第52話 はじまりの出会い
よろしくお願いします。
「おい!何をやっている!ギムル!」
魔王ルシファーは困惑していた。
「申し訳ありま・・・せん・・・魔王様、体の・・・自由が・・・きか・・・なく・・・」
魔王軍第3軍 軍団長ギムル。冷静沈着で、魔族のためを思う心優しき魔族の要。
「どうして・・・」
魔王ルシファーは、膝をつき絶望する。
「クソが!!」
魔王ルシファーはどうしてこうなってしまったかを知っている。どうにもならない、何もできない、逆らえない。いつまで続くというのだ。この光景が、この絶望が・・・。魔王ルシファーは歯を食いしばり、魔王の目には怒りの感情が爆発していた。
「魔王様、顔をお上げください。あなたがここで倒られてはレインに示しが尽きません」
「そうやね・・・シュトちゃん・・・」
「私は争い続けるぞ・・・神どもよ。お前らのお遊びもそろそろ終わりにしようや・・・」
そして、魔王軍第3軍は、魔王の意向を無視し、感情のない屍となり、マナティスへの進軍を開始した。
マナティス魔法騎士団では着々と魔族との戦いに備え、準備を急速に行われていた。僕は食料の準備から、武器の整備まで様々なところに顔を出し、準備に明け暮れていた。僕は、これらの準備に不備があってはならないと思っている。これらの準備は表立ってはできこない地味な仕事だ。実際に戦うのは魔法騎士のみんなだからだ。
僕は主人公じゃない。僕の仕事で少しでもいい。ほんの少しでもいい。みんなの生存率が上がるのならなんだってやってやる。それが、自分の命が尽きようと・・・構わない。
みんなが無事でいたらそれだけでいい。
魔族との戦いの前夜、僕、ゲイル、ニーアの3人は食堂にいた。
ゲイル・カッシュ。
僕らの同期の一人。入団したての頃は、プライドが高く、自信過剰。周りの指示も聞かない問題児。それでも、これまでの戦いや訓練で、そのプライドは、良い方向へ向き始める。誰よりも訓練に励み、いつしかこの魔法騎士団の主砲としての役割を果たすようになっていた。その実力は、この国最強の姉さんのお墨付きでもある。
ニーア・グランシー。
僕ら同期の一人。誰にでも優しい聖母のような温かな雰囲気の女性。魔法騎士団では回復魔法での回復担当である。ニーアは争いごとが嫌いだ。それでも、そんな彼女が、魔法騎士になった理由、それは自身に争うごとを止める力があるなら私が止める。その思いの基、入団を決意した。
「とうとうだな」
「そうね」
「うん」
僕ら3人は魔法騎士団での同期組である。これまでの戦いで数多くいた同期も僕ら3人になってしまった。毎回、大きな戦いの前には3人で集まるようにしている。いつからかわからないけど、いつの間にか集まっていた。僕らは決まって、ここではこれまでを振り返る。これまで散っていった仲間の分も一緒に。
この集まりには暗黙のルールがある。
絶対に泣かないこと。
僕ら3人は最後に拳を付き合い宣言する。
「「「生きて、帰ってこよう!マナティスへ!」」」
時は遡り・・・、3年前。
レインやジーク達が転生する前のお話。
僕は、入団式の中にいた。多くのマナティス魔法騎士が見守る中、新入団員の隅っこにいるのである。
「入団おめでとう!皆の入団に感謝する!私はマナティス第1王子兼魔法騎士団団長ゼイン・マナティスだ。よろしく頼む!」
この国の王子様、ゼイン・マナティス。彼が、この国の魔法騎士団長を務めている。彼が魔法騎士団長になり、マナティスは将来安泰だとそう言われている。彼のカリスマ性は凄まじいもので、どんなことでもそつなくこなし、実績を残している。
その後、隣にいる女性が挨拶をする。
「マナティス魔法騎士団副団長シルヴィア・ウォードだ。よろしく頼む!」
入団式は滞りなく、終わり、今日のところは、そのまま解散となり明日からは訓練が始まるとのことだった。まあ、僕は雑用係としての採用なので、これから明日の準備だったり、夕食の準備、訓練場の整備を行う予定である。
「さて、頑張りますか」
この場から後にしようとした時だった。
「お前、弱いな・・・」
新入団員だろうか。かなりの男前、明らかに関わるとめんどそうな奴に絡まれた。
「お前みてえなのがなんでこの魔法騎士団に入団してやがる」
「僕はただの雑用係としての採用なので、魔法騎士団の家事全般等のサポートを行いますけど・・・」
「なるほどな・・・」
「そうか!そうか!俺は、この魔法騎士団の最強になる男!ゲイル・カッシュだ!よろしくな!お前は?」
「僕は、ハル・ウォードと言います。よろしく」
「ウォードってお前・・・マジ!?」
その時、ゲイルは突如として頭を鷲掴みにされ悶えた。
「おい!私の弟に何喧嘩ふっかけているんだ・・・」
「副団長・・・痛い、痛い・・・です」
「ハルに謝ったら離してやる」
「すみま・・せん・・・でした」
これが、ゲイルとの出会いだった。
そして、ここから全てが始まったのだ。
僕ら6人の最善を尽くした物語。
そんな僕らの様子を見ていた女の子が一人。
「なんか楽しそー」
「そい!」
「宿舎に戻るぞー。ニーア」
「あ!待ってよー。ゼノアちゃん!」




