第14話 自警団リーブラと復讐
ある日の真夜中2人の少年は走っていた。走っていたというよりかは追っていた。住民が寝静まった真夜中に少年たちは走る。
「想定通り西道を曲がった。作戦通りいくぞ。ロビン!」
「ああ・・・ローレンス」
2人の少年はアイコンタクトを取りながら一人の男を追い詰める。だが、その男は魔法を使い周囲に眩しい光が立ち込める。
「くっ!目くらましか・・・」
2人の少年が目を開けると男の姿はすでになかった。
「逃げられたか・・・」
一方、間一髪で逃げた男はというと・・・
「くそっ!ぜってえー復習してやる!首洗って待ってろ!リーブラども!」
男の復讐心は闇のごとく深く、鋭いものだった・・・。
時間は朝、冒険者学校Sクラス。今日も今日とて日常は続いている。俺たちは席につきリディア先生を待つ。これから朝のホームルームが行われる。朝のホームルームはリディア先生からの連絡やその他諸々今日の予定を把握する。教室の扉が開きリディア先生が入ってくる。リディア先生は今日もビシッとして大人びたカッコよさと余裕が伺える。
「皆、おはよう。今日の日程を知らせる」
「今日の実習だが自警団リーブラの方々の協力の下、特別実習を行う」
あったなこんなイベント、ゲームでも。自警団リーブラ。魔族の侵攻や災害が起こった場合に民間人が自分たちの安全を守るために組織する私的な警備団体。自警団は数多くあるがその中でも自警団リーブラはその中でも最も大きな組織で、日々、街の安全を守るために動いている。
「Sクラスは全員で15人いるが、3つのグループに分けそれぞれ実習を行う。この実習は2週間かけて行う。我々が今学んでいることが、実践の場でどのように活かされているのかをしっかりと見極めてもらいたい。そして、リーブラの皆さんには君たちにより実践的な魔法・武術の指導をお願いしている。君たちの成長を期待している。必要なものを準備して中庭に集合。グループはそこで発表する。解散!」
俺たちは一旦寮に戻り必要なものを取りに戻り中庭に集合した。中庭には3人の男性の姿があった。あの人たちがリーブラの人たちなのだろう。
「よし全員そろったな。では、これから特別実習を始める。まずは、グループを発表する。名前を呼ばれたら移動してくれ」
そうして、グループ分けがなされ、俺の所属するグループは俺を含め5人。
俺、レイン・スティール。
ローレンス・レスター。
ロビン・ホープ。
セリーヌ・ローズ。
アレン・ルイスの5人。
このイベントでは主人公は「自警団の人たちと協力して行方不明になった子供を探す」っていう内容だったはずだ。成功の報酬で適正魔法のレベルが一気に上がるボーナスイベントだった。だが、今回はその主人公であるアメリアがグループにいない。ということは、俺のゲームでの知識は当てにならないことになる。どうなることやら。これはもうその場その場、臨機応変に対応していくしかないな。アメリアと同じグループでないなら特に何も起きないで2週間終わることだって大いに考えられる。
俺たちの前に一人の男性が現れた。髪の毛を刈り上げていて厳つい顔つきの男性だ。
「俺の名前はケビン・レスターだ。ローレンスの親父でもある!」
ローレンスは父の自己紹介を見てため息をつく。
「父さん・・・俺のことはいいから実習のことを説明してくれ」
「ああ、すまんね。ということで特別実習のついて説明しよう。実習と言っても俺のグループはそんなに固く考えなくていい。リディア先生から聞いている通り、我々、リーブラから魔法・武術の特訓を受けてもらう。特訓の時間以外は街の見回りや我々の仕事を手伝ってもらうことを考えてる」
「まあ、このグループは自警団に既に所属しているのがローレンスとロビンで2人もいるからそんなに心配しちゃいないがな」
