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第5話 冒険者学校マギアと振分け試験

 俺がレインとして転生して、はや6年が経とうとしていた。この6年何もしなかったわけではない。むしろ、アホみたいに魔法の特訓に明け暮れていた。その影響で、体は鍛えられ、魔法のレベルも適正魔法である隠密、偵察の魔法はレベルが40まで上がっていた。風魔法に関しては、サレンも同じ魔法を使えるのでよくコツを教えてもらっている。サレンとは魔法の特訓を一緒にしたのはたった1年間だったが、これまで疎遠だっただけにサレンのスキンシップが激しくなっていったのはもう15歳になるので反応に困る…。当のサレン本人は全く気にしていないようだけど…。もう俺だって思春期真っ最中なのだからもう少し自重して欲しいものである。


 さて、話を戻そう。

このままストーリーが進めば、サレンは今年死が確定している。その確定している「サレンの死」を阻止するのが、レインの運命に抗う最初の難関である。正直に言おう。サレンの死を確実に阻止する方法は全くないと言っていいだろう。その理由は1つ、予想が立てられないのだ。予想が立てられないと言っても全く立てられないわけではない。サレンの死が近づいている中ゲームでは、レインがどこにいるかがわかっていないからである。


 ゲームでは、勇者、つまりは主人公が中心としてストーリーが進行している。そして、モブキャラであるレインがサレンの死が訪れようとする中、どこで何をしていたのかは、語られていない。あろうことか、主人公である勇者がサレンの元にたどり着いたときにはもうサレンは死んでいる。俺が知っているゲームでの情報は、あくまでも主人公である勇者目線からのものであってモブキャラであるレインからはどこで何が起きていたのかは全くわからない。これが、モブキャラなのである。モブキャラは主人公の引き立て役であり、主人公ではない。だからこそ、この世界で知っているのは、主人公目線からの今後のストーリー展開と多少のサブキャラやモブキャラのサイドストーリーのみ。だが、もう時はきた。考えても仕方ない。サレンを守るためのチャンスは一度だけだ。覚悟を決めて進んで行こう。


 そんなことを考えていると、自身の部屋にノックの音が響いた。扉を開けて入ってきたのはサレンだった。


「レイン! おっはよー!」


俺はサレンに飛びつかれベットに再び押し倒される。


「サレン…離してくれ…」


「やだー!」


なぜ⁉︎

サレンの顔がもうすぐ近くまで迫ってきている。レインに転生して俺も15歳になったが、成長したのは俺だけではない。サレンだって、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。顔だって6年前から可愛かったが、15歳になりその可愛さに拍車がかかったというか…なんと言いますか。相変わらず、後ろで髪を結びポニーテールは健在。銀色の髪をさらさらなびかせぱっちりした目、整った顔立ち、誰が見てもサレンを美少女と言うだろう。そんな彼女がもうすぐ唇同士が触れるくらいの距離にいるんだぞ!心臓がもう蒸気機関のようにバクバクである。サレンの顔はどんどん俺に近づいていき……。


「レイン! マリーさんが朝食だから降りてきてだって!」


サレンは唐突に顔を離し、そう答えた。


「ありがとう…先行っててくれ。着替えたらすぐ行くから」


「わかった。もう…()()()()()()()()()()()……」


サレンが最後何かブツブツ言って部屋を出ていった。


「いや…朝から心臓に悪いわ…」

俺はため息を吐きながら、着替えを始めすぐに部屋を出たのだった。


 朝食を済ませ、俺は冒険者学校マギアに向かう。今日は入学式と振分け試験が行われる。冒険者学校は最大で3年間通うことができる。冒険者と早いうちにマギア側から認められれば卒業となり冒険者として本格的に動くことができる。振分け試験は魔法の強さ、レベル、剣術など様々な要素からクラスがS,A,B,Cの4クラスに振り分けられる。ゲーム上では勇者パーティ連中は全員Sクラス所属、もちろんサレンもそうだ。だがレインもかというとそうではない。ゲームではレインだけクラスはBクラスなのだ。この振分け試験でサレンと同じクラスになるのが理想だがどうなるか…。でもこの6年間は確実にゲームとは異なる人生を送ってきている。


「あとは…俺の実力次第か…」


俺がいろいろと考えているとサレンに声をかけられた。


「そろそろ行こうかレイン!」


「いってらっしゃい!レイン!サレンちゃん!頑張ってらっしゃい!」


母さんとサレンの両親は俺たちを笑顔で送ってくれた。

冒険者学校マギアは俺とサレンの家からは少し遠いのでこれからは寮生活になるため母さんたちと会うのは3年後の卒業まで会うことは難しい。なんか、今まで一緒に家族と過ごしてきたからなのか結構ウルッときていた。


