第18話 もう一人の転生者
「レイン!ハンナの件は感謝している。だが、僕の質問に答えてくれ!」
「レイン!君は・・・なぜ、ハンナの魔法のことを知っている!」
まあ、そうなるわな。ハンナの魔法を知っているのは普通ならハンナ本人と兄のジークだけ。にもかかわらず、俺はハンナの魔法を知っている。俺がストーリーに介入したことによる矛盾が発生している。もうここは俺が転生者だということを正直に話した方がいいのか?俺が転生者だといったところでジークが信じてくれるのか?
「レイン!君がハンナの魔法のことを口外しないと約束するなら今回のことはこれ以上は追及しない!」
「ああ!もちろんだ。口外するつもりはない」
「ならいい・・・。今回の件ではっきりしたからね」
「レイン!これだけ君に伝えておきたい。見えているものだけが真実ではないよ。表があれば裏があるように・・ね」
そう言うとジークは去っていってしまった。いったい何だったんだ。自分から質問しておきながら特に追及はしない。まるで、質問する前から答えを知っているみたいな・・・。
ジークは去り際に確信していた。
「レイン・・・君は僕と同じだ・・・」
その言葉はもちろんレインには届いていない。
その後、ハンナの様態は回復し学校に登校できるまで回復した。ひとまず安心だ。まあ、一個めんどくさいことにはなってるんだが・・・。
「レイン!あの時いつの間にか気絶してたの!なんで!」
「ああ・・・なんでだろうね?」
ハンナの魔法のことを隠すため俺はサレンの気絶させた。その時のことを聞かれている。何て誤魔化すかな。何とか適当な言い訳をしてその場は落ち着いたのだった。
今回のハンナの魔法の暴走はゲームのストーリーでは描かれていない。俺が介入したことで起こってしまったことなのか。それとも、もともとストーリーとしてはあったが主人公が関わってこないためにゲームでは省略されたのか。まあ、この2択だろう。ゲームというのは主人公が中心だから主人公が関わらないイベントなら今後の展開に影響がないのなら省略される。
それはそうと、もう闘舞祭まで残り1週間だ。未だ裏切者の尻尾は掴めていない。今のところ魔法感知の魔法の罠も無反応だ。我慢の時というやつかな。よっしゃ!今はまず・・・。
「みんなー。いいか!闘舞祭まであと一週間だ。お化け屋敷を完成させるぞ!」
「「「「おーーーー!」」」」
1年Sクラスは一週間後の闘舞祭に向けお化け屋敷の準備の最終段階まで来ていた。お化け屋敷の準備を急ピッチで行っていく。正直に言うと、俺たちが作っているお化け屋敷は俺の想像するお化け屋敷とは少し違う。まあ、魔法が存在する世界だからな。お化け屋敷の仕掛けは魔法の仕掛けだらけでとんでもないことになりそうだ。
今日分のお化け屋敷の準備は終わりSクラスの皆はそれぞれ寮へと帰宅した。俺はというと教室で実行委員の仕事が残っているので淡々とこなす。ハンナには寮でもできる仕事をお願いした。寮なら何かあってもルームメイトやSクラスの女子たちがいるから問題ないだろう。
「レイン」
俺が仕事をしていると二人の生徒が教室に入ってきた。
「アレン、それにアメリアまで、どうしたんだ?こんな時間に」
「まあね。レインが実行委員の仕事で疲れてると思ってね。アメリア」
「はい。これ」
アメリアは顔を赤くしながら飲み物を渡してきた。
「ああ、ありがとう」
「それに、もう一つ」
「なんだ。アレン」
「レイン。君は僕たちに隠れていろいろ動いてるみたいだね」
「!?」
まさか、感づかれていたとはね。流石は最強の剣士といったところか。周りのことをよく見てやがる。
「僕たちも君に協力がしたい。どうだい?話してくれないか。レイン」
話すか、話さないか。どうするか・・・。確かにアレンやアメリアの協力があれば今回のイベントを阻止できるかもしれない。だが、今回のイベントに闘舞祭開催前から関わってしまえばストーリーが変化し被害が大きくなる可能性もある。ここは・・・。
「悪いな。今回は断るよ。俺の抱えていること今、動いていることを話せるようになったら話す。その時は俺に協力してほしい」
俺は深々と頭を下す。そんな俺の態度にアレンとアメリアは少し驚いた様子だった。
「わかった!その時をずっと待っているよ」
「行こうか。アメリア」
「いいの?」
「いいんだ。男ってのはそれでいいんだよ」
「まあ、アレンがそれでいいなら」
アレンとアメリアはその場から後にした。アメリアは何かぶつぶつ言っていたが・・・。いざとなったら協力を頼もう。だけど二人に協力を頼むということは最終手段だ。これは俺の問題だ。俺が何とかする。
闘舞祭まであと三日となった。ある日の昼の授業中、俺の魔法探知に反応があった。今かよ!なぜ今なんだ。まあいい。今すぐに確かめに行かないと。
「先生!ちょっとトイレに行ってきます」
俺はそう言うと魔力探知を仕掛けた中庭に行くことにした。その場には他クラスの生徒が魔法実習を行っていた。
「あれは1年Aクラスか・・・」
俺は中庭の樹木の裏に気配を感じた。
「誰だ!」
すると、人影は素早い動きでどこかへ行ってしまった。
「待て!・・・追いつけねえか」
魔法感知の魔法は確かに反応していた。だが、召喚魔法が設置された気配はないか。それに、さっきの奴は何者だ・・・。考えているとジークの言葉が脳裏をよぎった。
「見えているものだけが真実ではない。表があれば裏がある・・・まさか!」
俺の今考えていることが正しいのであれば裏切者はやつだ。そうなるとジークの奴あいつはこのイベントのことを把握している。自分の妹が狙われることを。てことはだ。
「ジーク・テイラーあいつは俺と同じ転生者だ」
「そして・・・裏切者の手懸りは裏設定・・・」
「ようやく気付いたみたいだね。レイン」
後ろを振り向くとそこにジークが立っていた。
「ああ!」
「「このイベントを阻止するぞ!」」
2人の意志は全く同じ方向を向いていた。
よろしくお願いします。