リディア先生がグループは適当に組んだのならわかるが、このグループには自警団リーブラに既に所属している者が2人いる。
ローレンス・レスター。
父が自警団リーブラに所属しており、ローレンスは父の背中を追って子供の頃から自警団リーブラでの特訓を重ね魔法・武術の両方をバランスよく扱うことができる。ぶっちゃけ、エリートなのである。ローレンス自身、父の影響で正義感が強く今までもリーブラの構成員として活躍し俺たちSクラスの中では戦闘経験が一番豊富だろう。
もう一人の自警団リーブラの構成員ロビン・ホープ。口数が少なく無口だがロビンの実力は本物だ。子供の頃に、ある事件に巻き込まれ顔に大きな傷を持っている。その事件の際にロビンに命を救ってもらいローレンスに憧れ自警団リーブラに入団する。それ以降ロビンはローレンスに追いつこうと必死に訓練を重ね、今ではローレンスの相棒として数々の事件を解決している。
これが、二人のプロフィールだったはず。俺も俺でよくもなあこんなにプロフィール覚えてるなあ。俺は自分の記憶力に少し驚いていた。まあ、めちゃくちゃハマってたしなー。それはいいとして、俺たちは特別実習のため自警団リーブラに向かった。自警団リーブラの本拠地は冒険者学校から東に行き、街の中心地にある。本拠地につくと、冒険者学校よりも広大な敷地と巨大な要塞のような建物が建っていた。
「ここが、我らの本拠地だ。ひとまず荷物を泊まる部屋に置いてきてくれ。早速だが、特訓するぞ!」
荷物置くと、俺たちは訓練室という場所に案内された。筋トレ器具はもちろんだが、剣術などの訓練をするための広いスペースも確保されており訓練にはうってつけの場所だろう。
「早速だが、特訓を始める。君たちの魔法や武術のことはリディア先生から聞いている」
ケビンさんは俺たちの能力に合わせて特訓メニューを考えていてくれたようだ。今日はそれに沿って特訓を行うようだ。だが、ケビンさんは俺の前に立ち頭をかく。どうしたのだろうか。
「レインくん・・・だったな」
「はい」
「君の魔法は少し特殊でね。君のような影やステルスのような隠密の魔法は専門外でね。よくわからないんだわ」
まあ、そうだよね。サレンと特訓する前までは誰も参考にできる人がいなくて一人だったからなー。
仕方ないっちゃ、仕方ないんだけど。じゃあ、どうしろと?
「まあ、安心してくれ。適任がいる。ロビン!お前はレインと特訓してくれ。お前なら大丈夫だろ!」
ロビンは軽くうなずき俺のところまで来てくれた。
「いこう・・・レイン」
「ああ・・・」
いや待て・・・これ?大丈夫か・・・。
俺は「いこう」と言われたのでロビンについていくことにした。
俺たちは外の特訓場に来ていた。
「ここなら・・・特訓できる。改めて・・・よろしく。レイン」
「ああ・・・よろしく」
ぶっちゃけ。大丈夫かと思ったのはすぐに間違いだと気づかされた。
俺たちはお互い正面に立ち戦闘態勢に入った。
「やろうか・・・」
「ああ、よろしく!」
俺たちは互いに魔法を撃ち合い特訓を開始した。正直に言って、全く勝てるイメージがしなかった。
ロビンの魔法はオバー・コピー。その能力は見たことのある魔法なら瞬時にコピーし発動する。まるで、自分自身と戦っているみたいに錯覚する。それに加えて、ロビンのローレンス直伝の体術で俺自身の上位互換と戦っているようなものだ。
結局、コテンパンにやられました。正直、かなり悔しい。
「はい・・これ」
ロビンは飲み物を持ってきてくれたようだ。
「ありがとう。ロビン」
少しの沈黙と共に休憩をとる。
数時間の間だが、ロビンと一緒にいて気づいたが・・・
「意外としゃべるよな」
「え・・・」
「悪い・・変な意味じゃないんだが。結構、喋らないイメージがあったからさ」
「いいよ。別に。僕はローレンス出会って自分を変えたいと思った。だから、口下手の僕から卒業したいんだ・・・」