「あ!レイン泣いてる〜」


俺をからかって紛らわせようとしているのだろうが…サレン…。


「サレンも泣いてるじゃん…」


俺とサレンは寂しさと期待と不安を胸に冒険者学校マギアに向かうのであった。


 そして、俺とサレンは冒険者学校マギアに到着した。

冒険者学校マギアは15歳になったものならば身分関係なく誰でも入学することができる。そう、どんな種族でもだ。このようになったのも魔族の影響が大きいのは確かである。


 かつては種族同士の争いが絶えなかったこの世界。どの種族も力は均衡を保っていた。だが、その均衡を破った種族があった。それが、魔王率いる魔族である。魔族がどのような方法で力を手に入れたのかは謎に包まれているが、魔族は力をどんどん増していき、多くの種族が滅んでいった。そこで、魔族以外の種族は団結し、魔族の侵攻を防ぐことにした。だがそれでも、魔族の侵攻を止めるにはあと一歩力が足りなかった。しかし、ある日を境に魔族の侵攻が突如として止まったのだ。なぜ魔族が侵攻をやめたのかもまだわかっていないが、この機会に、各種族は団結し戦力増強を図るため各地に冒険者学校を建設し若い力の育成に取り組み始めた。そして現在に至る。


 今回、冒険者学校マギアの入学者は全部で150人ほどである。その中でSクラスに分類されるのはわずか10%の15人だと言われている。


「さて、まずは振分け試験頑張りますか!レイン」


「うん!そうだね」


 振分け試験はそれぞれひとりづつ試験が行われる。それぞれ学校から送られてきていた手紙に地図が入っていた。その地図には印がついておりまずはその場所に向かう。俺とサレンの場所は真逆の方向だった。俺はサレンと挨拶を交わし印の場所に向かった。俺はある洞窟の前にたどり着いた。するとそこには一人の男性が立っていた。その男性は20代くらいだろうか?体は無駄なく鍛えられガッチリした体型をしていた。それに加えて、普通にイケメンである。


「君が、レイン・スティールくんだね」


「はい!」


「私は君の振分け試験担当のガイ・ロッツというものだ。よろしく」


俺は緊張しながら挨拶を交わす。


「よろしくお願いします」


「まあ、そうかしこまらなくてもいい。これから試験内容について説明するね。試験内容はシンプルだ。私に君の全力を見せてくれて、ただそれだけだ」


「全力ですか」


「そう全力を、君は隠密や偵察の魔法が適正魔法だから君に適したフィールドを用意させてもらった」


だからこその洞窟ってことか…。俺の魔法は明るい場所よりも暗い場所の方が魔法を存分に発揮できる。それでも昼間の今、俺に不利なのは変わらない。弱点をどう克服するか、それもまた試験の観察科目ってところだろう。


「これは試験だ。もちろん反撃もさせてもらう。これで試験内容は分かったかな。それじゃあ始めようか」


「君の全力を私に見せてくれ!」


 そう言うとガイと名乗った男性は戦闘態勢に入る。

ガイさんは、右手に剣、左手に盾を持っている。それにひきかえ俺の持っている武器は小さな短剣一本のみ。さてどうするか…。


「こないならこちらからいきますよ!」


ガイさんは、一歩踏み込むと一気に俺の間合いに詰め、剣を振りかざす。俺は反射神経でギリギリのところで剣をかわす。俺は一旦離れ、体勢を整える。見る限り、ガイさんには隙がない。徹底して鍛えてるな。間合いに詰めようと思っても近づけさせようとしない。とりあえずこっちは距離をおこう。風魔法を使って加速した。だが、こっちが距離を置こうとしてもガイさんの方も加速しなかなか距離が離れない。向こうも警戒して、一定の距離を保とうとしている。だからこそ、洞窟の中に逃げさせてくれない。


「戦い慣れしてるな…」


「さて…頑張りますか…」


俺は隠密の魔法を使った。


「シャドウ・アウト…」


「消えた…?」


シャドウ・アウトは自身の影がなくては使えない魔法。自身の影に潜り移動をすることができる。シャドウ・アウトは影に潜りさえすればなんでもできるが制御が難しい。影に潜むと気を抜くと底なし沼のように体の身動きが効かなくなり意識が朦朧としてくる。俺は、シャドウ・アウトで一気に距離を詰め、ガイさんの背後をとり、ガイさんに短剣を突きつけ首寸前で刃を止める。


「降参だよ」


「ありがとうございました」


「いや、まさか影から接近してくるとは思わなかったよ」


「まあ、気を抜くとヤバかったですけど…」


「近づけさせないように警戒は怠らなかったが見事だったよ!結果は今日の午後には振分け試験の結果は掲示板に貼っておくから、確認してくれ!期待してるよレインくん」


「はい!ありがとうございます!」


俺は深くお辞儀をしガイさんが立ち去るのを見送った。


その時、俺とは真逆の方向から大きな音と爆発音が聞こえた。爆発音が聞こえたのはサレンの試験が行われている方向だ。


「サレンはどうだったかな…まあ、大丈夫か」


 その頃、サレンは慌てていた…。


「どうしよう…どうしよう…」


サレンの目の前には倒れた試験官が転がっていた。


「やりすぎちゃった…」


「レイン助けてー!!」


サレンは大声で叫ぶのだった。

よろしくお願いします。

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