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D・T転生  作者: 紫龍院 飛鳥
~異世界 入門編~
8/89

第6話 森の民 エルフ

*作中にて未成年の飲酒のシーンがございますが、こちらの異世界の法律では成人は『15歳以上』という風になっておりますのでご安心ください。

二十歳未満の未成年の飲酒は現実では法律により固く禁じられていますので絶対に真似しないでください。

「みんな!代表だー!代表が帰ってきたぞー!!」

「だ、代表って…まさか」

「お?漸く帰ってきたようね…『うちの人』が」

「う、うちの人?」


すると、扉を豪快に開けて入ってきたのはワイルドな赤茶色のモヒカンヘアーに獣の毛皮で作ったベストを上半身裸の上に着た筋骨隆々の隻眼の大男だった。


「ただいまぁー!今帰ったぞぉ!ぶわっはっはっは!!」

「おかえりアンタ、今回は少し遅かったじゃないか…」

「おう!大型のドラゴンがざっと五十体!流石に死ぬかと思ったぞ!ぶわっはっはっは!!」

「嘘つきなよ!ピンピンしてる癖に!」

「あ、あの…もしかして、この方が?」

「そ、冒険者ギルド『猛者の集い』の代表にして現役のSランク冒険者、『バリウス・カインド』ちなみにこの人、アタシの旦那」

「ご、ご夫婦だったんですね…」

「そんじゃ早速カミーレちゃん!ドラゴンの素材の買い取り頼むわ!」

「あいよ、えーと…全部で金貨二十枚ってところかしらね」

「おうよ!」

「き、金貨二十枚!?すごっ!」

「おーし!おう野郎ども!今日は運がよかったな!今日は好きなだけ飲め!全部俺の奢りだぁ!ぶわっはっはっは!!」

「イエーイ!やったぜぇ!」

「代表バンザーイ!!」


歓喜する冒険者達


「む?お前さんは?初めて見る顔だな?」

「あ、初めまして!僕はアンディ・ロードマンといいます!」

「おぉおぉ!お前さんがそうか!改めてようこそ!我がギルドへ!」


握手を求めてくる代表、僕はそれに応じ代表と握手をする


「お前さんのことは妻から色々聞いてるぞ!加入早々格上の冒険者に絡まれて逆に返り討ちにしたそうじゃないか!」

「いや、あの時は成り行きで仕方なく…」

「いやいや!豪快でいいじゃないか!俺は好きだぞそう言うの!ぶわっはっはっは!!」

「は、はぁ…」

「よぉし!お前も遠慮しないでじゃんじゃん飲め飲め!」

「あ、いえ…お気持ちは有り難いんですけど、僕お酒はちょっと…」

「なんだ、そうだったのか…まぁそれもいい!じゃあ俺は向こうでみんなと飲んでくるからまぁゆっくりしていきなさい!」

「い、いいんですか?」

「構わんさ!うちのギルドはみんな俺の家族も同然!みんな可愛い我が子だからな!ぶわっはっはっは!!さぁ今日は朝まで飲むぞ飲むぞ!」


行ってしまった代表、それと入れ替わりに今度はアリアさんがきて


「アンディさん!」

「アリアさん、代表ってすごい人ですね…色んな意味で」

「えぇ、代表が依頼を終えて戻ると毎回決まって朝まで酒盛りして、その度に後片付けが大変だってこないだオカミさんが愚痴を言ってました。」

「ホント、豪快だな…でも、何となく皆さんが代表を慕う理由も分かる気もしますけどね…」

「あ、それ私もです!」

「僕、父親を知らずに育ったので…もし父親がいたらあんな感じなのかな?」

「…アンディさん?」


すると、そこへ冒険者の男がやってきて


「よぉよぉ!魔法使いのあんちゃん!楽しく飲んでるか~?イエーイ!」

「や、僕はお酒ダメなんで…」

「あぁん?テメェ代表が折角俺達の為に振る舞って下さったんだぞ!代表のご厚意を無下にするたぁ新入りの癖に生意気だぞ!」

「いや、そういうことじゃなくてホントに飲めないんです…それにこのことはさっき代表も了承して…」

「口答えすんな!おら飲め飲め!」


そう言って僕の口に酒瓶を無理矢理ねじ込んで無理矢理酒を飲ませる冒険者の男


「うごごご…」

「ちょ、アンディさん!」

「おーいい飲みっぷりじゃねぇか!ハッハッハッ!もっと飲め飲め!」


