第36話 復興祭開幕
俺は復興祭の準備に追われていた。復興祭開幕まであと3日というところまで迫っていた。復興祭の準備は以前の闘舞祭の役職であった実行委員はそのまま引き継がれる形となるため俺は、実行委員としてSクラスの皆をまとめ準備を進めていた。でも、今回の復興祭の準備ではハンナが非常に頑張ってくれているため助かっている。闘舞祭の頃は重力魔法の影響があり体に負担を掛けすぎていた。今はもう重力魔法という錘から解放され、以前よりも生き生きとした表情をしている。
「これも、ジークの諦めなかった結果かね・・」
「レイン。ちょっといいか」
「はいよ。どうした?」
俺もハンナにまかせっきりにもできないからな。頑張らねえと。その後も、俺は復興祭の準備に勤しむのであった。
一方、とあるホテルの一室では二人の獣人の女の子と一人の男性が慌てていた。
「ナタリーは!?」
「わからないにゃ。安定の迷子だにゃ・・・」
男性のあわってっぷりに平然と返す獣人の女の子。迷子が日常茶飯事というような口調でやり取りが進んでいく。男性の慌てようはエスカレートしていき暴走気味になってきていた。
「落ち着いてください。マイクさん。ナタリーが迷子何ていつものこと。スタートの街の復興祭のステージまではあと3日。いつものように必ず見つけ出しますよ」
「マイクさんも私たちのマネージャーなのだからしっかりしてください」
「ごめんね。とりあえず二人はホテルで休んでいて。僕は片っ端から探しに行ってくるから!」
そう言うと、マイクはナタリーを探しに駆けていったのだった。
「ナタリー、大丈夫かしら・・・」
場所は戻り、冒険者学校では、復興祭の実行委員会が行われていた。俺とハンナはこの委員会に参加していた。上級生の方が今回の復興祭のプログラムと俺たち実行委員の当日の日程について説明が行われていた。
「今回私たち実行委員は今配った用紙の通り進めていきます。用紙に記載されている計画は、トーナメント戦の組み合わせ、各クラスの出し物、皆からあらかじめもらっていた都合の悪い時間帯などを考慮して作成した計画になっています。ですので、特に変更がないようでしたらこの計画の通りに進めていただきます」
その後も説明が行われ特に変更点もなく実行委員会は終了した。
「以上で復興祭の実行委員会は終了となります。えー、レインくんとハンナさんはこの後少し話があるので残ってください。以上解散。お疲れさまでした」
ん?俺とハンナは残れと言われたのか?俺とハンナは「なんだろう?」と思い目が合った。
「ごめんね。2人を残らせちゃって、すぐに終わるんだけど、これから大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
「私も、大丈夫です」
「ありがとう。2人とも」
委員長は、自分たち以外がこの場からいなくなったことを念入りに確認し扉のカギを内側からかけたのだった。
「ごめんね。残って貰っちゃって。2人のどちらかでいいんだけどCATCHのライブの時間の警備を変わってくれないかな?」
「そんなことですか。全然いいで・・・」
「無理を言っているのは承知の上なの!」
話の途中で委員長がかぶせるように話し始める。いつもは冷静なのにちょっと慌ててるな。
闘舞祭および復興祭実行委員長であり冒険者学校2年 ジーナ・クランシー。成績優秀・容姿端麗、魔法のセンスも凄まじく2年でありながら冒険者学校中から支持を集めるカリスマ性も持ち合わせている。冷静沈着でどんな場面でも最善策を一瞬で導き出すことから未来視をしているんじゃないかなんて噂が立つほどである。そんな、ジーナ委員長が冷静さを失っている。何か重要な要件なのだろうか。
「CATCHは大人気のアイドルだし、2人だってライブを楽しみにしていることは重々承知しているつもりなの」
「ジーナ先輩はCATCHのファンなんですか?」
ハンナが質問するとジーナ委員長は顔を赤らめる。
「はい!大大大大大ファンなの!特にセンターのナタリーちゃんが大好きなの!なんて表現したらいいのかな?・・・」
その後、ジーナ委員長のCATCHに対する言葉がマシンガンのように飛んできたのである。
「それで、皆の意見を基に計画を練っていたらCATCHのライブの時間の警備が誰もできない状況になって自分の名前をとりあえず入れていたということですね」
「俺が変わりますよ。CATCHとかよくわからないですし」
「ホントに良いの?レインくん!」
「はい・・・大丈夫です」
顔が近い近い!こんなに美人な先輩の顔が近いと俺も顔が赤くなってしまう。
「本当にありがとう!この恩は絶対に返すから!」
ということで、俺は復興祭の仕事が増えるのであった。
その後、教室を出てハンナと二人で帰っていたのだが・・・。
「ホントに良かったの?警備引き受けちゃって、CATCHのライブ何てめったに見れるものじゃないよ?」
