた絵がそれを止めた。

「痛っ、やっぱり全身が獣の状態だと丈夫だから良いよな。臭いけど!てか!教徒が信者を蹴り飛ばすとか、どんな教団だよ!俺にも教えてくれよ!」

ニヤリと楽しそうに立ち上がった獣の男はバランに向かって走り出す。

「待ちなさい!ジル!」

2人の間が縮まったその時。女の声が獣の男の動きを止めた。腰まで伸びた黒髪の女は片手に紐か鞭のようなモノを持ち獣の男の元へ近づくとバランの方へ向き直り綺麗にお辞儀をした。

「初めまして、この獣の飼い主ナーザです」


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