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第31話 分身体の意地

 僕はただの分身体だ。一人の心優しい少年アルバート・クラウの。彼はずっと一人だった。家族は幼いころに病で亡くし、祖父母の家に預けられた。アルバート・クラウは優しく責任感が人一倍強い少年だった。そのため、アルバートは毎日のように祖父母に付きっきりで世話をしていた。その影響で友達と呼べる者などいなく、いつも一人で過ごしていた。祖父母もアルバートの動向を気にしてアルバートに「遊びに行ってきなさい」などと言ってアルバートには他の同年代の子供たちのように外で遊んでほしいと思っていた。だからだろうかアルバートに()()という名の魔法の力が宿ったのは・・。


 アルバートは分身の魔法が使えるようになった後は分身体を一体生成し祖父母の世話を手伝うよう命令を出した。その分身体はその命令に忠実に従い、完璧に仕事をこなした。その後、アルバートは自身の魔法について調べていった。自身の分身体は体格、喋り方、癖、しぐさ、すべてが同じだった。ただ一つ違うのは「意志」があり性格が異なること。祖父母もアルバートの魔法のことを知って驚いていた。今までに聞いたことがない魔法だったからだ。それでも祖父母はもう一人に増えた分身体も受け入れてくれてアルバートにも同年代の友達ともいえる存在(分身体)ができた。


 自身の分身体ができたことによって祖父母の世話にも余裕ができてきた。アルバートは引っ込み思案というか人見知りのようなところが少しあった。だから、意思疎通の魔法で初めは話したりしていた。意思疎通の魔法は魔法が使える者なら誰でも使うことのできる魔法。自身の考えていることを任意の人物に伝える魔法。こんな魔法でもアルバートと分身体を繋げるには十分な魔法だった。その後は自身の分身体とたわいもない話をしたり、本を読んだり、遊んだり、お昼寝をしたりと徐々に笑顔が増えていった。


アルバートは唐突に思いついたのだった。


「分身の君にも名前がなくちゃね」


「名前?」


「そう。君は僕であって僕じゃない。()()()()()()()()()()()()()()。そうだなー」


アルバートは一緒に読んでいた本を指さした。


「君の名前は、この本の主人公、()()()()()だ・・・」


僕とアルバート、祖父母の楽しい毎日はそう長くは続かなかった。()()()()()()()を召喚しなかったら今頃はこの楽しい毎日はもっと長く続いていたのだろうか・・・。




「どこ見てるんスか・・」


「お前・・・」


「簡単にはサレンさんは殺させないスよ!()()()()!」


「分身体・・どうして本体である俺に歯向かえる・・・」


「僕は・・お前の分身体なんかじゃない・・・僕は・・()()()()()()()()()の分身体だ!」


僕の腕からは血が少しづつ垂れていた。僕は必死でこの痛みを耐える。こうして、歯向かえるのはこの「痛み」あるからこそ。こいつに一発入れなきゃ何も始まらない。


「お前・・自傷してその痛みで自我を保ってやがるのか。いいぜ!俺に歯向かえるもんなら歯向かってみやがれ!くそ分身!」


アルバートは自身の腕と足に驚異的な力で強引に僕の拘束魔法を破った。その後一気に僕に接近し、強烈な蹴りを腹部に打ち込まれる。


「くはっ!」


「まだだ!」


僕はもう一度拘束魔法を発動させた。地面から無数の鎖を生成してアルバートの両腕、両足を鎖を巻きつかせ拘束する。体勢を立て直し僕はアルバートの下へ走り、アルバートの持っていた剣を奪い斬りかかった。


「こんなもんで終わるわけねえだろ・・・」


僕がアルバートに斬りかかったときアルバートは不気味な笑みを浮かべる。僕は躊躇なくアルバートの体を真っ二つに叩き斬った。だが、アルバートの体は黒い霧状になって消えていく。


「分身・・・」


「あははははは。おもしれえよ。おもしれえなあ。お前の知るアルバートの魔法しか使えねえとでも思ったかよ。俺はもうオリジナルのアルバートよりも遥かに強い!」


今までにない殺気がアルバートから読み取れる。さっきまでは本気じゃなかったかのように。


「おい、くそ分身。もっとやろうぜ!そこにぶっ倒れてるレイン・スティールよりもよっぽどお前の方がおもしれえ」


「くはっ!」


僕の口からは大量の血が吐血した。僕の分身としての体もそろそろ限界っぽいスね。やっぱり僕じゃ何も変えられないんスかね。アルバートと分身体としての僕、アルバートの祖父母との暮らしは決して豪勢な生活ではなく、質素で素朴な暮らしだったけどそれでも笑顔の絶えない生活だった。


 ある日、アルバートが言った。もう一人、分身を生成すると。祖父母の介護もなかなかに大変になってきていたからだ。僕ら二人でもなんとかなってはいたが祖父母のそろそろかもしれないと思うほど衰弱してきたからだ。だけど、その分身が・・・今、目の前にいるこいつだ!こいつは何を考えたのか、僕には何も理解できない。こいつはアルバートの祖父母とアルバートを殺しやがった。もし、僕が・・・止められていれば・・・。


「まだ、諦めないっスよ・・・。僕はお前を絶対に許さない!」


「来い!くそ分身!」


僕はアルバートに向かい走り出す。今この瞬間に全身全霊の魔力を持って目の前のくそ野郎をぶっ飛ばす!


「僕は・・・僕はくそ分身なんかじゃない!()()()()()()()()()だ!」


「うらあああああああ!」


僕は拘束魔法を発動し、鎖を召喚しアルバートを拘束しようとした。だが、鎖はアルバートをとらえきれない!いくら拘束しようとしてもアルバートの動きが速すぎてとらえきれない。それでも僕は鎖をありったけ召喚し360度あらゆる方向から鎖をアルバートに向けて放った。これだけの鎖の数ならアルバートを押し切れる!


「くそっ!だがよ。俺はこんなところじゃ終わらねえぞ!」


アルバートは持っていた剣に魔力を籠める。その剣は暗黒の魔力が満ちていた。その剣は禍々しく、暗黒の魔力が鎖を飲み込んでいった。


「まさか、この剣の力を使うことになるとはねえ。お・わ・り・だ!くそ分身!」


暗黒の剣は急激に黒い刀身が長くなり僕の心臓を貫いた・・・はずだった。僕の心臓目掛けて貫こうとした剣は黒い影によって止められた。


「影だと・・・まさか!」


アルバートはある方角へ振り向く。そこには、サレンに抱えられて立っているレインの姿があった。


「こいつをぶっ倒すぞ!ギルバート!」


「うん!ここで決着をつけるっス!」

よろしくお願いします。

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