第54話 王子
よろしくお願いします。
ゼイン・マナティスは戦っていた。生き物なのかと疑問に残るような何かと。奴は笑っている。この戦いを楽しんでいる。奴は神なのだという。戦っていているからこそわかることがある。本当に奴は神なのだと。
「なぜ僕を殺そうとしている?神よ」
「なぜそんなことを聞く?これから死ぬ君には関係ないことだよ」
神は無数の光の刃を作り出し、僕へと放つ。その刃は、僕の死角を確実に捉えてくる。僕はただその刃を避けるもしくは弾くことしかできないでいる。額に焦りそして、恐怖が滲んでくる。これが、神。奴は笑っているだけで、その場から一歩も動かない。ただ笑って刃を放つだけ。
「つまらない・・・」
神は刃を止める。ただの気まぐれなのか何なのか。
「ねえねえ、本当に君さ〜。マナティス最強なの?手応え全くないんだけど・・・」
なるほど、そういうことか・・・。
「そうだね。確かに僕はマナティス最強の一人、ゼイン・マナティスであっているよ」
僕はこの時、嘘をついた。
「君は単純な気まぐれで、僕と遊びたいだけみたいだね」
「だから何だっていうの?」
それならば、出し惜しみなしで行こうかな。
「自分に今できる最善を!」
「魔力最大解放、我が身に宿れ、権限せよ!不死鳥!」
その呼びかけに答えるかのように、顕現した幻獣。それは青き炎に覆われた幻獣。その羽ばたきで周囲は強烈な熱気に包まれる。そして、その幻獣は・・・。
「魔装・・・展、開!」
ゼインの体は幻獣フェニックスに包まれ、身体中は灼熱の炎の鎧で包まれた。
「いいねえ・・・やっと本気ってことだね」
「来なよ、ゼイン」
一方、シルヴィア、ゲイル、ニーア、ゼノアの4人は悪魔と黒龍と戦闘中であった。悪魔は主に黒い斬撃を飛ばし遠距離からの攻撃をメインとする。黒龍は大きな鉤爪をメインとした近接を得意としているようだった。黒龍には魔法の一切が効かなく、逆に悪魔は剣による攻撃が一切効かない。しかし、こちらが不利かと言えば、そうではない。シルヴィアの魔力は光。光の魔力はこの2体には効果が高いようだった。
「お前たち!先に悪魔の方からやるぞ!」
「ライトニング・スピア!」
シルヴィアの光の槍は、高速の速さで接近する。
「打撃攻撃が一切効かなくても、魔力を含んだ攻撃だったら、こいつには効果ありだ!」
その槍は、悪魔の胸部を一方的に何百回の刺し、悪魔は黒い粒となって消えた。
「なんだあれ?本当に人間業か?」
「私たちのサポートの隙もない・・・」
ゲイルもニーアも、シルヴィアの圧倒的な攻撃についていけないでいた。それほどまでに、シルヴィアの攻撃は圧倒的だった。
そんな戦闘の中、一人冷静さを無理矢理にでも保とうとする者がいた。思考は止められない。この状況で躊躇もできない。私がやらないといけない。迷うな。私の目の前にいるこいつは副団長じゃなくて、私がやらないといけない相手。私は覚悟を決めた。
ゼノアはその黒龍を一点を見つめる。竜の心臓は3つある。その心臓を同時に切らない限り、蘇る。
「一撃で決めるね。お父さん」
「魔力全解放!我が鉤爪よ、全身全霊を持って屠れ!ドラゴ・ジャッジメント!」
ゼノアは涙の一切を我慢し、魔装の一部である巨大な鉤爪を黒龍に向かい放つ。その鉤爪は黒龍の分厚い鱗を切り裂き、的確に3つの心臓を切り裂いた。
切り裂いた、黒龍はなぜか幸せそうな目をゼノアに向けていた。その黒龍の目は、「ありがとう」そう言っているようだった。
そうして、ゼノアは前を向いていた。
「ゲイル、ニーア、ゼノアお前たちは一度、本部に戻れ」
「何言ってんすか!まだ団長が戦ってるんすよ!」
「わからないのか、向こうからやってくるこの熱気が・・・、ゼインが魔装を展開している」
