第46話 約束
「神、ぶっ殺しに行かへん」
俺は、その言葉を発した魔王ルシファーを凝視していた。何を言っているんだと。それは、魔王が行っても良い言葉なのかと。
「本気で言っているのか・・・」
「もちのろん!本気も本気!あったりまえよ!」
魔王は自慢げに微笑みを返してきた。俺には、その魔王の言葉に嘘はないと心の中で確信してしまった。何故かはわからない。でも、この魔王は、信頼できると、たった数分の出会いがそう思わせるほどの、カリスマ性がひしひしと伝わってきたのである。だからこそ、俺も自信の持って答えた。
「その提案、乗ってやる!やってやろうじゃねえか!神殺し!」
「そうこなくちゃね〜、良い返事だ!レイン・スティール!」
「さて、やっと本題に入れるわな!シュトちゃん!」
「シュトちゃんはおやめください。魔王様」
そう言うと、魔王は豪快に椅子に腰掛けた。
「本題に入れると言うのは・・・いったい?」
「そやな。シュトちゃん。説明してもらえるか?」
「承知しました。魔王様」
「レインくん。この神殺しの計画。我々はこの件をゴット・スレイヤー・プロジェクトと呼んでおります」
「ゴット・スレイヤー・プロジェクト、何ですかそのワクワクするような名前は」
「せやろ!せやろ!私が考えたんやで!」
すると、シュトーレンはこほんと咳払いし、話を始める。
「ゴット・スレイヤー・プロジェクトは名前の通り、この世界の神たちおよび神に仕える者たちを殲滅する計画です」
「この世界の神は現状で5神が存在していることが確認されております。全て、この世界の魔法の属性を司っている神であり、炎神、水神、風神、雷神、土神のすべての神を殺すことがこのプロジェクトの最終目的となります」
「シュトちゃん、ありがとう。ここからは私から説明するよ」
「承知しました」
今までの、クセのある喋り方から一変して、魔王は冷静に語り始める。
このプロジェクトが如何に困難で、馬鹿げた計画であることを・・・。
「この神の情報は龍王から齎された情報だから、信用してほしい」
「さてと、レインに一つ質問させてもらうね」
「今、現状として、この世界に転生者は何人いると思う?」
転生者の人数?何かこのプロジェクトに関係があるのか?現状、俺の知っている転生者は俺以外に俺が知っているのは二人。一人が、ジーク・テイラー。もう一人が・・・、アルバート・クラウ。
「三人かなと・・・」
「残念・・・。この世界に転生者は全員で7人存在すると言うことも龍王から聞いた」
なんかさっきから、龍王の情報収集能力高すぎないか?今までの情報ほとんど龍王からの情報じゃんか。
「現に今、確認されている転生者はレインくん以外にはジーク・テイラー、アルバート・クラウ、魔王ルシファーの4人が確認されている」
「は?」
「え?私なんか変なこう言うた?」
「いやいや・・・魔王も転生者なのか・・・」
「せやで?バリバリの関西で働くOLだったわ!」
「その関西弁はそう言うことだったか・・・」
「仕事のプレゼンとかは標準語モードになるけんど、いかんせん、日常会話は無理無理」
「魔王様、話がズレております」
「すまん、すまん」
「なので、この世界には転生者が我々以外にあと三人がこの世界のどこかにいることになる」
「ここからは、ゴット・スレイヤー・プロジェクトの工程を説明します」
「最初の工程は残りの三人の転生者を探し出し、転生者7人、勇者パーティーを魔王城に集めること」
「次に、集まった全員で、私、魔王ルシファーを討伐」
「最後に、魔王はただの操り人形ということが判明し、最後の裏ボス、神の討伐へと挑んでもらう」
「これが、アルバート・クラウから聞いたChronicle・Lineのストーリーの完結らしいよ」
「私たちはこのストーリーを実現させて、この世界の物語を完結させる」
「そうか・・・」
正直、このプロジェクトの計画は無謀すぎると、説明されるほどに思ってしまった。
「残りの転生者の所在はわかっているのか・・・」
「いや、わかっていない・・・」
「神の所在は・・・」
「わかっていない・・・」
「このプロジェクトは最初から詰んでいる、それは私が1番理解している」
「でも、やらなくちゃいけない。もう私は見たくない。転生者の苦しむ姿を」
「私は、魔王に転生してから多くの転生者のもがき苦しむ姿を見てきた」
「私からは何もできない。だって魔王だから。魔王はただ待つだけ」
魔王は勇者の待ち受ける存在。勇者への干渉はできない。だからこそ、魔物や魔族を使い魔王の元へ来るように何とか誘導する。それでも、何かのイベントを起こしても、勇者が生存しなければ意味がない。この世界はゲームではない。一回死亡すれば、終わり。もう一回挑戦はできない。また一人、また一人と転生者として送り込まれる勇者は魔王の送り込む魔族に殺される。
それはもう、魔王が間接的に殺していると同義なのである。そんなことを何十回、何百回と繰り返せば、心は、壊れる。もう、魔王の心は限界だ。いやもう限界は超えているだろう。魔王は目に大粒の涙を流していた。
「わかったよ。魔王」
「レイン・・・」
「残りの転生者のことは任せてほしい」
「俺が必ず探し出して戻ってくる」
「だから、待っていてほしい」
「魔王は待つのが仕事だ。だろ?」
「ああ、そうだね。待っているよ」
「魔王として」
「魔王に一つお願いがある」
「お願い?」
「魔王はいつも通り、イベントを起こしてくれ。勇者パーティーたちに」
「だけど、勇者が死ねばもうこの計画は・・・」
「大丈夫・・・今回の勇者そして、勇者パーティーは強い」
「俺は勇者たちと過ごしてわかったことがある」
「人間は弱い生き物だ。だけど、みんなで支え合い、弱いところを補い合い、互いに信頼することでどんな生き物よりも強い生き物になる」
「今回の勇者パーティー、いや、1年Sクラスは今までで1番強い!」
「そんじゃ・・・行ってくるわ。待っててくれ、魔王様」
俺はこのバンパイアの城をあとにすることにした。残りの転生者を探す旅へと向かう。どこにいるかもわからない。でも探すしかない。俺は、バンパイアの城の門まで歩いてきていた。
「レインくん。これを」
シュトーレンから漆黒の短剣を渡された。
「影の両手剣、君の影魔法を常時バフをかけ、持続時間も伸ばしてくれる優れものだ」
「ありがとうございます。シュトーレンさん」
俺の旅路を心配そうに見つめる。魔王ルシファー。この計画を手伝ってくれと言ってきたのは魔王様だ。だからこそ、責任を感じているのか、心配そうな目を俺に向けている。
だから、俺は、元気に、振る舞うことにした。これは俺から、魔王様に対する忠誠心を表すためでもある。
これは、俺だけの戦いではない。皆の選択がもたらした最善の選択肢。偶然に偶然が重なったのかもしれない。でも、俺は思う。これは運命なのだと。
「行ってきます!魔王様!」
魔王様は俺に近づき、抱きしめてくれた。
とても暖かく、魔王ではなく、女神様に抱きしめられているように感じた。
「行ってらっしゃい」
「はい!」
俺はバンパイアの城を後にし、残り三人の転生者を探す旅に出るのだった。
よろしくお願いします。




