第9話 「認識」のずれ
冒険者学校2日目。今日から本格的に授業が始まる。授業と言っても初めから高度なことをするわけではないだろう。そんなことをすれば、ついてこれない生徒が大半だ。まあ、Sクラスの連中は知らないけど。俺はルームメイトであるアレンと登校し、ガイ先生が教室に来たので俺は自分の席につく。
「よし!全員いるな。みんなおはよう」
「今日はクラスの親睦を深めるために5人グループで学校内にあるダンジョンに潜ってもらう!」
ダンジョン?これまたファンタジーの世界にありがちな展開になってきたな。
「みんな、昨日初めて顔を合わせたばかりで、自己紹介はしたがそんなことではあんまりクラスメイトのことを深くは知らないだろう。今回はグループに分かれて簡単なダンジョン攻略をしてもらおうと思う。ダンジョンは俺が作った初心者用のごくごく簡単なものだから気を張らなくていい。それじゃ、手っ取り早く親睦を深めよう!早速だけど、外の中庭に集合!」
そういうと、ガイ先生は走ってどこかに行ってしまった。すると、サレンが話しかけてきた。
「レイン、ダンジョンだって!楽しみだね!」
「ああ・・・うん」
なんだそのキラキラした目は。うわ!眩しい。サレンの目はウキウキがとまらないそんな目をしている。昔から、こういうイベント好きだからなー、サレンは。
それにしてもダンジョンか。ダンジョンは、内部は敵の巣窟になっている。宝箱などが設置されていてレアアイテムを獲得できることもある。つまり、ダンジョンはハイリスク・ハイリターンの探索スポットと言っていいだろう。だが、これもゲームでの解釈だ。この世界はゲームではない。ダンジョンの中がどうなっているかは入ってみないと何とも言えないな。
なんだかんだで、俺たちSクラスは中庭に集合していた。
「15人全員来たな。ダンジョンは全部で3つある。それぞれ洞窟になっていて最深部に僕が旗を立てといたからそれを持ってきてね。ダンジョンは3つあるから5人グループを3つ作ってそれぞれのグループで1つのダンジョン攻略をしてきてね。それじゃ、恨みっこなし!くじでグループを決めます!」
「はいはい、どんどんくじ引きに来てねー」
「おっしゃー、くじ引くぜー!」
「おうおう!面白そうじゃのう!」
俺たちはくじを引き始めた。相変わらず、こっちの世界に来てもガジル・ヘイドなどの一部生徒ははしゃいでいる。俺もはしゃいでいる連中のあとくじを引く。くじには「1」の数字が書かれていた。俺のところに「1」の数字が書いてあるということは3グループに分かれるのだから他の連中にも「1」、または「2」「3」の数字が書かれているはずだ。
「よし!グループに分かれてくれ!」
俺は「1」のくじを持っているメンバーで集まったのだがなかなか個性的なメンツがそろった。
「よろしくな!ガジル・ヘイドだ」
ガジル・ヘイド。ガジルの家系は代々騎士の家である。ガジルはその家系の中で100年に一度の逸材と呼ばれている。騎士と聞くと冷戦沈着と言ったイメージが俺の中にはあったのだが、ガジルはそれとは正反対な性格をしている。破天荒というか、暑苦しいというか・・・。ガジルは騎士としての才能がずば抜けて高く反射神経や筋力はその見た目から一目でわかる。身長は190センチ以上の身長と高く体格はゴリマッチョというかボディビルの人のような体系である。
「ああ、よろしく。レイン・スティールだ」
「俺とお前だけか!」
なわけないだろ!ガイ先生の話聞いてなかったのか?
