第48話 全てを明かす時
僕は半年間探し続けた。レイン・スティールの生きている証拠を。僕の心の中で訴えている。
「レイン・スティールは生きている」と叫んでいる。
根拠なんてない、僕自身が、レインの死を受け入れられないだけなのかもしれない。それでも僕は・・・。そして、ついに見つけたのだ。レインの生きている証拠を・・・。
「レインの短剣」
僕はその短剣を持ち帰り、ある人物を訪ねた。
「ちょっといいかな・・、ドノバン」
「珍しい客が来たな・・・」
「妹はいいのか?」
「ああ、今は、スタートの街復興を頑張っているしね。陰ながら応援して見守ることにしているよ」
「今や、お前は変人扱いだからな」
冗談まじりに、僕を揶揄うドノバン。
ドノバン・テイク。僕たち冒険者学校1年Sクラスの仲間であり、種族はドワーフ。そして、天才鍛治師である。
「んで、何か用があるから、来たんだろ?」
「ドノバン、これを見てほしい」
僕は見つけた短剣をドノバンに見せた。
「これは!?レインの・・・短剣か」
「そう。君が製作したレインの短剣だ」
「見つけ出したってのか!?」
「ああ・・・見つけ出したよ」
「そうかよ。お前のやりたいことはわかった」
「この短剣に込められた、使用者の経験の記録を見せてくれってことだろ」
「その通りだよ。ドノバン」
武器や防具にはその使用者の想いであったり、経験を記憶する。その記録は、鍛治師であるドノバンなら記録を見ることができる。
「俺も見ていいんだろ?」
「もちろん。ドノバンにも見てほしい」
「でも、もしかしたら、ドノバンには衝撃的な内容を含んでいるかもしれない。それを覚悟して見てほしい」
「いや、ドノバン。場所を変えよう。これは、1年Sクラスと僕たちに関係のある人全員に見てほしい内容が刻まれている」
「だから、この記録はみんなで見ようか」
「わかった・・・今夜、みんなで集まろう」
「よし、決まりだ。みんなには僕から伝えておくね。それじゃ、今夜、よろしく頼むよ」
そうして、僕は、ドノバンのもとを後にした。
「なあ!ジーク!お前・・・何を知っている?」
「それは・・・、今夜のお楽しみってことで!」
僕は歩きながら、思考する。
レインがいなくなり、この世界の歪さを知っているのは、僕だけとなった。まだ、魔族の脅威が去ったわけではない。そして、僕やレインが転生者であること。僕らのこれまでの戦いの記録それら全てが、レインの短剣には記録として残っていると思われる。その記録は、この世界の住人にとって、異様な記録であり、僕が1年Sクラスのみんなに言葉だけで伝えても頭のおかしいやつと思われても仕方がない。
「現状として、変人扱い受けてるしね・・・」
だからこそ、レインの短剣を見つけた時、思った。
「覚悟を決めろ」と。
もう僕だけでは、何もできない状況となった。やはり、僕が1番気にしなければならないのは、サレンの存在である。彼女は、レインの努力が形となり、今を生きている。でもそんな彼女が、今度はレインと同じ想いをしている。
レインが彼女を死なせたくなかったように、彼女もまたレインには生きていてほしいと願っている。僕はレインの想いをこんなところで終わらせたくはない。
だから・・・覚悟を決めた。
みんなにこの世界の真実を伝えると・・・。
僕は、今夜のことを伝えるため、1年Sクラスのみんなや今後の展開に関わってくるであろうジーナ先輩やリディア先生にも声をかけた。
「ハンナ、ちょっといいかな」
「お兄ちゃん・・・」
僕はレインの短剣を見つけたことをハンナに話す。そして、今夜、レインの短剣に刻まれた記録をみんなで見ることを。そして・・・。
「ハンナ、お願いがある」
「サレンに会わせてほしい」
「サレンちゃんにもレインの短剣の記録を見せるっていうの?」
「そうだ・・・」
「そんなの!・・・サレンちゃんが・・・悲しまないと思って言ってるの!?」
「これは・・・必要なことなんだ・・・今後の僕たちの人生を左右することなんだ・・・」
「お兄ちゃんおかしいよ!レインが死んでからおかしいよ!」
僕がおかしいのは、1番僕自身がわかっている。それでも、これは、僕らにとってやらなければならない、知らなければならばい。これは、僕がやらなければならないことなんだ。もしかしたら、本当にレインはもう死んでいて、最悪の記録が映し出されているかもしれない。でも、それでも、僕はレインが生きていることに賭ける。
「頼む・・・・」
僕は妹であるハンナに深々と頭を下げて願い出た。
「お兄ちゃん・・・本気なの?」
「うん。本気だ」
「ハンナ、ジーク。見るよ私。レインの記録を」
「サレン!?」
僕らの会話を聞いていたのか、明らかに衰退した様子のサレンがそこにはいた。
「ジークが見つけて来てくれた、短剣。そこに何が映っているのか。私には見る義務がある!」
「サレンちゃん・・・」
「ありがとう。サレン。今夜はよろしく頼む」
僕は、その場を後にした。
そして、夜になり、僕ら1年Sクラスの面々とリディア先生、ジーナ先輩と僕の思いつく限りの主要人物に集まってもらった。
「みんな・・・今日はありがとう」
その場は静まり返っていた。誰一人喋らない。皆が緊張しているのだ。これから映し出されることは、紛れもない事実であり、もしかしたら、レインが殺されているかもしれない記録が映し出されておかしくない。
「ドノバン。お願い」
「ああ、わかった」
「アルケミスト・リンク メモリー展開!」
ドノバンは、レインの短剣に手を翳し、魔法を行使した。すると、僕らの脳内に、短剣に刻まれた記録が映し出されていった。
「これは!?・・・」
脳内には、僕やレインが転生者であること、僕とレインのこれまでの暗躍の記録、そして、クロニクル・ラインについて、全ての記録が刻まれていた。そして、レインが死んだと思われていたあの日の記録も・・・。
短剣の記録はレインが転移魔法で別の場所に転移されたところで、終わっていた。これで、わかった。
レインは・・・生きている・・・と。
「みんな、見終わったかな・・・」
「まずは、喜ぼう。レインは生きている」
サレンの目には大量の涙が溢れていた。
そして、皆の目線が僕に向いている。
「ジーク・・・お前・・・」
レインが生きていることがわかった安堵と、記録に映し出されていた、様々な僕とレイン暗躍の記録。僕は心なしかすっきりした気分になっていた。なぜだろう・・・さて・・・。
「話そうか。全てを明かす時がきたみたいだね」
「聞いてほしい。この世界について・・・」
よろしくお願いします。