すると、僕はそのまま白目を剥いて気を失って倒れてしまった。


「あれ~?もう潰れちまったのかよ~?だらしねぇなおい!」

「ア、アンディさん!アンディさん!…!?、どうしよう、なんか白目剥いて泡ふいて…アンディさん」


段々と顔が青ざめていき、いよいよダメかと思ったその時だった。


「…どうされましたか?」


一人の少女がやってきた


「あなたは…『エルフ族』?」


少女は黄緑色の髪を三つ編みで束ねて、髪の隙間からは長く尖った耳が覗いており、何とも神秘的な面持ちをした少女だった。


「はい、私はエルフ族の『エルメス・ワンド』と申します…体調を悪くされたのはそちらの男性ですね?」

「あ、はい!」

「分かりました…どれどれ?なるほど…」

「??」

「なるほど、過度なアルコールを急激に多量に摂取したことによる中毒のようですね、でも大丈夫です!」


すると彼女は、持っていたカバンから薬草と小さいすり鉢とすりこぎを取り出すとすり鉢に薬草をいくつか入れて煎じ始めた。


「すみませんオカミさん、お水をいただけますか?」

「あぁ、水だね!待ってな!」


水を持ちにいくオカミさん


「ほら!水だよ!」

「ありがとうございます」


水と煎じた薬草をよくかき混ぜる


「さぁ、できました!さぁこれを飲ませてください」

「分かりました!アンディさん!お薬ですよ!」


アリアさんは僕の口を開けて薬を流し込む、すると顔の血色が戻り、呼吸も落ち着いてきた。


「薬が効いたみたいですね…ありがとうございます!」

「いえ、お役に立てたようでよかったです…」


にっこり笑ってその場から立ち去る


…容態が落ち着いた僕は宿屋へ運ばれ、そのまま夜が更けていく。


眠っている間、僕は前世むかしの夢を見た。


新入社員の頃、会社の飲み会で上司に無理矢理酒を飲まされる夢だった。


僕はあの頃から酒が弱かったのでソフトドリンクばかり飲んでいたのを部長がそんな僕を見かねて部長が僕に酒を勧めたのだが僕がやんわり断ると部長は理不尽にキレ始めて酒を飲むように強要され、仕方なく飲んで案の定翌日体調を壊してしまった…。


それからもう酒は飲んでなかったけど、まさか転生しても酒が弱いままとは…まぁもうあまり酒は飲みたいと思わないから別にいいのだが。



…そして翌朝目を覚ます、僕はいつの間にか宿屋に帰ってきていたのに最初驚きつつも起き上がって状況を把握した。


体が鉛のように重い…頭も少しズキズキする、でも不思議と吐きっぽい感じはしないのに違和感を感じつつも、ふとベッドの側を見るとアリアさんが傍らで寝ていた。


するとアリアさんも起き始める


「うーん…あ、アンディさん!起きたんですね、よかった~!」

「アリアさん、もしかして…一晩中見ててくれたんですか?」

「だって…心配だったんですもん」

「アリアさん…」

「あ、そう言えば…アンディさん寝ている間中、頻りに『ブチョウ』って呼んでましたけど?お知り合いですか?」

「えっ!?そんなこと言ってました!?」

「はい…なんか、『ブチョウ…もう、やめてください』みたいな感じで…」

「………」


もうここまで聞かれてたらもうごまかしきれないなぁと悟った僕は、アリアさんに全てを打ち明けることにした。


「アリアさん…驚かずに聞いていただけますか?」

「えっ?」

「実は僕は…信じられないかと思いますが、元々別の世界から来た人間なんです…」

「別の世界?」

「まぁ正確には、向こうの世界で一度死んでから…この世界の人間として転生したんです」

「転生…ですか?」

「はい、僕はこの世界に来る前は…ホントに何をしてもダメな奴で仕事でも毎日上司に怒られてばかりで部長っていうのは僕の上司で…それでもう何もかも嫌になってずっと家に引きこもっていた時があるんです…それである時、突然母親が急死してからもう一度働こうと思い立ったのはいいんですけど…当然仕事なんて簡単に見つかるはずもなく、もう人生全てに絶望してしまい自ら命を断つことを選んで…飛び降りて死んで、それで気がついたらこの世界に転生していたってわけです…」


