第40話 リディアの目線の先
スタートの街復興祭は本日開催し大いに盛り上がりを見せていた。初日から始ったトーナメント戦は白熱した試合が続いている。第一回戦は、リディア先生の圧倒的無双から始まり何が起こっているのかわからなかったが会場の盛り上がりは一気に加速したように思える。
そして、俺たち1年Sクラスの試合も各々4会場で始まっていた。俺自身も第4会場でソフィーとの試合をちょうど終えたところである。身体はボロボロだし、多少の切り傷などは仕方ないものの体力的にかなりキツい。これからこんな試合が続いていくと思うと…。
「はあ…」
自然と大きなため息を吐いていた。俺はとりあえず次の試合まで休むため待合室まで戻ることにした。こんな試合が勝てば勝つほど続く。これまでの特訓の方がよっぽどましなように感じた。
「あれ・・・?」
おかしい。突如として目の前が真っ暗になっていく。体が動かない。倒れる・・・。
俺は、そのまま、廊下でぶっ倒れたのだった。
目が覚めると、俺は保健室のベットの上だった。
「俺は、どうしたんだ・・・」
あれ?なにがどうなってんだ。状況が呑み込めない。確か、ソフィーとの試合の後、待合室に戻ろうとして、そこから思い出せない。
「お前は廊下でぶっ倒れたんだ。レイン」
「リディア先生、どうしてここに」
「どうしてって、お前をここまで運んだのは私だからな」
そうか、倒れたのか俺は。
「自分の今の状況は飲み込めたみたいだな」
「はい」
「お前のトーナメント戦の出場は一回戦で取りやめにしておいた。これ以上また、倒れられても困るからな」
「身体的には、魔法で回復したみたいだが、精神的に疲れていたんだろうな。精神と体のバランスが崩れて倒れたってわけだ。少しは、休むということを覚えろ」
「すんません」
俺はリディア先生に怒られていた。今この場所には、俺とリディア先生しかいないみたいだ。
外からは、トーナメント戦が今も続いており、時折大きな音が響き渡ってきた。
「まあ、お前とこうして一対一で話す機会も早々ないだろう。少し付き合え」
「私がSクラス担任になって、まあまあな時間が経った。私が思うに、お前はよくやっていると思う。Sクラスってのは天才たちの集まりだ。一人一人が何かしらの吐出した能力を持っている。それ故に、集団的なまとまりを持つことが難しい」
「私から一つ質問だ。レイン、お前は自身が今Sクラスでどんな立ち位置にいると思っている?」
Sクラスでどんな立ち位置か。そんなこと考えたこともなかった。俺は今までこの世界に転生してサレンを守るためにと努力してきた。その中でSクラスの皆にはいろいろと助けられた場面は多くある。彼ら彼女らは天才だ。だから俺が才能で彼らに勝てることなどないだろう。
「まあ、しいて言うなら、足手まといですかね。俺は凡人ですし天才の皆には勝てるわけない」
俺は笑いながらそう言った。正直、本心からそう思う。俺が彼らに勝てるわけはないし、Sクラスにギリギリでたまたま入ることができただけ。Sクラスに所属できたのだって運だと思っている。
「私の目線から言わせてもらうと、お前は今、Sクラスの中心にいる。お前がSクラスを引っ張っていける立場にいると思っている」
「何言ってるんですか。ふざけてるんですか?」
「ふざけてなどいない。真剣に言っている」
リディア先生は笑うことなく真剣な表情をしている。
「あくまでも、私の目線からはそう見えているということだ。お前は、Sクラスの全員との交流があり、尚且つ、お前以外のSクラスの面々はお前に信頼を置いているように見える」
「今まで、何度かSクラスの担任をしてきたがこんなにもまとまりのあるSクラスは初めてだ。さっきも言ったと思うが、Sクラスってのは天才たちの集まりであるゆえに個々の能力が強くプライドや意見がぶつかり合いまともな集団として見ることはできなかった」
「だが、今回のSクラスはある一人の人物を中心に一つのグループとしてまとまりつつある。確かに、お前は、他の連中と比べれば、魔法の才や剣術、武術、学力といった才はないかもしれない。しかし、これだけは言える。お前は努力の才を持っているよ」
「だからこそ、お前に他の連中も信頼を置いているのかもしれないと私は思う」
「それに・・・」
リディア先生は、少し深呼吸をし息を整える。
「それに、お前をSクラスに推薦したのは、ほかでもないガイだからな」
「ガイ先生が・・・俺を」
「この話はこれでおしまいにしよう。最後だ。レイン、お前は自身が思うより、他の奴らはお前の影響を受けている。それを自覚しろ。一人で抱え込むな。お前の周りには誰がいる。それを忘れるな」
そう言うと、リディア先生は座っていた椅子から立ち出ていってしまった。
「ゆっくり休め。いいな」
その言葉と共に扉は閉められた。
今のリディア先生の話を聞いて様々なことを考えさせられた。たった数十分の会話だったが内容の濃いものだった。冒険者学校にきて、これまでたくさんの経験をして、サレンは俺にとって大事な存在だし、これからも変わることはない。リディア先生の話を聞いて俺は思った。
Sクラスの皆のことも、いつの間には大切な存在に変わっていたんだなって。ただのストーリーの登場人物から大切な存在へ置き換わっていたと自覚した。
これからも様々な困難が待っていることはすでにわかっている。ストーリーにない展開になっている以上もう俺のゲームでの知識も通じないことも考えられる。だけど、Sクラスの皆となら乗り越えていける、そんな気がしたのだった。
「さて、もう少し寝るか」
俺は目を閉じ、再び夢の中へ入るのだった。
そして・・・
「期待しているよ・・・レイン・スティール。これからが楽しみだ」
リディアのその言葉はレインには届いていない。リディアは笑みを浮かべ、本心からそう思うのだった。
「さてと、トーナメント戦、暴れてきますかね」
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