「いいじゃん!俺にも協力できるなら何でも協力するよ!」
「ありがとう・・・」
「まあ、さっきから負けまくって、くそ悔しいわ――」
「少し・・考えすぎなんじゃないかな。確かに、考えることも大事だけど・・・動くのは体。もう少し、体に魔力に任せてもいいんじゃないかな・・・」
「そうなんかねーーー。自分じゃわかっているんだけどねー。あはは」
「わかっててもそれを行動に起こせるとは限らないからね・・」
俺たちは少しの笑いと共に休憩し、また、特訓を開始したが毎度のことロビンにボコボコにされるのだった。
一方、その頃アメリア、サレンは同じグループになり、自警団の仕事を体験するという名目の下行方不明の少女を探すため聞き取り調査を進めていた。
「なかなか、有力な情報がないね」
「そうね。結構聞いてきたけど、成果はないわね」
アメリアとサレンが2人で話しているとリーブラの団員が話しかける。
「いい!こういう地道な努力が大事なの。もう少し頑張りましょう!」
「「はい!」」
夕方になり俺たち特訓を終わりにし、その日はぐっすりと眠った。
次の日、朝になり俺たちは訓練室に集合していた。
「みんな、おはよう!」
「「「「「おはようございます!」」」」」
ケビンさんの大きな挨拶が朝から響き渡る。
「みんな、昨日は眠れたか!今日なんだがリーブラの仕事を少し体験してもらおうと思う。現在、少女が一人行方不明になっている。先日、俺とローレンス、ロビンの3人で「子供攫い」の連中を検挙したんだが、頭の奴を取り逃がしてしまった。これは、俺たちのミスだ。関係ないかもしれないが、その頭の関与も俺は疑っている。そこで、本日は聞き取り調査をして何かあれば知らせてほしい。俺は別で行動するが、ローレンスとロビンがいるから大丈夫だろう。では、よろしく頼む」
「「「「「はい!」」」」」
俺たちは街に向かい聞き取り調査を始める。行方不明の少女か。ゲームのイベントと似てるな。アメリアがそばにいなくてもゲームと似たような展開にはなるということか。まあ、アメリアの近くにいるのだから当然か。
「何ボーっとしてるの!行くよ!」
「行こうかレイン」
「悪いな・・・」
セリーヌとアレンに急かされ俺も皆に合流する。俺たちは聞き取り調査を始めた。一人ひとり分かれ最初に集まっていた場所に集合することになった。俺も聞き取り調査を始めたが一向に目撃情報は現れない。そんな中、俺はウジウジしているロビンを発見した。あー。ロビン一人じゃ聞き取り調査なんて今は無理だよねー。
「ロビン!」
「レイン・・・」
「無理すんなって!今日は俺と一緒に回ろうぜ」
「ありがとう」
俺とは結構話せるようになったんだけどなー。まあ、そんな一瞬で治れば苦労はしないか。その後も聞き取り調査したが有力な情報は現れなかった。時間になり俺とロビンは最初集まっていた場所に集合する。他の皆も特に情報は得られなかったようだ。俺たちが集まっていると辺りが騒がしくなる。
「強盗だ!捕まえてくれ!」
その声が周囲に響き渡る。俺がその声の方向に振り返るとこちらに走ってくる男性が一人。それと、ローレンスとロビンはその声と同時に走り出していた。2人は阿吽の呼吸で飛び出し見事な連携で男を押さえつける。その後、リーブラの関係者も合流し強盗は捕まった。
「ロビン!」
「ああ!ローレンス!」
2人はハイタッチして喜びを分かち合っていた。見事な連携だった。全く無駄のない動き。それに、俺は、あんな生き生きしたロビンを始めて見た。
「いい顔してんじゃん・・・」
その夜、俺は昼間の強盗を捕まえたロビンとローレンスに触発されたのかいてもたってもいられなく一人、訓練室で魔法を練習をしていた。そこに、アレンも姿を現した。
「どうした?こんなところで。アレン」
