第4話 紳士ですから…
…部屋に入る、部屋にはベッドが二つと机とイスとランタンがあるくらいで非常にシンプルな部屋だ。
「はぁ、疲れた…」
ベッドに腰を降ろすアリアさん、するとお腹の音がぐぅ~っと鳴った。
「えへへ、お腹空いちゃいました…」
「ハハ、では先に夕食を済ませましょうか?確か受付の隣に食堂があったハズ…」
「ホントですか!じゃあ行きましょう早速!」
食堂へ向かう、僕らの他には誰もいなくガラガラだった。
「丁度空いててラッキーでしたね」
「はい!あーお腹空いたー!」
…しばらくして、他の宿泊客達がぞろぞろと集まってきた
みんなも丁度夕食時らしい。
そしてまたしばらくすると宿屋の人達ができ上がった食事を運んできた。
「お待たせしましたぁお食事でーす!」
受付をしてくれた女の子が僕らのところに食事を運んできてくれた。
「ありがとう」
夕食の献立は、野菜がごろごろ入ったスープに骨つきの肉、後は主食のパンが小さいバスケットに入っていた。
…この世界ってパン食が主なのかな?そもそもお米ってあるのかな?パンは決して嫌いではないがやはり元 日本人としてはお米が少し恋しい気持ちもあった。
「美味しそ~、いただきます!」
「いただきます」
食事の味はとても美味だった、スープも野菜の旨味が溶け込んでて優しい味がした。
肉はなんの肉かは分からなかったけど味付けもまた絶妙な塩加減で美味しかった。
…今思えば純粋に食べ物を美味しいと感じたのはとても久しぶりだった。
一生懸命に魔物と戦った後に食べるご飯と一日中引きこもってゲームばかりしながら何も考えずに食べるご飯、比べてみたら雲泥の差だった。
一生懸命に働いた後の食事はなんて格別なんだろう…僕は改めて仕事や食べ物の有り難みを知った。
…食事を終え、一度部屋へ戻る
「…はぁ~、美味しかった!満足満足♪」
「はい、とても美味しかった…改めて食の有り難みを知った気がします…」
「ハハハ、何ですかそれ?そんな大袈裟な…さてと、私ちょっとお風呂行ってきますね!」
「!?、え、えぇ!どうぞ、ごゆっくり…」
風呂場へ向かう彼女、するとそこへどこからともなく水先案内人のアニーが現れる。
「こんばんはアンディ様…今宵は良い夜ですね」
「アニーさん?今までどこ行ってたんですか?ていうかどこから出てきたんですか!?」
「まぁまぁ、その様なことどうでも良いではありませんか…」
うわっ…この人上手く話をはぐらかしたな…
「それより、今日はアンディ様に良い物をお持ち致しました」
「良い物?」
「はい…こちらです」
と、指をパチンっと鳴らすアニーさん
するとそこに何やら麻の袋の様なものが現れた。
「これは?袋?」
「これは『アイテム袋』でございます、手に入れたアイテムをこの袋の中に自由に出し入れすることができるアイテムなのです」
「へぇ、そんなのがあるんだ…」
「どうぞお使いください…既に中にはアンディ様の着替えの服や役に立ちそうな物など入れておきましたので…」
「ありがとうございます、着替えを買うの忘れてたんで助かります」
「お褒めに預かり光栄でございます…ではまたごきげんよう」
と、スゥっと消えていくアニーさん
「…消えちゃった、ホント何者なんだあの人?」
するとそうこうしている間に風呂から上がったアリアさんが戻ってくる音がした。
「ふぅ、さっぱりした!とてもいいお風呂でしたよ!アンディさんも入ってきたらどうです?」
「そうですね、でしたら僕もお言葉に甘え、て?」
振り返って彼女の姿を見ると、タンクトップにラフな短パン姿で非常に露出度が高い格好をしていた。
しかも服を着ている時はあまり気づかなかったが薄着のせいで豊満な胸がボンっと強調されていた。
「…アンディさん?どうかしましたか?」
「あーイヤイヤイヤ!!なんでもない!えと、お、お風呂入ってきます!」
そそくさと部屋を出る僕
「…?、何をあんな慌ててたんだろ?変なアンディさん…」
僕は風呂で体を洗いながらもさっきの光景が脳裏から離れなかった。
…参ったな、ここまで難なく平静さを保ってきたのにまさかアリアさんがあんなにもボンキュッボンのナイスバディだったなんて…てゆーかアリアさんってまだ15歳ですよね?なのにあの発育はないでしょうよ!どう見ても軽くFかGぐらいはあるぞ!
イカンイカンイカン!ここはなんとしても自制せねば!
と、自分で自分の両頬を叩き、頭から冷水をかぶって頭を冷やす。
風呂から上がって部屋へ戻る。
「ただいま戻りまし、た?」
部屋に入ると、アリアさんは既に寝息をたてて熟睡していた。
「もう寝てるか…僕ももう寝よ…」
ベッドに入り、目を閉じる…だがしかし目がバキバキに冴えてしまい一向に眠れなかった。
ダメだぁぁぁ!!やっぱ全然眠れん!疲れて今すぐにでも寝たいのに全く眠れない!もう興奮しまくりで全然落ち着かない!何か気を紛らわそう、何かないか…あっそうだ!
僕はさっきアニーさんがくれたアイテム袋を手にとる。
…そう言えば着替えの他にも何か役に立ちそうな物が入ってるって言ってたな…ちょっと見てみよう。
アイテム袋の中をごそごそと手探る、すると手に取ったのは一冊の分厚い本だった。
(…本?何の本だ?)
