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第32話 運命を壊せ

 レインは今、倒れている。アルバート・クラウに一切の攻撃も当てられず倒れている。体からは大量の血が流れ体は全く動かない。俺はアルバートの分身体に会ったときに分身体からあるメッセージを受け取っていた。分身体は意志疎通の初期魔法で俺にある作戦を教えてくれた。だから俺は言った。「だったら!俺はお前のその目を信じる!」と。あの時、言葉を通して伝えなかったのはどこで本体のアルバート・クラウが聞いているかわからなかったからだろう。だが、その作戦は、俺が生きていることが大前提だ。俺は今何をしている。地面に突っ伏しているだけではないか。意識が朦朧としてはっきりしない。それでもわかる。今、()()()()()が戦っていると。俺がまだ動いてくれると信じてくれている。動けよ、腕。動けよ、足。発動しろ!魔法!


「俺は・・・ギルバートを信じている。そして・・・サレンを守り抜く!」


「こいつをぶっ飛ばすぞ!ギルバート!」


「うん!ここで決着をつけるっス!」


「レイン・スティールだと!なぜ動ける。お前はもう抜け殻同然のはず」


「あはは、面白いこと聞くな・・。アルバート・クラウ。気合で動いてるとしか言えねえよ馬鹿か」


アルバートに刺された傷は影縫いで影を巻き付けて出血を止める。


「レイン・・。無理しないで」


俺をかばうようにサレンが手を貸してくれる。サレンは自身が狙われていると知っているこの状況でも俺を俺なんかを庇ってくれる。こんな優しい女の子をこんなところで殺されてたまるか。


「何とかするよ・・サレンは俺が守る」


サレンは顔を赤らめながらも決意の表情をする。


「私も戦う。守られっぱなしは嫌。レインは私が守る!」


「これじゃ、どっちが守られてるかわからねえじゃねえか」


「それはお互い様!」


「だそうだ!ギルバート。3人でこの最悪の運命をぶっ壊すぞ!」


「ああ!望むところっス」


俺、ギルバート、サレンは戦闘態勢をとる。互いに距離をとりアルバートを囲むように配置につく。


「ごちゃごちゃうるせえな!負け犬の遠吠えにしか聞こえねえなあ!全員まとめてぶっ飛ばしてやるよ!」


まず初めにギルバートが動く。ギルバート無数の鎖をアルバートに向けて放ち拘束を試みる。だがその鎖はアルバートの持つ暗黒の剣によってすべて吸収される。サレンも風魔法を使い一気に加速する。


「サンダーボルト!」


雷魔法サンダーボルトを風魔法と共に発動し雷を落とす。その雷は目くらましとなり、アルバートの隙を狙う。


「ランドクラッシュ!」


サレンの適正魔法は・炎・水・風・雷・土の五つ。サレンは様々な適正魔法を組み合わせアルバートを追い込んでいく。


それでもなおアルバートの持つ暗黒の剣にすべての魔法が吸収される。


「暗黒はすべてを飲み込む。お前らの魔法など一切聞かねえんだよ!」


アルバートは暗黒の剣を振りかざし暗黒の刃を遠距離から無数に飛ばす。俺たち3人はその刃を避けることができず吹き飛ばされる。


ギルバートとサレンは先ほどの攻撃で倒れ動けずにいる。俺は何とか影に潜り込み避けることができた。まあ、数発は当たってしまったため腕、足、身体、様々なところから血が流れる。腹部のアルバートに刺された傷でうまいように魔法を発動できない。


「やるしかねえか・・・」


俺は目を閉じ集中する。影に少しだけ身を委ねる。


「何をしている?レイン・スティール。殺してほしいのか?存分に殺してやるよ!」


暗黒の剣を振りかざしアルバートから飛ばされる刃を俺は目を閉じながらドノバンから作ってもらった小刀で弾く。その後、目を開ける。


「レイン・・」


「ギルバート、サレン。そこで休んでいてくれ。ここで決着をつける」


俺が目を開けたとき右目が赤く染まり右の頬に紋章のようなものが浮かび上がる。


「お前・・影に身を委ねたのか・・」


アルバートは俺が今何をしたのか知っているようだった。それはそのはずだChronicle・Lineの運営だったんだから当然か。俺はChronicle・Lineでレインが最終決戦で使うはずの魔法を今ここで発動させた。


「シャドウ・ドレス」


俺はこれまで影の魔法を扱う際最低限の注意を払いながら発動してきた。その注意が、「影に飲み込まれないこと」この一点に尽きる。「シャドウ・アウト」この魔法を扱う時が一番注意を払うことが重要になる。影の魔法は姿を消せたり、影に潜って移動できたり、影を体に巻き付けて強度、威力を増すことができたりと強力な魔法だ。影は深く深くまで存在し終わりが見えない底なし沼。だからこそ、気を抜いてしまえば影に体を蝕まれる。


だが今、俺は身体を蝕まれる覚悟で影に身を委ねた。すべてを委ねてはいない。ほんの少しだ。Chronicle・Lineのレインは自身のすべてを影に委ねて最後には命を落とした。だが、俺は、これからも生きていたい。サレンと一緒にいたい。俺は運命を変えるためにここにいる。こんな奴と一緒になんか死にたくない。


俺は少し影に体を委ねる。「シャドウ・ドレス」は影に体を委ねた分だけ身体強化、魔力量限度上昇、影の魔法の強化が与えられる。代償として、この魔法を使用した時間だけ体に激痛が走る。この痛みは「シャドウ・ドレス」を使用した時間が長ければ長いほど大きくなる。だから・・・。


「一瞬で決める!アルバート!」


「こい!レイン・スティール!」


俺は「シャドウ・アウト」「影縫い」「ステルス」を三つ同時に発動する。小刀を強く握りしめ、俺は影の中に潜る。俺は影の中で影を全身に纏った。アルバートの近くに一瞬で到達し、影から現れるが、その姿はアルバートには見えていない。この時点でステルスは発動している。視認できないはずだ!


