第3話 レッツ・パーリー!!
「アンディさん…私と、『パーティー』を組んでください!」
「え、え~!?パ、パーティー!?」
「おや?アンタらパーティー組むのかい?」
「ちょ、ちょっと待った!パーティーって?」
「なんだ知らないのかい?同じギルドに所属した同士が手を組んで一緒に仕事する仲間ってことよ」
「いや、それは分かりますけど…いいんですか?僕なんかで?」
「はい、実は私…冒険者になってから一年くらい経つんですけどまだ一人でちゃんと依頼達成したことなくて…それに私ドジでおっちょこちょいだからみんなから足を引っ張られても困るって言われて誰もパーティーに入れてくれなくて…」
「そうだったんですか…」
「でも私、アンディさんとだったら頑張れる気がするんです!だからお願いします!私とパーティーを組んでください!」
再び深々と頭を下げて懇願するアリアさん
…思えば三十年も生きてきて誰かにこんなにも頼られて頭を下げてお願いされるのなんて生まれて初めてなのかもしれない…どちらかと言えば僕も彼女と同じく役立たず呼ばわりされたり仲間外れにされてばかりの人生だった。
そうだ、僕達二人とも似た者同士なんだ…彼女の気持ちを理解できるのは僕だけ、彼女と同じ心の痛みを知っているのは僕だけなんだ!
僕は何としても彼女の力になってあげたい…と、そう心に強く思った。
「アリアさん…頭を上げてください、その…僕で良ければ、アリアさんの力になりましょう!」
「ホントですか!?ありがとうございます!」
そう言って彼女は僕の手を強く握る
(…はふっ!やっぱりちょっとまだ馴れないな…まだ、ドキドキする)
「…じゃ、じゃあ早速パーティーの登録を…」
「えぇ、どうやってするんですか?」
「ギルバイス出してください、アンディさんのギルバイスと私のギルバイスを両方近づけてフリフリするんです」
「こ、こう?」
言われた通りにアリアさんのギルバイスに自分のギルバイスを近づけてフリフリする、すると僕の所にアリアさんのデータが、アリアさんの所に僕のデータが送信された。
【『アリア・フルーミネ』からデータを送信されました パーティー登録をしますか? はい・いいえ】
と、表示されたので僕は【はい】を選択して画面をタップする。
“タラタターン” 『アリア・フルーミネ』が仲間になった!
と、どこか聞き覚えのある電子音と共にこの画面が表示された
どうやら無事にパーティー登録できたようだ。
「…はい!これでパーティーの登録は完了です!」
「あ、はい!」
「良し、じゃあ早速アタシからアンディに冒険者ギルドの仕事の仕組みについて説明するからついて来な!」
「はい!」
…一度店の中まで戻る、そこでオカミさんから仕事の説明を受ける。
「いいかい?一度しか言わないからしっかりと頭ん中に叩き込みなよ!」
「はい!よろしくお願いします!」
「じゃあ説明するわよ!ウチには毎日のように様々な仕事の依頼が来る、依頼の内容は主に大きく分けて四つ!一つ目は危険な魔物と戦い排除する『魔物討伐』、二つ目は依頼された素材やアイテムを手に入れて依頼主に届ける『素材調達』、三つ目は依頼主を護衛して目的地まで無事に送り届ける『要人警護』、そして四つ目が国中から指名手配されたお尋ね者を捕まえる『罪人捕縛』、これら沢山ある依頼から受注したい依頼を選んでアタシに報告する、そしたら後は依頼をこなして終わったらまたここへ戻ってきてアタシに結果を報告する、そしたらそこでアタシが成果に応じて報酬を渡してこれで終了と!分かった?」
「はい!分かりました!」
「じゃあ早速簡単にできそうな依頼からチャレンジしてみるのはどう?」
「いいんですか?じゃあお願いします!」
「はいよ、ちょっと待ってな!」
するとオカミさんはカウンターの奥から大量の依頼書の束を取り出す。
「よいしょっと!…えーっと、初心者向けの簡単な依頼はーっと、あっこれこれ!これなんてどう?『ゴブリン討伐』!報酬は銀貨四枚でそんなに高くないけどEランク以下の簡単な任務だから初心者のアンタにはぴったりじゃない?」
「そうですね、ではその依頼を受けます!」
「オッケー!じゃあこれ依頼書、詳しい場所は依頼書に書いてあるからギルバイスの地図機能で確認して向かってちょうだい!」
「はい!」
「よし!じゃあ頑張んな!」
「行ってきます!」
…ゴブリン討伐に早速出発する僕達、依頼書によると西の森の近くの洞窟に巣を作って住んでいるらしい。
アリアさんの話ではゴブリン達は山の中や暗い洞窟などをよく好んで住処にするらしい。
しかもゴブリンはめちゃくちゃ好戦的で群れで一気に襲われると結構厄介らしいから一体一体を確実に倒していくといいらしい。
洞窟の近くまでたどり着いた僕達は、近くの茂みに隠れて様子を伺う。
「あ、あれかな?入り口のところにちらほら…」
「ホントですね…」
緑色の血色の悪い肌の色にギョロギョロとした黄色い目玉、鋭く尖った爪と牙を持ち洞窟の入り口の周りを行ったり来たりしている…恐らく入り口にいるゴブリン達は見張り役だろうか?