僕はが話し終える頃にはアリアさんはただ黙って静かに涙を流して泣いていた。


「アリアさん…?」

「…辛かったんですね、分かります…私も昔、落ちこぼれだったんで」

「えっ…?」

「まぁ…私のことなんかはいいんです!安心してください、アンディさんのことは私だけの秘密ってことにしておきますんで!」

「え、えぇ…」

「あっ!なんか食べますか?お腹空きましたよね?ご飯にしましょうか?」

「あ、はい…!」



…そして午後になり、僕の体調も少し良くなり冒険者ギルド本部へ顔を出す。


「おや、アンディじゃないか!もう体は大丈夫なのかい?」

「えぇ、おかげさまで…」

「すまなかったな!あいつにもきつ~くいい聞かせておいたからな!ここは俺の顔に免じて許してくれ!」

「あぁもういいんですよそれは…それよりアリアさんに聞いたんですけど、あの時僕に薬を作って助けてくれた人がいたって聞いたんですけど…確か名前はエルフ族のエルメスさん?」

「エルメス?あぁエルメスならアンタらと同じくDランクの冒険者だよ?」

「え、冒険者の方だったんですか!私てっきりお医者様か何かかと…」

「エルフ族は自然と共に暮らす民だからね、薬草とか薬の知識が豊富なのさ、それとエルフ族だけが使える『治癒の魔法』ってのも代々エルフ族はみんな使えるみたいよ」

「へぇ、そうなんですね…あの、是非そのエルメスさんって方にお会いしてお礼が言いたいんです、どこにいるか知ってますか?」

「あぁ、エルメスなら今朝任務に出掛けたよ、場所は東の森に行ったわ!」

「ありがとうございます!ちょっと行って来ます!」

「あっ!ちょっと待ちな!東の森は急な崖になってるところが多いからくれぐれも気をつけなよー!」

「はい!分かりました!」


僕達はエルメスさんが向かったという東の森へ向かう。


…東の森を歩くこと数十分、エルメスさんはまだ見つからない


「それらしい人はいませんね…どんな人なんですか?」

「うーん確か…黄緑色の髪に尖った耳で大きなカバンを持ってました」

「黄緑色の髪に尖った耳、大きなカバン…うーん、もっと奥の方かな?」


森のもっと奥まで進んでみる、すると崖っぷちになっているところを発見した。


「うわっ、こんなところに崖がある…落ちたら危ないだろうな…」


するとその時だった、崖の下から声が聞こえた気がした。


「誰かー!助けてー!」

「なんだ?」


崖の下を覗くと、そこには今にも落ちそうな女性がいた。


「えっ!?人だ!人が落ちそうになってます!」

「あら?しかもあの人!エルメスさん!?」

「えっ!?あの人が!?急いで助けないと!何かロープのようなものでもあれば…」

「私ちょっと探して来ます!」


ロープになりそうなものを探しに走るアリアさん


「助けてー!落ちるー!」


崖から飛び出た木の枝を掴んでかろうじて耐えているエルメスさん、しかしそうも長くは持ちそうもない。


「はわわわ…どうしよう!どうしよう!?」


するとその時、彼女が掴んでいた枝がいよいよ限界を迎え、そしてとうとう折れてしまった。


「はっ…!キャアァァァ!!」


崖から真っ逆さまに落ちていく彼女


「エルメスさん!こうなったら一か八か!『グランドウォール』!!」


僕は咄嗟に魔法を発動する、すると崖から土の壁が突き出る形で現れてそれが足場となって落下を防ぐことができた。


「…あれ?何これ?急に岩が突き出て助かった…?」

「大丈夫ですかー!」

「えっ?誰かいる…もしかしてあの人が?」

「今ロープになるようなものを探してますからー!もう少し辛抱しててくださーい!」

「はーい!ありがとうございます!」


そしてしばらくしてアリアさんが戻ってきた。