本の拍子などには何も書いてなかったので取り敢えず本を開いてみることに…
本の内容は、魔法の使い方について事細かに説明が書かれていた。
差し詰めこの本は魔法の指南書のようなものなのかもしれない…。
(…ふんふん、なるほど…これは為になるな…ふんふん)
僕は夢中になって指南書を読み続ける、そして気づかない内に眠りに落ちていた。
…そして翌朝、僕は小鳥の囀りと共に目を覚ます
「…ん?あれ?もう朝か、いつの間にか寝ちゃってたな…んーっ!」
すると、隣のベッドにアリアさんがいないことに気づく
「あれ?アリアさん?」
すると、アリアさんが戻ってきた
「あ、アンディさんおはようございます!」
「あ、おはよう…こんな朝早くからどちらへ?」
「いやぁ今日早めに目が覚めて少し剣の素振りした後お風呂で軽く汗流してきたんですよー、やっぱり朝早く起きると清々しいですね~」
「そうですか…あっそうだアリアさん!実はちょっとお願いがあるんですが、いいですか?」
「??」
僕は夕べ指南書を読んで得た知識を試してみたくてアリアさんに練習をお願いした。
アリアさんは快く承諾してくれて僕達は朝食を済ませた後、街を出て森に向かった。
「ここなら大丈夫でしょう、周りに魔物もいないみたいですし…」
「そうですね、でもその前に…」
「??」
僕はアリアさんに魔法のローブを脱いで手渡す
「これを着てください、これを着ていればケガをせずに済みますから」
「そんなっ!いいんですか?私なんかが着て?」
「構いません、どうぞ」
「そうですか…じゃあお言葉に甘えて」
ローブに袖を通すアリアさん、アリアさんのステータスを確認してちゃんとローブの効果が出ているかチェックする
「…よし、大丈夫っぽい!それじゃいきますよ!」
「はい!お願いします!」
まずは魔法の威力の調節をする練習をする
「『アクアバレット』!!」
まずは少し加減して発動するようにイメージして放った。
「はぁっ!」
剣で水の弾を弾くアリアさん
「よし!じゃあ続けてどんどんいきますよ!」
「はい!」
そこから少しずつ術の威力を上げていき段々と威力の調整がスムーズになってきた。
「よし!じゃあ最後に一発少し強めにいくんで無理だったら避けてください!」
「分かりました!」
「いきますよ!『アクアバレット』!!」
今度は少し強めのイメージで放ってみた、放たれた水の弾は勢いよく飛んでいった。
“ガキーンッ!”
剣で防ぐアリアさん、しかし当たった衝撃で後ろに吹っ飛んで尻もちをついてしまう。
「あたっ!」
「アリアさん!大丈夫ですか?」
「大丈夫です!ちょっとヨロけただけなんで!心配ありません!」
「はぁ…良かった」
それからしばらく魔法の練習を続けた…。
「…ふぅ、こんなもんかな?」
「ハァ、ハァ、ハァ…」
かなり疲れている様子のアリアさん、無理もない…立て続けに僕の魔法を受け続けたのだ、相当体力を消耗したはず
「少し休みますか?すみません無理をさせたみたいで…」
「いえ、おかげで私もいい特訓になりました!ありがとうございます!」
「…そう言っていただけると助かります」
すると、その時だった…僕らの前にオオカミの群れが現れた。
「はっ!魔物です!こいつは確か…ウルフとか言う獣型の魔物!」
「何ですって!?アリアさんは休んでてください!ここは僕が!」
「で、でもアンディさんだって疲れてるハズなのに!」
「心配ありません!魔法の調整が上手くなった分、まだまだ力が有り余ってますから!こいつら倒すぐらいは全然余裕です!」
「アンディさん…」
「さぁ来いウルフども!僕が相手だ!」
ウルフの群れと対峙する、するとウルフ達が先に攻撃を仕掛けてきた。
「はぁっ!」
僕は杖を使ってウルフ達の攻撃を上手く受け流していく、これも指南書に載っていた杖術という戦い方を参考にしたものだ。
「くらえ!『ファイヤーボール』!」
ウルフに向けて火の玉を放つ、火の玉は見事命中し、ウルフ達を倒すことができた。
「…ふぅ」
「すごいですアンディさん!特訓の成果が早速出てますよ!」
「そ、そうですかね?…あの、ところでこのウルフ達はどうしましょう?このままってわけにもいきませんし…」
「あ、それなら大丈夫です!オカミさんに言えば買い取ってくれるので!」
「そうなんですか?じゃあギルド本部へ持って行きましょう!」
…ギルド本部へウルフの素材を持っていく
「…へぇ、中々やるじゃないか!ウルフの肉と毛皮が六匹分、状態もそこそこいいわね」
「ありがとうございます」
「うん、全部で銀貨十二枚で買い取ってやるわ」
「ホントですか!ありがとうございます!」
「はいよ、確かに!ついでにポイントも5ポイントつけてやるよ!」
「え、でも…正式な依頼じゃないのにいいんですか?」
「ウルフやゴブリンみたいな低級の魔物は数が多い上にどんどん増えるからウチでは常時依頼は受け付けてんのさ」
「そう言うことだったんですか…でしたらお願いします」
「あいよ!」
銀貨を受け取りポイントもつけてもらった。
「じゃ、この調子で頑張んな!」
「はい!ありがとうございました!」
…本部を後にする
と、そんな僕達を後ろから見つめる謎の三人組
「…あいつがあのタガロアを倒したって奴?まだ全然普通の子供じゃない」
「へい、でも姐さん…オイラ達はアイツがタガロアを完膚なきまでに叩きのめしたのをこの目で見たんダス!」
「えぇ、しかもアイツ…妙な術を使いやがるんでゲス」
「へぇ…面白そうじゃない、少し興味が湧いてきたわ…ウフフフ」
to be continued...