「さて、どう行きます?」
「私が先行します!アンディさんは後ろから魔法で援護してください!」
「分かりました!気をつけて…」
「えぇ、じゃあ…合図したら一斉にかかりましょう!」
「はい!」
「いきますよ、1、2の、3っ!」
アリアさんの合図で茂みから飛び出して奇襲を仕掛ける、ゴブリン達は驚いた表情を見せて慌てて戦闘態勢に入る。
「もらった!はぁぁぁ!!」
剣を構えて突撃するアリアさん、ゴブリンに斬りかかろうと剣を振り上げたその時だった。
“ガツッ!”
アリアさんは地面の少し出っ張った石の所に躓いて盛大にズッコケたのだった。
(…えぇ~!?ちょ、何してんのあの人!?颯爽と飛び出していくや否や派手にスッ転んだよ!いくらドジでもそりゃねぇだろう!)
あまりの滑稽な光景に心の中で思い切りツッコんでしまった。
「…イタタ、なんでこんなところに石が…」
と、隙をついてアリアさんに襲いかかるゴブリン達
「へっ?あっ!どうしよ!?」
「アリアさん伏せて!『エアロスラッシュ』!!」
「えっ?うわっ!?」
咄嗟に風の刃を飛ばしてゴブリン達を斬り刻む
「た、助かった…」
「アリアさん!大丈夫ですか?」
「あっはい!ありがとうございます!」
「油断しないで、多分今の騒ぎを聞いてゴブリン達がゾクゾクときますよ!」
「はい!」
すると案の定、外の騒ぎを聞きつけた仲間のゴブリン達が洞窟の中からゾクゾクと現れた。
「ひいふうみい…結構いるな、いけますか?アリアさん?」
「えぇ!望むところです!」
「よし!いきますよ!」
ゴブリン達に向かっていく、次から次へと押し寄せてくるゴブリン達の群れを僕達は一体ずつ確実に倒していく。
「…すごい数、キリがない!」
「諦めないで!最後まで頑張りましょう!」
バッタバッタとゴブリンの群れを退治していく、漸く数も大方減ってきたところで…
(…気のせいかな?なんか段々と魔法の威力が落ちているような?でもそんなこと言ってらんないな!まだまだたくさんいるんだ!頑張らないと!)
すると僕はゴブリン達に周囲を囲まれてしまう。
「しまった!囲まれた!こうなったら一気に燃やしてやる!『ファイヤーボール』!!」
・・・・・
術を発動させたものの何も出なかった…
(…おかしい!なんで出ないんだ!?ハッ!まさか!?)
慌てて自分のステータス画面を確認する、すると『MP』と表記されているゲージが『0』になっていた。
MPとはつまり魔法を使うのに必要なエネルギー『魔力』の事で、これが失くなってしまっては魔法を使う事ができなくなってしまうという事を指す。
(やばっ…魔力のペース配分なんて全く考えてなかった、このままじゃ…殺られる!)
僕の周りを囲っていたゴブリン達が一斉に襲いかかる
(…ダメだ、もうオワタ…早くも二度目の人生終了のお知らせ…)
と、絶体絶命のピンチに陥ったその時だった。
「『剣技・乱れ斬り』!!」
アリアさんが突然割って入ってきて目にも止まらぬ速さでゴブリン達を斬り伏せてしまった。
「ア、アリアさん…?」
さっき洞窟入り口でスッ転んだドジっ子なアリアさんとは思えないほどに見事な剣捌きを見せられ、僕は開いた口が塞がらなかった。
「アンディさん!大丈夫ですか!?」
「あっ、はい!それより、今の技…」
「私、自分でもうんざりするほどのドジなんですけど、剣の腕には少しだけ自信があるんです!」
…いや、少しなんてモンじゃないよ今のは、どんだけ謙虚なのこの娘?
