第35話 エイスの一日
私は龍族である。この世界にはたくさんの種族がいるけど私たち龍族はあまり他の種族とは関りをもたない。でも、いろいろあって今は人間のハンナとジークの監視役として他種族たちと暮らしている。
「エイス、起きて」
私は体を揺さぶられベットから起き上がる。私を起こしたのは私の監視対象のひとりハンナである。
「おはよう」
「おはよう。エイス」
私は今ハンナと同じ部屋で暮らしている。私の今の住まいは冒険者学校と呼ばれる施設の女子寮である。ここには様々な種族が暮らしている。敵対する魔族に対抗するため皆、毎日努力して勉学や魔法の特訓に明け暮れている。
「は!今何時!?」
「おはよう。まだ時間は大丈夫だよ。セリーヌ」
彼女はセリーヌ。私がここに来る前からハンナと同じ部屋に暮らしている女の子である。彼女はクラスでは委員長と呼ばれている。しっかり者の彼女だが、朝に弱いらしく毎朝慌ただしい。
「エイスちゃんもおはよう!」
「おはよう」
「さて、起きたところでエイス、セリーヌ朝ごはん食べに行こう!」
「そうね、行きましょうか」
ハンナとセリーヌがこちらを見ている。私も朝ご飯に誘われているらしい。確かにおなかが減った。私たち3人は食堂に向かい朝ご飯を食べる。朝はパンに野菜のスープ、牛乳としっかりと食べて冒険者学校に向かった。
私にとって今この状況は新鮮である。他の種族とかかわりを持たなかった龍族にとって私の監視役は今までではありえない変化である。まあ、これもおじいちゃんの助言があってのことだけど。冒険者学校は魔族の襲撃以降休校していたが今はもう平常通りに講義や魔法の特訓を行っている。私も冒険者学校の1年Sクラスの一員として登録されている。なので、監視役ではあるが講義などにはしっかりと出席しなければならないらしい。
そして、今は冒険者学校でもこの街スタートでも祭りの準備が進んでいる。復興祭という祭りが行われようとしているらしい。私もSクラスとして出し物の準備をしている。私を含むSクラスの女子全員は冒険者学校の中にある一つの教室でお化け屋敷の看板や衣装などを製作している。男子たちはお化け屋敷の設備の制作で力仕事を毎日行っている。男子たちの作った設備もこの教室に運び込まれており大きなものがごろごろとおいてある。男子たちは重たそうに教室に運び込んでいるが、私なら片手で持てるのだが、というか空間魔法で運べるのだが・・・そんなことを思ってしまった。
Sクラスの女子たちはせっせとお化け屋敷で使うのであろう衣装をつくっている。器用なものである。私の手は龍の腕だからあんな裁縫なんてできない。鋭い爪に分厚い鱗だからな。
「何してるのにゃ?」
「ただ、見ている。私にはあんな真似できない」
彼女はミシェルだったか。獣人の種族か。
「私だってそうにゃ」
そう言って、ミシェルは自身の手を見せてくる。彼女もまた獣人が故に手には鋭い爪があり裁縫などはできないということか。
「何もできないのならできることを探してみるにゃ。見る角度を変えてみればできることは見つかるものにゃ」
そう言うと彼女は切る場所が指定され線が引かれている布をたくさん持ってきた。私は少し考えた。
「できること・・・」
私は思いついた。なるほどミシェルがしようとしていることが分かった気がした。私とミシェルは頷きミシェルは布を両手で持ち顔の前で構える。私たちには鋭い爪がある。鋭いのなら布を切ることなどたやすい!私とミシェルはどんどん布を指定された箇所を切っていった。
「ありがとう。ミシェルちゃん、エイスちゃん。休憩してていいよ。2人のおかげでだいぶはかどったよ」
「いえいえ~なのにゃ~」
「今日の作業はこのくらいにしようか。片付け始めようか」
そんなことを話していたが、男子たちの持ってきた大きな設備が倒れてきたのである。倒れてくる場所にはハンナとセリーヌが座っていたのである。私はとっさに空間魔法で瞬間移動し倒れてくる設備を私の龍の爪で薙ぎ払う。
「大丈夫?ハンナ、セリーヌ」
「「うん・・・ありがとう」」
その後は、片付けを続行し今日のところは解散となった。
ハンナとセリーヌの目は怯えていた・・・。龍の力は他の種族と比べてしまえば強すぎる力だ。だからこそ龍が他種族との共生などできるはずがない。強すぎるがゆえに皆が怯えてしまう。
「おじいちゃん、私、どうしたらいいの?」
私はそんなことをつぶやきながら星空の広がる空を眺めていた。
私はハンナとセリーヌのいる部屋に戻った。どんなに嫌われようが、怯えられようが、監視役を降りるわけにはいかない。だが部屋に戻ると・・・。
「おかえり!エイスちゃん!」
「おかえり」
ハンナとセリーヌは笑顔で迎えてくれたのである。そして・・・。
「「さっきはごめんなさい!」」
私は困惑した。彼女たちは私の気持ちを察知していた?ただ、怯えるのではなく、私という存在を理解してくれようとしている。
「私は・・・何も気にしていない。謝らないでくれ」
これが私の彼女たちにできる精一杯の誠意だった。
こんなにも他の者のことを考えてくれる者がいるのかと私は思った。
その後なんだかんだあり、いつも別々のベットで寝ているが今日は3人同じベットで寝ることになった。これも彼女たちの優しさ、気遣いなのだろうか。
「私の鱗痛くない?」
「全然、むしろひんやりしてて気持ちい」
「ねえ、エイス。遠慮なんてしなくていいんだよ。もう私たちは仲間なんだから」
「そうだよ私たちは仲間だよ」
「仲間か・・・」
龍族の皆と送る日常も確かに良い。でも、こうして種族が違えど私のことを仲間と呼んでくれる者がいる。
「ハンナ、セリーヌ・・・、寝てしまったか」
「仲間か・・・悪くないな」
こうして、私の一日は終わったのであった。
「また明日が楽しみだ」そう思いながら私は就寝した。
よろしくお願いします。




