第57話 決意と約束
僕は、自身に眠る魔族の力の暴走により、気絶した。暴走した時の記憶は曖昧だが、一つ確かのことは、仲間が助けてくれたと言う事実のみ鮮明にわかった。
目が覚めると、マナティス魔法騎士団宿舎の一角の病室にいた。目覚めた瞬間、身体中の痛みが襲う。そして、神の仕掛けた襲撃を思い出した。
「みんなは!?」
僕は痛む体を無理やり起こし、騎士団の闘技場へ向かった。
戦いの余韻が残るマナティスの地。焦げた土の匂いと、崩れた建物の残骸が、その激戦の跡を生々しく物語っていた。僕はその場に立ち尽くしていた。彼の目の前では、騎士団の生き残りたちが負傷者の治療や後片付けに追われている。マナティス魔法騎士団は再建の道を歩まねばならない。
「王子、長き眠りから覚めたこと、大変嬉しくございます。また、私の失態もこの場でお詫びします」
「お前は・・・一体誰だ・・・」
僕の脳内に何者かが話しかけてくるのだ。不思議と懐かしさを感じるがなぜなのか・・・。
「申し遅れました、私はシュナク。貴方様に付き従う魔族の1人にございます。今後何かあればご命令を!私は貴方に付き従うのみ」
「いつから僕の中にいたの?」
「いつからというとなかなか時間が長く曖昧ですが、貴方様がこの世界に転生されてからずっとと言っておきましょうか」
「君は僕が、転生者だって知ってるんだね」
「もちろんでございます。貴方様のことはなんだって」
「でもどうして、僕は魔族の力を使えるの?」
「さて、それは、これから先貴方様自身が自らの手で見つけ出さなければならぬこと。私からお伝えすることはできません」
「そっか。何か事情があるってことね。でも君はこれからは僕に力を貸してくれるってことでいいんだよね」
「もちろんでございます」
「わかった。これからよろしく頼むよ。シュナク」
「承知いたしました」
そうして、シュナクとの会話が途絶えた。
一体彼が何者なのか、僕自身が何者なのか、その答えをこれから導いていかないといけない。
そして、僕は、ゲイル、ニーア、シルヴィア姉さん、ゼノアたちと再会を果たした。
僕たちは抱きしめ合い、無事にこの戦いを生き残ったことに感謝した。しかし、失った仲間もいる。これは僕たちが背負っていかなければならない事実であり、鎖だ。
ゼノアのことも本人から聞いた。ゼノアの正体そして、この戦いの首謀者である神の存在。
神のことは僕は絶対に許すことはできないし、これからの人生は、そんな強大な神に挑むことになるかもしれないと思うのだった。
ふと姉さんを見ると、姉さんは何かを覚悟したような表情をしていた。
「どうしたの?姉さん。何か覚悟を決めたみたいに」
「いや、ハルには敵わないな」
「よし! ハル、ゲイル、ニーア、ゼノア聞いてほしいことがある」
神との戦いがすべてが終わった今、残された者たちはそれぞれの道を選ばねばならなかった。
シルヴィア姉さんは静かに剣を納めると、決意を込めた眼差しで仲間たちを見渡した。
「……私が、これからの騎士団を率いる!」
「ついてきてくれるか!」
僕たちの答えは決まっている。僕たちは一斉に答える。
「「「はい!」」」
「俺たちで守り続けるんだろ?」ゲイルが笑みを浮かべる。
「もちろん。マナティスを、そして私たちの帰る場所を、私たちが守っていく!」
シルヴィア姉さんは力強く言った。
ニーアも静かに拳を握る。
「私も副団長を全力で支えます!」
こうして、シルヴィア姉さんが正式に団長へと昇格し、ゲイルとニーアがその補佐として騎士団の再建に尽力することとなった。
マナティス魔法騎士団は、この戦いを経てさらに強固な軍となるだろう。
この決意と共に突然の別れもやってきたのだ。
ゼノアはゼインの身体を支えながら、静かに前を向いていた。
「私はゼインを連れて龍の国へ帰る。彼を回復させるために」
その言葉に、ゲイルが眉をひそめる。
「それって……もう会えなくなるってことか?」
ゼノアは笑顔を浮かべたが、どこか寂しげだった。
「……ううん。きっと、また会える」
しかし、それは叶わぬ願いだった。
その時、この場にいた僕たちへ龍王の声が響く。
「龍の干渉は、許されぬもの。ゆえに、我が力でこの騒動に関わった者たちの記憶を抹消する」
その言葉に、一瞬、場の空気が凍りつく。
「待て……それじゃあ、ゼノアとの記憶も?」
ゲイルが食い下がる。しかし、ゼノアは静かに頷いた。
「そう……私の存在は、最初からなかったことになる。ゼインも戦死したことになる」
その瞬間、僕、ゲイル、ニーア、シルヴィアの胸に、言いようのない喪失感が広がる。
「ふざけるなよ……そんなの、そんなのって……」
「何勝手に決めてんだ!そんなの、そんなことありなのかよ!」
ニーアの拳が震え、ゲイルが奥歯を噛みしめる。
しかし、ゼノアは微笑んだ。
「だから……約束しよう?」
彼女は涙をこぼしながら、四人を見つめる。
「絶対に思い出してやる……!」
ハルが言葉を絞り出す。それに続くように、ニーアも、ゲイルも、シルヴィアも、強く頷いた。
「絶対に、思い出す……!」
俺たちは互いの剣を重ね誓い合う。
俺たちの絆は永遠であると。
そして、翌日、ゼノアとの別れとなった。
僕は名残惜しそうにゼノアの顔を見つめる。
「本当に行ってしまうんだな」
「仕方ないよ。ゼイン(団長)を助けるためだし……それに、龍の国には私にしかできないことがある」
「……ありがとう、ゼノア。ゼインのこと、お願い」
「うん……任せて!副団長!」
そして、ゼノアはハル、ゲイル、ニーア、シルヴィアの前に立ち、彼らをまっすぐ見つめた。
「みんな……今までありがとう。私、行くね」
ゼノアは龍の姿に変わり、ゼイン団長を抱え飛び立っていった。
その瞬間、龍王の力が発動する。
──この戦いに関わった者たちの記憶から、ゼノアとゼインの存在が消えていく。
僕は叫んだ。
ゼノアに届くように大きな声で
「絶対に思い出してやるから!待ってろよ!ゼノア!」
その言葉に答えるかのように、一頭の龍の咆哮が青空中に響くのだった。
それからも僕たちはマナティス魔法騎士団の再建は続いていく。
ゼイン団長の死、そして失った仲間たちの分までこれから頑張っていくと決意を固めたのだった。
だが・・・何か違和感があるのである。
……なぜか、胸の奥が苦しい気がする。何か大切なものを忘れてしまった気がする……。
「ハル!ちょっとこっち手伝ってくれ!」
「今行くね!」
【龍の国・神殿】
ゼノアは龍王の前に立ち、深く息を吐いた。
龍王は静かにゼノアを見つめる。
「……これで本当に良かったのか?」
ゼノアは涙を拭いながら、しかし、しっかりとした声で答えた。
「はい!約束しましたから!絶対に約束を果たせると信じてますから!」
龍王は静かに目を閉じる。
「──ならば、見届けよう。お前の選んだ道を」
ゼノアの決意とともに、物語は再び動き出す──。
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時は現在に戻り、
神に操られた魔王軍が迫るマナティス──新たな戦いが幕を開ける!
よろしくお願いします!