「あと、3人いるはずだよ」
「あんたら、「1」のグループかね?」
「ああ!そうだぜ!」
ガジルが、声をかけてきた小柄な女子に返事をする。
「私、ミコト・ムラクモというものじゃ。よろしくのう」
ミコト・ムラクモ。彼女は人間ではない。鬼人族である。鬼人は半分鬼、半分人間のハーフというとわかりやすいだろう。人間にはない鬼としての身体能力と額から生えている2本の角で相手の感情や考えていることなどを察知できる。人間に近いが人間ではない。鬼人族は魔族の侵攻で鬼人の数は半分ほどまで減っている。やはり、数少ない種族だけに冒険者学校でも目立つ存在だろう。
「レイン!」
俺は、名前を呼ばれ振り返ると、そこにはアレンとアメリアが歩いてこちらに向かってきている。
「アレンも「1」のグループなのか?」
「うん!アメリアもね。他の「2」「3」のグループはもう5人集まってたから消去法でこっちに来たよ」
さて、これで「1」グループはやっと全員そろったわけだ。メンバーは・・・。
俺、レイン・スティール。
ガジル・ヘイド。
ミコト・ムラクモ。
アレン・ルイス。
アメリア・レイスの5人である。
俺たち5人のところにガイ先生がやってきた。
「「1」グループはまだ出発してなかったのか。他のグループはもう出発したぞ」
「おっしゃ!いこうぜ!」
俺たちはガジルを先頭にダンジョンの中に入っていった。
ダンジョンの中は洞窟のようになっていて迷路のように道が分かれている。俺たちははぐれないよう5人まとまってダンジョンを進んでいった。始めの頃は敵も出てこないので話をしながら進んでいった。
「この5人でそろったのも何かの縁!仲良くしようぜ!な!レイン!」
「ああそうだな。仲よくしよう。ガジル」
「なあ、アメリアとやら。自己紹介の時のこと覚えておるかのう?」
「ええ、覚えているわ。私が一番強い!」
「あんまり無理全方がええよ。あんたにとっては特にのう・・・」
ミコトがアメリアに心配している。鬼人特有の2本の角で何かを察したのか?
「そうだな!アメリアこのダンジョン終わったら俺と勝負しようぜ!どっちが強いかはっきりさせようぜ!」
「ええ!やってやろうじゃない!」
「まあまあ、落ち着いて二人とも」
ガジルとアメリアが喧嘩をしそうになっているところをアレンが止めに入る。アレンも大変だな。俺はその様子を後ろから眺めていた。
「おぬし、おぬし」
俺は隣にいたミコトに袖をつかまれた。
「どうした?」
「レインと言ったな」
「ああ」
「もう、盗み聞きはやらないほうがええよ」
「!?」
そう言うと、そそくさとミコトは歩いて行った。俺の盗み聞きに気付いたのはミコトだったか。それなら合点がいく。鬼人なら俺の魔力に気付いてもおかしくはない。
なんだかんだ少しづつ敵が現れそれを倒していき最深部らしき空洞にやってきた。
「何もいねえな」
空洞には旗だけが刺さっていた。俺たちは旗をとり帰ろうとしたのだが・・・。
「待て!何かおる・・・」
俺たちはミコトの言葉で戦闘態勢に入る。
空洞の奥の方から敵の軍勢が約100ほどであろうか。ネズミのような魔物が・・・。
おい・・・待て。魔物だと。今までどうして気づかなかった。魔物だぞ!魔物は魔族の一種だぞ!ダンジョンは魔物の巣窟。今までどうして何も思わなかった。ダンジョンに入れば「敵」がいる。その認識はあった。それは、他の4人にも「敵」という認識はあった。でも「敵」=「魔物・魔族」という認識がなかった。いつからだ!「敵」を「魔族」思わなかったのは。それにガイ先生はこのダンジョンを「俺が作った」言っていた。ということは・・・。
俺は思わず大声で叫んだ。この状況を皆に伝えなければ俺たちはここで死ぬ。これは罠だ。
「聞け!これはただの遊びじゃない!罠だ!認識を惑わされるな!今、目の前にいるのは魔物だ!」
「「「「!?」」」」
「なんで気づかなかったんだ!こいつら魔族じゃねえか」
「そうよ!なんで」
「なんで・・・」
「そうじゃ!なぜじゃ」
全員気づいたようだ。
「気引き締めていくぞ!」
俺たちは100匹のネズミの魔物を相手に戦う。
それぞれの認識が「魔族」になっているためもう手加減はしない。もし、認識が「敵」=「魔族」になっていなかったら俺たちは遊び半分でダンジョンに入り全滅している。時間はかかったが何とかネズミを全滅し俺たちはダンジョンの出口へと走った。
俺たちはこの状況を確認するため出口まで走りながら状況を整理した。
「レイン。俺たちはいつからおかしくなっていた?」
アレンが冷静に俺に訪ねてくる。
「俺もさっき気づいた。俺たちは「認識」を操られていた。だが、その「認識」をずらし操って俺たちを全滅させようとした奴の検討はついてるだろ!ここにいる全員」
「俺たちを操っていたのは・・・」
「「「「「ガイ先生」」」」」
よろしくお願いします。