第21話 接触
本日、とうとう闘舞祭が開催された。この時が来るまでとても短いと感じてしまった。これまで様々な体験をした。このイベントを阻止しなければ一番大事な存在が命を落とす。
「やってやる!運命をぶっ壊す!」
闘舞祭は一週間かけて開催される。最初の三日間はトーナメント戦、後半の四日間は出店などで賑わいを見せる。この闘舞祭開催の五日前、俺はジークと作戦を練った。このイベントをぶっ壊すために。俺たちはこの一週間を作戦通りに動く。この作戦が絶対にうまくいくという保証はない。でもやるしかない。
「これが俺たちの最善だ」
そして、今、俺はトーナメント戦が行われる闘技場の中央に立っている。お相手は俺がトーナメント戦の組み合わせを改ざんしているから相手は知っている。その相手が闘技場入り口から姿を現す。アメリア・レイス。この世界の勇者。相手に不足なし!全力でかかってこい!全力で負けてやる!
「手加減なんてできないからね!レイン」
「ああ!全身全霊を持ってぶっ飛ばす!」
「その言葉、そっくりそのまま返してあげる!」
闘技場にはスタートの街の住人であふれかえっている。興奮と熱気に包まれている。これだけの人に見られているのにあまり緊張していない。なぜだろうか。体は今までで一番って言っていいほど好調だ。まあいい。今は相手に集中だ。この世界の勇者の実力をどこまで持ちこたえられるか、なんて想像もできないけど、今できることをしよう。
闘技場内に盛大にアナウンスが流れる。
「準備が整いましたので次の試合に行きましょう!第五試合、アメリア・レイス対レイン・スティールの試合を開始します!」
俺とアメリアは戦闘態勢に入る。
「試合開始!」
アナウンスの合図とともに試合は開始された。
「ステルス!」
俺はひとまずステルスで自身の身を隠す。アメリアの攻撃は一発一発が強力だ。一発でも喰らってしまえばその時点で終了と思っていいだろう。さて、俺のステルスでどう出る。アメリア・・。
「相変わらず隠れるのがうまいね。でも・・ステルスの攻略法なら知ってる!」
アメリアは光の球体を作り出し上空へと投げ込む。
「何がしたいんだ?」
俺はアメリアのしたいことがよくわからなかった。アメリアはそのまま闘技場の中心に立ったままだ。何が目的なんだ。アメリアは近接戦闘が得意だ。俺にわざと隙を作って誘導しているのか?こっちはステルスで向こうには見えていないはず。
「その誘導乗ってやる!」
俺はアメリアに近づく。その時だった。
「そろそろかな。弾け飛べ!ライトニング・スピア!」
突如として上空が光ったのだ。上を見上げると無数の光の槍が降り注ぐ。
「これが狙いか!?」
焦るな。トビーとの戦闘を思い出せ!俺は冷静に光の槍を避ける。トビーでの戦闘では地面から無数の鋭いトゲを持つ植物が現れたがそれの応用といったところか。それでもだ。槍の数が尋常じゃない。アメリアを警戒して接近しなかったのが裏目に出たか。
「くそ!避けきれねえ!」
俺はステルスを解除し姿を現す。
「そこにいたのね!」
アメリアは俺の作った隙を見逃さなかった。一瞬で接近し拳を放つ。
「穿て!ヘブンズ・レイ!」
アメリアの拳に光魔力が籠められていく。その言葉と共に拳からは光の光線が放たれる。
「これで終わりね」
「そう簡単にはやられねえよ・・。俺にだって意地ってもんがあるんでね・・」
「・・なかなかやるじゃない」
俺はアメリアが拳を放つのと同時に影縫いを腹部に集中させて発動しアメリアの拳を間一髪で耐える。
「ぐはっ!」
きっちー。もう体が悲鳴を上げてやがる。
「アメリア。次で最後だ!全力でぶつけて来い!」
「言われなくても!」
俺とアメリアは魔力エネルギーを全力で籠める。俺は影縫いを全身に発動させ今出せる最大魔力を籠める。これで最後だ!華々しくぶつけてやる。
「いくぞ!」
「ええ!」
「シャドウ・バースト!」
「ヘブンズ・レイ!」
影の魔力エネルギーと光の魔力エネルギーの光線が闘技場の中心でぶつかり合う。
「「うらあああああ!」」
この勝負の勝敗はアメリアに軍配が上がったのだった。
「試合終了!勝者、アメリア・レイス!」
闘技場からは盛大な歓声が上がる。
俺はアメリアから手を差し伸べられる。俺はその手を取った。
「いい戦いだったよ。レイン。ありがとう」
「こちらこそ。どうも」