「わかったなら行け!お前たちでは太刀打ちできない」
「でも!」
「「でも」ではない。これは命令だ!」
「私はこの場に残ります」
「お前には何かやらなければならないことがあるってことか、ゼノア」
「はい」
「わかった」
そうして、ゲイル、ニーアは魔法騎士団本部へと戻り、シルヴィア、ゼノアはゼインの元へとかけて行った」
そして、僕は、マナティス魔法騎士団訓練場にみんなを救援を呼びに行った。だが、そこは、すでに戦場になっていた。みんなが剣をとり殺し合っている。倒れている者、剣を味方に振っている者。
「どうして・・・こんなことに・・・」
「ハル!剣をとれ!」
その声と共に、僕に一本の剣が投げられた。そして、その声の持ち主は僕に剣を向ける。僕は咄嗟に剣をとり迎えうつ。
「さすがだ、ハル」
その声の主は、マナティス魔法騎士団、部隊長ザフ・ローズ。ザフ部隊長は身体中が傷だらけであり、力を込めている腕や足からは大量の血が流れている。
「どうしてこんなことに・・・」
「いいか・・・よく聞け、ハル。俺たちの目の前に神という奴が突如現れた」
あいつは今、団長たちのところにいるはず・・・どうして・・・
「その神は今、団長たちと交戦中です。それを伝えるために僕は・・・ここに来ました」
「そうか、ハル。その神は俺たちに魔法をかけて、俺たちの意思とは関係なく・・・体が勝手に動き、人を切ってしまうようにしちまったようだ」
「何だよ・・・それ・・・」
あいつは一体何がしたいんだ!人の命を何だと思っているんだ!俺は無性にあの神に荒立ってしまう。僕は力がないそれでも怒る権利ぐらいはある。
「ハル。お願いがあるんだわ。俺たちを殺してくれ」
「何言ってるんですか・・・」
「このままだと、みんなを殺してしまう。幸い、俺は魔法に耐性があったのかは知らねえが何とか神の魔法に抵抗できてるが、もう限界なんだわ・・・」
「だから・・・頼む・・・。ハル・・・」
「何言ってるんですか!あなたたちはこの国を守るんでしょ!そんなみなさんが・・・・」
「そうだな。俺たちはこの国を守るための組織だ。だからこそだ。このままいけば、俺たちは、国の住人を切ってしまう」
だから、魔法騎士団のみんなは自分たちを自分たちで止めるためにこの惨状とかしたってのか。
「ハル!頼む!」
「頼むぜ!ハル」
「お願いだ!」
訓練場にいるみんなが僕にお願いする。いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、みんなを失いたくない。ここは僕の居場所だ。みんなを守りたい。でも、僕にその力はない。どうして僕は何もできないのか、僕は絶対に許さない。この世界の神。僕は許さない。必ず、復讐する。僕はあの神を絶対に殺す。僕の体よ、精神よ。今だけでいい。力がいるんだ。魔物でも悪魔でも何だっていい。力を貸せ!
「はい。仰せのままに。王子」
その声は僕の脳裏に響く。僕の精神の中に一体の不気味な黒い影が現れる。
「お前はいったい・・・」
不思議だ。僕は、こいつを知っている。懐かしい。
「やっと、覚醒されましたね。我が王子」
「存分に我ら魔族の力、お使いください」
「ありがとう。シュナク」
僕はその影の手を取った。
「部隊長、僕は諦めません。この国の住人にはみなさんも含まれているんです。だから、僕は絶対に諦めない!」
その時、僕の体からは禍々しい漆黒の魔力があるれでていた。全身に黒い痣が出現し、額からは一本の角が生えていた。
腕からは黒い液体垂れ流れ、その液体は、黒い剣の形を形成した。
部隊長ザフ・ローズは思った。
目の前にいるのは、魔族であると・・・。