それでもなお、アルバートは俺の動きを読み暗黒の剣で俺の小刀を弾く。


「こんなところで俺は終わらねえ!」


アルバートは暗黒の剣を振りかざし暗黒の刃を振りかざす。


「この剣はすべての攻撃を吸収する。お前の小細工なんか無意味だ!」


これまでにかかった時間が20秒。あと10秒でアルバート、お前を切る!


俺はステルスで身を隠し、アルバートに再び接近する。あと8秒。小刀でアルバート切ろうとしたとき、足がもつれる。もう少しだけ耐えてくれ!俺の足!その隙を狙ってアルバートは暗黒の剣を振りかざす。


「終わりだーーーー!」


「俺はシャドウ・アウトで影の中に潜り込みアルバートは暗黒の剣を避ける。あと5秒。アルバートは暗黒の剣に頼りきっている。暗黒の剣が強力が故の末路だ。だからこそ!


「お前が剣を振り終わった後がお前を倒す唯一の隙だ!」


あと3秒!俺は影から地上に戻りアルバートの背後に現れる!


あと1秒。

「これで最後だ!アルバート!」


俺は小刀をアルバート背後から腹部をに突き刺した。


「ぐはっ!」


俺は小刀を抜きアルバートから少し距離を置く。


アルバートはその場で倒れ空を向いていた。

アルバートが倒れるのと同時に俺たちのいた何もない空間が崩壊していった。俺たちがいた場所はスタートの街の少し東寄りのところだったようだ。


「俺は・・・負けたのか・・・」


俺とギルバートはアルバートの下へ行った。


「ああ、お前は負けた」


「なあ・・・お前は俺が憎いか」


「ああ、憎いっスよ」


「だったら・・・さっさと殺してくれ」


「確かに憎い。でも、僕の本当の本体は復讐なんて臨んじゃいない。なあ、これからは正義のために僕と一緒に来ないっスか」


「何を言っている・・・俺はお前の本体を殺したんだ。情け何ていらねえ」


「情け何てかけてないっスよ。これからはその圧倒的な力を王宮側のために使わないかって言ってるんス。でも条件があるっス。本体としての権利を僕に譲れっス」


「ああ、本体としての権利はお前にやろう・・・」


アルバートは本体としての権利をアルバートに譲渡した。これでアルバートギルバートには逆らえない。


「これで俺は何もできねえ。好きにしろ」


「勝手に決めちゃったすけど、レインはこれでいいっスか。アルバートのこと」


「ああ、俺は・・・サレンを救えたならそれでいい」


「レインーーーーーー!」


俺はサレンが抱き着いてくるのが分かったので・・・それを受け止めた。


「サレン・・・生きててくれてありがとう」


俺は泣きながらサレンに抱き着いた。


「私も生きててくれてありがとう」


こうして俺とアルバートの戦いは終息した。


「悪いな。サレン。ちょっと気絶するわ」


「え?」


俺はシャドウ・ドレスの代償を受ける。今回は30秒の代償を受けたのだった。


「うああああああ!」


俺はそのまま気絶した。



アルバートの一件の終息とワープホールの消滅、自警団リーブラ、冒険者学校、王宮の活躍によって魔獣たちはすべて駆除され再びスタートの街に平和が訪れたのだった。今回の魔獣襲撃で犠牲者は最小限に抑えることができた。僕らの所属する1年Sクラスの皆も全員無事だ。委員長のセリーヌ・ローズの指示のおかげだったようだ。怪我人などもいなく本当に良かった。今回の一件はすべて王宮に報告された。ジークとハンナの龍との一件、アメリアとアレンのコキュートスのとの一件、そして、俺、サレン、ギルバートとのアルバートとの一件。


この報告によって、ジークとハンナはひとまず冒険者学校で様子を見るという結論になった。龍の少女エイスも二人と同様冒険者学校が受け持つこととなった。ギルバートは今回の首謀者アルバートと共に王宮が監視することになり、その監視者が俺の母さんが抜擢されたらしい。まさか、こんなことになるとは。


魔獣に襲撃された町も魔法の力で復興は早く進み、また、いつもの日常が戻ってくるだろう。


俺は俺でサレンがこれまで以上に抱き着いてくるのでなかなか大変である。でも、これで確実にレイン・スティールとして運命が大きく変化した。本当にもう取り返しがつかないところまできたという感じだ。これからどんな困難が来ようとやることは同じ。


「運命をぶっ壊す」それだけだ。


「サレン・・・そろそろ離れてくれない?」


「い・や・だーーーーー!」

よろしくお願いします。

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