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第33話 アメリアの覚悟

 魔獣襲撃ではアルバートの一件の終息とワープホールの消滅、自警団リーブラ、冒険者学校、王宮の活躍によって魔獣たちはすべて駆除され再びスタートの街に平和が訪れたのだった。今回の魔獣襲撃で犠牲者は最小限に抑えることができた。僕らの所属する1年Sクラスの皆も全員無事だ。委員長のセリーヌ・ローズの指示のおかげだったようだ。怪我人などもいなく本当に良かった。今回の一件はすべて王宮に報告された。ジークとハンナの龍との一件、アメリアとアレンのコキュートスのとの一件、そして、俺、サレン、ギルバートとのアルバートとの一件である。


 この報告によって、ジークとハンナはひとまず冒険者学校で様子を見るという結論になった。龍の少女エイスも二人と同様冒険者学校が受け持つこととなった。ギルバートは今回の首謀者アルバートと共に王宮が監視することになり、その監視者が俺の母さんが抜擢されたらしい。まさか、こんなことになるとは。


そして、魔獣襲撃から一週間が経とうとしていた。魔獣襲撃を撃退はできたものの決して被害が大きくないわけではない。魔獣襲撃はしっかりと俺たちの心に傷を残した。スタートの街は現実世界のように重機などはない。でもその代わりに「魔法」がある。スタートの街の住人たちは「魔法」を駆使し街の復興を進めていった。街の復興も冒険者学校、自警団リーブラが中心となり進めている。


俺自身もアルバートとの戦いの傷は完全に治癒したとは言えないが、何もしないのも嫌なのでできることを行っている。街の復興の中、サレン、アメリア、アレン、ジークなど俺のクラスメートたちはとても重宝され復興に役立っているらしい。


「俺に今できることはこのくらいだからな。しっかりやらねえと」


俺は包丁を右手に持ち、左手は猫の手にして食材を切っている。やっていることはもちろん「料理」である。現実世界では仕事で帰りが遅い両親の代わりに妹の分と俺の分の夕飯や弁当を作っていたので料理は割と得意なのである。俺は淡々と料理していく。


そんな中、後ろから視線を感じた。


「誰だ!」


「私に気が付くとはなかなかやりますね・・」


そこには龍の角を持つ少女が後ろに腕を組み立っていた。


「エイスだったか・・」


俺は恐る恐る名前を口にした。この世界は現在、魔王率いる魔族、俺たち種族連合である王宮、そして、中立の立場で、ほとんど干渉しないと言われている龍王率いる龍族の三つの勢力に大きく分かれるとジークから聞いている。また、Chronicle・Lineのゲームの中では龍族という勢力、種族は存在しない。この部分はChronicle・Lineとの大きな違いとなってくる。現状、龍族は魔族、王宮どちらにも干渉がなかったためChronicle・Lineと同じような勢力図になっていた。


俺はすべての事情をジークとハンナから聞いている。


「どうしてここに?ハンナの監視役なんだろう。いいのかこんなところにきて」


「確かにそう。でも、常に監視しろとは言われていない。それに・・・あなたからは()()()()()()()()()()()()


そう言うとエイスは俺に近づいてきて俺の顔にエイスの顔が唇がもうすぐ触れそうなくらい近づいてきた。


「おいしそうってどういうことだ!とりあえず離れてくれ!」


龍族の少女と言っても、おれたちと変わらない人間の顔だし、顔だって普通に可愛いっていうか、大人な女性というような落ち着きのある美人さんなのである。俺は、つい顔を赤らめてしまう。


「何してるのーーーー!レイン!」


すると後ろからサレンの大きな声が聞こえる。サレンは、誤解をしているようでとてつもなく怒っているようですでに魔法発動状態になっている。


「まてまて、サレン。事情を聞いてくれ!」


「とりあえず離れなさい!」


サレンも魔法を発動しようとしていたが、それは脅しだったようですぐに魔法を取りやめ、俺の今の状況の説明を聞いてくれた。


「なるほどねー。エイス、あんまり男の人に近づくんじゃありません!」


「どうして、おじいちゃんとはよくじゃれ合っていた」


「それは龍同士の話でしょうが・・。人間や他の種族では、もっと・・・親しい関係になってから・・・その・・・」


サレンが急に顔を赤らめもじもじし始める。


「親しい関係になってから・・・何?」


「あーーーもう!ひとまずレインの邪魔はしないように!エイスは連れていきます!レイン、またあとでね!」


「ああ、またあとで」


そう言うと、サレンはエイスを引きずってこの場を後にしたのだった。


「あいつら、仲いいんだな」


俺はその後も料理を続けるのだった。


その日の夕食、俺が作った料理が冒険者学校1年Sクラスの皆に振る舞われた。俺の作っていたのは「カレーライス」である。結構な大人数だから手っ取り早いし、絶対においしいしね。安定の選択だと思っている。皆笑顔で食べてくれていた。ああなんか思い出すな。香恋(かれん)も俺の料理を笑顔いっぱいで食べてくれてたっけ。元気にしてっかな。