なんか、さっきは心の中でボロクソ言ってごめんなさい…
「アンディさんは少し休んでてください!後の残りは私が片付けます!たぁぁぁ!!」
と、またものすごい勢いでゴブリン達を斬って斬って斬りまくっていた。
…そして、ものの10分足らずで残りのゴブリン達を全部一人で片付けてしまった。
「…ふーっ!これで全部、かな?」
一息ついて剣を鞘にしまう、僕は最後まで彼女の華麗な剣技に魅了されていた。
「さて、ゴブリンも倒したことですし…還元還元っと!」
ゴブリンの死骸の山にギルバイスの光を当てる、すると死骸の山は数枚の銅貨に姿を変えた。
「…よし、じゃあ帰ってオカミさんに報告しにいきましょうか!」
「そうですね」
…街戻り、ギルド本部に依頼達成の報告をする。
「ただいま戻りました」
「あらお帰り、どうだった?」
「ばっちりです!ちょっとヒヤヒヤしたところもありましたが…」
「まぁ無事達成できたし、良かったじゃない!」
「えぇ、そうですね…」
「じゃあ二人とも、ギルバイス出して!今回の依頼成功ポイントつけてあげるから」
「ポイント?」
「えぇそうよ、あら言ってなかったかしら?依頼が成功する共にポイントが増えて一定数貯まる事に冒険者ランクを上げるの」
「へぇ、そうやってどんどん上へ上がっていくんですね」
「そうよ、とりあえず今日は5ポイントつけとくから!後20ポイント貯まったらDランクに昇格できるわよ!」
「ホントですか!よし、頑張ろう!」
「頑張りましょうねアンディさん!」
「はい!」
「あ、後これは依頼の報酬の銀貨四枚ね」
「ありがとうございます」
「とりあえずもう遅いから今日はもう休みなさい」
「はい、ありがとうございました!ではまた明日」
本部を後にする。
「さてと、この辺に宿屋ってあるんですか?」
「ありますよ、すぐ近くです」
「そうですか、案内してもらっていいですか?」
「もちろんです、こっちです!」
…ギルド本部から歩いて五分もしないところに宿屋があった。
「こんばんはー」
「いらっしゃいませー」
入り口の受付で10歳ぐらいの女の子が出迎えてくれた。
「一晩ここに止まりたいんだけど、いいかな?」
「はーい、少々お待ちくださいませー」
帳簿を確認する少女、しばらくして
「あの~、お客様?申し訳ないのですがぁ…」
「え?何?まさか部屋空いてない?」
「あ、いえ!空いてるには空いてるんですけどー…二人部屋が一つしか空いてないんですけどそれでもよろしければお泊まりできますけどもぉ…」
…僕は一瞬耳を疑った、確かに彼女は二人部屋が一つしか空いてない…そう言った。
・・・・・
はぁぁぁぁぁぁ!!何じゃその展開ぃぃぃ!
てことは何か?僕と?アリアさんが?同じ部屋で一晩過ごす!?イヤイヤイヤイヤイヤ!!無理がある!流石に無理があるぞ!
いくら今の僕が16歳でも中身は30歳のオッサンだよ?
しかも僕なんてまだ童貞だし絶対理性が保つ気がしないもの!
冷静に考えろ!相手は15歳の汚れを知らないあどけない純真無垢な少女だぞ!未成年だぞ!
いや、あくまでも今は16歳であるからして合法なのでは?
いやでも、あくまでも中身は立派な大人であるからして…ここは大人として紳士的に…いやでも僕に大人としての素質があるかどうか微妙なところだよね…未だに童貞だし、つい最近まで引きこもりのクソニートだったわけだし…
あぁ、一体僕はどうすべきなのだろうか?
「…あの~、どうかしましたか?」
「はっ!いえ!何でもないですっ!」
「それで、どうされますか?お泊まりになられますか?」
「え、え~っと…」
と、泊まるか否かドギマギしていると
「じゃあ、二人部屋でお願いします」
アリアさんが即決で答えた
「!!?」
「?、アンディさん?」
「へっ?はっ、やっ!ちょ、アリアさん?ホントにここでいいんですか?」
「…?何か問題でも?」
「や、だって…ふ、二人部屋って…」
「それが何か?」
「えっ?」
「えっ…??」
この反応を見て僕は一瞬で悟った…この娘、やましい感情なんて微塵もないっ!!!!
ホントに混じりっ気なく純真無垢の真っ白なんだ!!!
そんな幼気な少女相手に僕は…僕は…不甲斐なしっ!穴があったら入りたい!!
「…アンディさん?」
…僕には、この真っ白なキャンバスを汚すことは許されない、何がなんでも守り通してみせる!
「…あの、もし嫌だったら他の宿でも…」
「いえ!ここに泊まりましょう!大丈夫!何の心配もありません!僕なら大丈夫!」
「は、はい…」
「と、いう事なので…泊まらせていただけますか?」
「あ、はい!では、二名様で銀貨二枚いただきます」
少女に銀貨を支払う
「では、お部屋は奥に行って右のお部屋をお使いください」
鍵を受け取り、部屋へ向かう。
(…いよいよだ、絶対に手は出さないぞっ!)
to becontinued...