「いいのいいの。俺は興味ないし、他にCATCHが好きな人がいるならその人にライブを見てもらった方が断然いい」
「サレンちゃんはそういうところに惚れっちゃったのかな?」
「ん?なんか言ったか」
「ううん。何でもないよ」
実行委員会が終わった後、ハンナはクラスの女子たちのもとへ、俺はお化け屋敷の最終確認のため男子たちのもとを訪れていた。お化け屋敷の準備を行っている教室へ行くと男子たちは慌ただしい様子だった。
「みんなどうしたんだ?ほとんど作業は終わっているはずだけど」
「ああ、レイン。おかえり」
アレンが今の状況を教えてくれた。
「さっきまでお化け屋敷の予行練習を行ってたんだけど、一番のメインの仕掛けが壊れちゃってね。今作り直している最中なんだ」
「なるほどな。でも、作業ができる時間は今日いっぱいだぞ」
実行委員会にはおおむね作業は終わっていると報告しているため、お化け屋敷の作業ができるのは今日いっぱいとなっている。
「今、ジークとガジルが夜間作業の申請に行ってくれているから今日の夜にみんなで作業をすれば終わるとは思うよ」
「了解した。俺も手伝うよ。俺に今できることはあるか?」
「そうだね。仕掛けで使う紐がなくなりそうなんだけど買ってきてくれないかな?もう夕方だから今から行けばまだお店は閉まらないはず」
「わかった。すぐ行ってくるよ」
俺はすぐに教室を飛び出しスタートの街へ駆けていった。
「店までは15分くらいか。ちょっとギリギリだな。裏路地通っていくか」
俺は時間短縮のため裏路地を通ろうとして路地に入ったのだが、女の子が野良犬3匹に襲われそうになっていた。このところ、魔獣襲撃の影響で森や林の動物たちが減少し生態系が狂い始めていることが確認されていた。襲われそうになっている女の子は怯えて体を縮めている。俺も急いで入るが、こんな状況で女の子を見捨てるほどクソ野郎ではない。俺は、シャドウ・アウトを使い影から威嚇するつもりで攻撃し野良犬たちは吠えながら去っていった。
「大丈夫ですか?」
「あ、あ・ありがとうございます」
よく見ると、彼女の膝から血が出ていた。怪我をしている様子だった。
「ちょっと失礼しますね」
「え?」
俺は女の子をおんぶして、その場から離れた。
「どこから来られたのですか?」
「・・・」
彼女は唐突に何も話そうとしない。何か顔を隠そうとしていた。彼女は何も話そうとしないためとりあえず、スタートの街の中心に来た。彼女はもっと顔を隠そうとする。
「あ!マイクさん」
彼女は汗だくの男性の方を見て言葉を発した。どうやら知り合いのようだ。心なしか笑顔になった気がする。
「知っている方のようですね」
「すみません。そこの男性の方」
「は、はい。僕ですか。今僕は忙しいの・・・で・・す・が・・」
「ナタリーさん!」
「よくわかりませんが、お知り合いのようなので。僕はここで失礼しますね。後はよろしくお願いいたします」
僕は女の子を男性に託し、買い出しへと急いだ。
残された男性と女の子は・・・。
「よかったです。ナタリーさん!無事見つかって。今は早くホテルへ急ぎましょう」
男性と女の子はホテルへと戻ったのだった。
ホテルでは獣人の女の子二人が出迎えてくれていた。
「「ナタリー!」」
「カレン!」
「ミラさん!」
三人は抱きしめ合いながら泣いていた。
「今回ばかりはほんとに心配したわ。いつもはすぐに見つかるのに」
「ごめんなさい!」
「まずは、怪我をしているようなので手当てをしましょう」
男性はナタリーの膝の手当てを行っている。
「今回は、なんで迷子になった時点で連絡しなかったにゃ」
「それが、連絡取ろうとしたんだけど、野良犬たちに襲われちゃって」
「なるほどにゃあ」
「でも、野良犬たちに襲われてよくその程度の怪我ですんだわね」
「うん。野良犬たちに襲われたときに男の子が助けてくれたの」
「それが、一緒にいた彼ですか!」
「はい。名前も教えてもらえなかったし。それよりも、私の顔を見ても私がCATCHのナタリーだとは気づいてなかったみたいでした」
「流石に、気づいてはいたけど触れなかったんじゃないかしら。私たち世界中に顔は知られちゃってるから私たちを知らないって人はそういないはずよ」
「そうなのかな」
「そうだったら、かなり優しい人にゃ」
「ちゃんとお礼言いたいな」
「彼が来ていた服は冒険者学校の制服を着ていましたし、ライブの会場も冒険者学校の特設ステージですのでもしかしたらまた、合えるかもしれませんよ」
「そうだといいな」
ナタリーは助けてくれた男の子にお礼を言いたい、そんな風に思うのだった。
そして、3日が過ぎ、復興祭当日がやってきた。冒険者学校にはスタートの街人たちであふれかえり復興祭の開幕が宣言された。
「これより、スタートの街、復興祭の開幕を宣言いたします!」
会場は大いに盛り上がりを見せるのであった。
よろしくお願いいたします。