こうして俺の闘舞祭のトーナメント戦は終わった。アメリアとの戦いはとても充実したものだった。俺の全力を出した。アメリアすげえわ。全く歯が立たなかった。実質、アメリアにはほとんどダメージを負わせることはできなかった。まあ、仕方ない。ここからが本番だ。切り替えないと。
「お疲れ様。アメリア」
「ありがとう。アレン。次はアレンの番でしょ。ちゃっちゃと終わらせてきなさいよ」
「ああ。任せておいてくれ」
「アメリア。レインとの戦いは楽しかったかい?」
「ええ。ぼちぼちね。まさか、私の拳を所見で受け止められたのは初めてよ。彼の頭の回転の速さはどうかしてるわ。あの瞬間だけは、完全に私の動きが読まれてたわよ」
そう言うとアメリアは待機室に向かうのだった。
「レイン。君はすごいよ。アメリアにあそこまで言われるんだから。僕も頑張らないとな」
一方、俺はトーナメント戦を一回戦で敗北し、リディア先生と共に休憩をちょくちょく挟みながら学校内とスタートの街周辺をパトロールしていた。スタートの街は常時、自警団リーブラの方たちがメインでパトロールしているため俺とリディア先生は冒険者学校を中心に回っている。
「それじゃ、レイン。お前は東側から回ってパトロールしてくれ。私は西から回ってくるからこの場所で再び合流することにしよう」
「わかりました」
リディア先生と一旦分かれパトロールを続ける。歩いていると迷子の女の子を発見する。俺はその女の子に話しかける。
「お父さんかお母さんは?」
「わかんない・・」
女の子は今にも泣きそうな雰囲気だ。どうしたもんかな。小さい子供の対処ってけっこう難しい。何からすればいいかわからないんだよなあ。
「どうかしたっスか?」
俺は話しかけられ後ろを向く。俺は驚きを何とか隠した。この状況で驚いてしまっては作戦が水の泡になりかねない。そこにいたのは・・。
「警備担当の方っすよね。僕もそうなんすよ。アルバート・クラウって言うっす。よろしくっす」
「ああ。よろしく。レイン・スティールだ」
「ひとまずその子迷子みたいっすし、一緒に家族の方たちを探しましょう!」
「そうしますか・・」
俺とアルバートは迷子の子供の親を何とか探し出し女の子を家族の元へと送り返した。
「お兄ちゃんたち、ありがとう~!」
「本当にありがとうございました」
俺とアルバートは軽く会釈をしその場を去った。
「さっきトーナメント戦。出てたっすよね?」
「うん・・・そうだね・・」
すっげえ食い気味にくるな・・。顔近い近い。
「さっきの試合すげえカッコよかったっす!」
「俺もあんな風になりたいっす!」
「ありがとう」
「やっぱSクラスの皆さんはレベルが違うっすね」
なんなんだ?このアルバート・クラウって男は。無駄にチャラい。ゲームではこんな性格ではなかったはずだけど、なんかもっと狂気むき出しってキャラだったんだけど。そうなると、こいつはアルバート・クラウの分身体ってことか。アルバート・クラウの分身体は本体の言うことは絶対。それでも自我や意志をそれぞれの分身体が持っているため性格が各分身体でまるで違う。その分身体の中でこの個体は性格が「チャラい」そういうことだ。
だが、なかなかに残酷だ。この分身体だって生きている。本体に「死ね」言われれば本人の意思に関係なく自害させられてしまう。そういうことなのだから。
「あと、思ったことがあるんすけど・・」
まあ、この分身体、話が長いこと長いこと。マジで止まらない。言葉のマシンガンだわ。
「Sクラスの女の子って可愛い子多いっすよ・・ね・・・」
突如として、話が止まる。
「はじめましでだなあ~!レイン・スティールく~ん」
雰囲気が一気に変わる。この殺気というか狂気というか、これは確実にアルバート・クラウの本体が乗り移ったということか。
「アルバート・クラウ本人か・・」
「ああ・・そうだよ~。レインくーん。いろいろ嗅ぎまわってるみたいだけど~」
「これ以上しつこいようなら殺すぞ!。これは世界の意志だ。これ以上、物語の進行の邪魔をしないというのなら、命だけは見逃してやる。どうする。レイン・スティール」
「これはこれはありがたいことこの上ない。それでははっきり言わせてもらう!」
「俺は・・運命をぶっ壊す。これが答えだ!」
「わかったよ~。それじゃあ、レイン・スティール!首洗って待ってろ!」
そう言うと、アルバート・クラウの本体はどこかへ消えてしまった。俺はいつまでも睨み続けるのだった。
「あれ?どうしたんスか?」
よろしくお願いします。