「それはこっちのセリフだよ。レイン。レインも昼の強盗の件でどうしてもいられなくなったって顔してるよ」
「ばれてる・・・」
「あはは。僕もそうだからね」
それから俺たちは二人で特訓を続けるのだった。特訓を始めて結構経っただろうか・・。
「あ!二人ともこんなところにいた。無理はしちゃだめだからね!これあげるから休憩にしよ!」
セリーヌには俺たちの行動を読まれていたのか、飲み物を渡された。
「「ありがとう」」
「沁みるーーー」
「なんか、その反応どこかのおじさんみたいだよ」
「確かに」
俺たち3人はそんなたわいもない話で休憩していた。その様子をロビンが見ていたことは誰も分からなかった。
別のある場所では密会が行われていた。
「リーブラの野郎どもに感づかれたらしいな。ダッセーな」
「ぜってえー復習してやる!」
一人の男は怒りでテーブルを殴る。
「まあまあ、落ち着けって。ほらよ、こいつが商品だ。受け取れ」
そこには、意識を失った少女がいた。
「こいつは魔力量が尋常じゃねえ。こいつだけでも売り払って金にしてやる。用は済んだ。帰るぜ」
「まあ待て。ついでにこれ持ってけよ」
男は液体の入った瓶を受け取った。
「なんだこれ?」
「魔力増強剤だよ。これを飲めば一時的ではあるが魔力が倍になる」
「おお!気が利くじゃねえか。有難くもらってくぜ」
男は少女を連れて出ていった。その場に残った男はその場に倒れそこから黒い煙が現れ冒険者学校に現れた魔族が姿を現す。
「人間はおろかだ。だからこそ面白い。楽しみにしてますよ・・・。人間・・・」
場所は戻り自警団リーブラの本拠地ではひたすら特訓が行われていた。俺とロビンは相変わらず2人で特訓を重ねていた。
「いくぞ!」
「ああ・・・」
俺たちの魔法がぶつかり合いその轟音が響き渡る。この数日ロビンと特訓していて思ったことがある。根本的な話だ。魔力は生まれたときから体の中に存在し、血液のように体中を巡っている。魔力だって身体能力の一つだ。今まで、魔法を発動するときのみ体に力を籠め魔法を発動していた。その為、体が一瞬だが硬直しその隙をロビンに突かれ敗北していることが多かった。
それならば、魔力を常時巡らせ体をいつでも瞬時に発動できれば魔法発動のタイムロスも減るのではないかと。魔力を巡らせるといっても日常生活を送っているときも魔力は体を巡っているから、その巡りよりもより早く体を循環させる。
これは勝手な想像だが、こんな初歩的なことはこの世界の皆は何の疑問もなくおこなっていることだろう。この世界の住人は魔法が存在していることが「当たり前」で過ごしている。俺はこの世界に転生してきた身、だからこそ、小さい気づきであろうと自分自身の成長に繋ぐことができる。
「大分、動きに余裕が出てきたね・・・」
「そうか!そう言ってもらえてうれしいよ」
なんだかんだ、特訓も進んでいき特別実習も残り3日となっていた。今日は見回りということでリーブラの仕事体験ということになっている。俺は一人、ステルスを発動し巡回を行っていた。どうして一人かというとケビンさん曰く「やっぱ、隠密魔法だったら巡回だろ!あはは」ということらしい。俺自身も偵察や巡回はあまりやったことがなかったため練習ということになり今こうして巡回をしている。念のため連絡手段を確保するため魔力を籠めると通信することのできる通信機を持っている。こうまじまじと街の様子を見ることは俺にとって新鮮な感じがあった。街の様子を見れば見るほど平和な街という印象を受ける。皆が笑い、活気のある街だ。でもまあ、活気がある街でも「裏」というものは必ずある。
俺は住宅の屋根の上に上がり辺りを見渡す。すると、一人の少女が男に追われている。少女の服装はボロボロで至る所がほつれている。
「何とかしないとな!」