「アンディさん!丈夫そうなツタがあったので持ってきました!」

「ナイスですアリアさん!貸してください!」


蔦を垂らしてエルメスさんの救助を試みる。


「よしっ!長さは大丈夫そうだ!それに捕まってくださーい!」

「はい!」


蔦に捕まるのを確認すると二人でゆっくりと蔦を引っ張って引き上げていく。


…そして無事に救出することができた。


「…ハァ、ハァ、ハァ」

「助かりました…なんとお礼を言っていいか」

「いいえこちらこそ、あなたですよね?昨日僕を薬を作って助けてくれた人は…」

「えっ?あっ、あなた方は昨日の…」

「その説は、ありがとうございました!」

「いえいえ!私こそ!命を救っていただいてありがとうございます!」


と、互いにお礼を言い合う


「僕はアンディ・ロードマンといいます!こちらは僕と一緒にパーティーを組んでいるアリア・フルーミネさん」

「改めまして、エルメス・ワンドと申します」

「そもそもなんであんな崖の下に?」

「えぇ、それが素材調達の依頼で『アップリンの実』を取ってくるように言われまして、それで木の枝に登って取ろうとしたら枝が折れてしまってそのまま真っ逆さまに…」

「アップリンの実?」

「甘酸っぱくて美味しい赤くて丸い果実です、確かにこの辺りにはアップリンの実が豊富に実ってるって話でしたね」

「なるほど、では僕達もそのアップリンの実探しお手伝いします!」

「そ、そんな!命を助けていただいた上に依頼まで手伝ってくださるなんて…なんて親切な方なんでしょう」

「これくらいお安い御用です、さっ!いきましょう!」


…それから三人でアップリンの実探しをする、小一時間ぐらい探して籠いっぱいのアップリンの実を手に入れることができた。


「随分採れましたね…これだけあれば十分です!」

「よし、じゃあ本部に急いで持って帰りましょう!」


…本部へ戻る、ところが本部の中が何やら騒がしい様子だった。


「お願いします!どうかお母さんを助けてください!」

「なんだ?」


幼い少女が必死でオカミさんに訴えている。


「あのねお嬢ちゃん、助けてあげたいのは山々なんだけどね…ウチは慈善事業じゃないの!お金が払えなきゃ仕事は引き受けられないわ」

「私…お金、持ってない…でもこのままじゃお母さんが!」

「どうかしましたかオカミさん?」

「あぁアンタ達かい、ちょっと取り込み中でね…」

「お願い!お母さんを助けてください!早くしないとお母さんが死んじゃう!」

「お、落ち着いて!お母さんが死ぬって、病気?」

「うん、お母さん…お父さんが死んじゃってからずっと一人で働いてて、それで体壊してお医者様にも診てもらったけど…もう手遅れだって」

「そんな…」

「お母さん、死んじゃやだよぉ…うっ、うっ、うっ」


涙ながらに母を助けてほしいと懇願する少女、そんな少女を見て僕はかつて自分の母親を亡くしたことを思い出した。


「…!、エルメスさん!この子のお母さんを診てくれませんか!」

「えっ!?私がですか?」

「エルフ族なら『治癒の魔法』でなんとか治せるかもしれない!お願いです!報酬ならこの子の代わりに僕が払います!」

「で、でも私は…」

「この通りです!こんな幼い子供に、母親を失う悲しみを味あわせたくないんです!だからどうか!力を貸してください!」


僕は手をついて必死に懇願する


「エルメスさん!私からもお願いします!」

「わ、分かりました!やれるだけやってみます!」

「ありがとうございます!お嬢ちゃん、家まで案内お願い!」

「うん!」



to be continued...

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