皆が食べ終わり、食器などを片付けているとサレン、アメリア、ジーク、ハンナ、アレンが手伝ってくれた。あの魔獣襲撃以降、一週間ほどだが毎日のように俺たちは一緒に過ごしている。あの襲撃がきっかけというのもあれだが、仲が良くなることはいいことだ。だが、この日、アメリアから驚きの言葉を聞くことになるのだった。


片付けが終わった後、アメリアが大事な話があるということで俺たちは食堂に残っていた。アメリアは言葉を紡ぐ。

「私は・・・これまで一人で強くなろうと頑張ってきた。冒険者学校に来たのだってもっと自身を磨くためだった。戦いにおいて、一人で何でもできるようにならないといけないってずっと思ってきた。でも、私は何もできなかった。魔獣襲撃で周りを全く見ないでひとりで突っ走って。アレンに助けてもらわなかったら私は死んでいた」


アメリアは悔しそうに口を噛みしめる。アメリアはあのとき魔族の脅威を人一倍感じとっただろう。だからこそ、このままではダメだと思っただろう。その後もアメリアは話を続ける。


「私一人では魔族を倒すことなんて無理だって気づかされた。今日はお願いがあって皆を引き留めた」


「私と・・・魔族を倒してほしい・・・。こんなお願い重々おかしいってことは私が一番わかってる。でも!私一人では魔族を倒せない!だから!・・・」


俺たちはこんな弱気なアメリアを見て驚きと覚悟を感じた。ゲームではスタートの街の消滅とサレンというライバルを失い魔族を自身の手で倒すと決意する。でも、この世界では魔獣襲撃を退け、ライバルであるサレンも生きている。しかし、アメリアにとってコキュートスとの戦いは魔族の脅威と一人では何もできない「役立たず」なんだという悔しさがアメリアという一人の主人公を奮い立たせたということになる。まさか、こんな形でストーリーが動き出すとは思わなかった。要するに、世界は魔獣襲撃の目的である「主人公に魔族と戦うための意味を生み出す」ことを達成したことになる。ということは少しづつではあるが世界がまたChronicle・Lineのストーリー通りにまた動かそうとしているのかもしれない。


最初に口を開けたのはアレンだった。


「僕は構わないよ。魔族との因縁は「誰か」が断ち切らなければ結局魔族に侵攻されて終わってしまう。僕はその「誰か」になりたいと思うよ。だからアメリア。僕は協力する」


アレンはアメリアが何を言おうと一緒に寄り添いついていこうと決めている。アレンの目がそう言っているように見えた。


「アレン・・・」


「私も協力する!私は「勇者」として子供の頃から言われてきてもううんざりなの。魔族を倒して私の役目も終わらせる」


サレンらしい回答だな。サレンもアメリア協力するということはこの部分に関してはChronicle・Lineではない独自のストーリーが展開されるはず。さて、どうなるかね。


「私もアメリアの役に立ちたい!せっかくもらった魔法で役に立ちたい!」


「ハンナがそう言うのなら僕も協力させてもらうよ」


「ハンナ!ジーク!」


ハンナはそういう女の子だ。役に立てるのなら役に立とうとする。その責任感の強さは誰よりも強いだろう。ジークはジークでハンナのいくところにはついていく。兄としての責任ってやつか。


その後、アメリアの視線は俺の方を向く。


さて、最後は俺か。まさかこんな展開になるとは俺も思わなかった。こんなストーリー、ゲームにはなかった。けど、この世界にきてChronicle・Lineのストーリー通りに進むかどうかわからない。それでも俺はサレンのため生きていくと決めた。俺の答えはもう決まっている。


「俺も協力するよ。俺のできる範囲でだけどな」


「ありがとう。レイン」


そうして、俺たちはアメリアの決意に賛同し、この場を後にする。帰り際、俺はアメリアに一つの質問を投げかけた。


「アメリア。どうして魔族を自身の手で倒そうと思う?・・・」


少しの沈黙の後、アメリアは答える。


「それが・・・()()()()だから・・・」


どうしてそんな質問を投げかけたのか俺にもわからなかった。でも、俺はアメリアの回答に少しホッとしていた。


「そうか・・・」

よろしくお願いします。

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