俺はステルスをいったん解除し少女を抱え、逃走する。
俺は走りながら少女に話しかける。
「俺は自警団リーブラの者だ。安心してくれ」
俺は安心してもらうため自警団リーブラの名を拝借した。少女もやはりその名前を知っていたのか少しホッとした様子でため息をついた。男の追手がいないことを確認し俺は一旦足を止め通信機で連絡を取る。
「こちらレイン。男に追われている少女を保護した」
「了解した。こちらローレンス。少女の名前はわかるか」
俺は少女の名前を確認する。
「君、名前を教えてくれるかな」
「サリー・ピアット・・・」
「ありがとう。サリーちゃん」
俺は少女の頭をなでる。
「こちらレイン。少女の名前はサリー・ピアットだ」
「こちらローレンス。了解した。その少女の名前だと俺たちが探していた行方不明の少女の名前と一致する。一度合流しよう。リーブラの本拠地に集合してくれ」
「了解!」
「もう安心してね。サリーちゃん、ちょっと急ぐからお兄さんの服をしっかり掴んでてね」
「うん!」
俺はサリーちゃんを抱え、足首に集中的に影縫いを発動させ一気にリーブラの本拠地まで駆けていった。
「すみません。少女を取り逃がしました」
「まあいい・・・。金にするつもりで捕獲したが、どうせリーブラの野郎どもだろうよ」
ひとりの大柄な男は言い放つ。
「お前らいいか!これは復讐だ!あの憎きリーブラどもを地獄へと叩き落す!」
その言葉を聞いた者たちは歓喜し騒ぎだした。
「さあ!ショーの始まりだ!」
場所はリーブラ本拠地。
サリーちゃんを保護した俺は保護した経緯を皆に説明した。その後、サリーちゃんにどうして男に追われていたのかを聞いた。嫌な記憶を思い出させるようで気が重いが犯人確保のためだからと言い聞かせサリーちゃんに訪ねた。サリーちゃんは最初無言のままだったが、口を開いて話してくれた。
「外で遊んでいたらね。変なおじさんに口をふさがれてどっか暗い場所に連れていかれたの・・・。そこにはたくさんの子供がいて・・・。毎日少しだったけどご飯が出た。けど毎日毎日閉じ込められていた部屋からどんどんみんな連れていかれて部屋には私一人になった。だから・・・隙を見て逃げようとしたけど・・・捕まって。それからはおとなしくしてた。でも、でもその中に一人だけ優しそうなおじさんがいたの。その人が私を逃がしてくれた。逃げてたら怖い男の人に捕まりそうになったけどそこにいるお兄さんが助けてくれた・・・」
「ありがとう。教えてくれて。ゆっくり休んでね」
セリーヌさんがサリーちゃんを部屋まで運んでくれた。さすがに、女の子には女の子の出番ですよ。
「これで決まりだな。この事件関わっていたのはやはり「子供攫い」の連中で間違いない」
「どうする?父さん」
ケビンさんは少し考えこんでいた。が・・・ケビンさんが口を開く。
「よし作戦を・・・」
突如として、大きな爆発音が響き渡る。
「どうした!」
「「子供攫い」の連中らしき集団が街を爆破しながら堂々と歩きまわっています!」
「なんだと!?あの野郎どもとうとう頭のねじがぶっ飛んだみてえだな!」
ケビンさんは通信機でリーブラ全体に指示を出す。
「現在、「子供攫い」の連中が街を正々堂々とぶっ壊しに来やがった。リーブラの全戦力を持って奴らを全員ひっとらえる。俺たちの正義のために。行くぞ!」
「悪いが君たちにも手伝ってもらう。いいね」
「「「「はい!」」」」
「君たちは住民の避難の誘導をお願いする。場合によっては戦闘を許可する。一番守ってほしいことはただ一つ。絶対生きて帰って来い!」
俺たちは爆破を繰り返されている場所へ急行する。セリーヌさんには引き続きサリーちゃんの世話をお願いしている。現場に急行すると、60人ほどの黒ずくめの連中が爆破を繰り返している。俺たちはまずは住人の安全確保のため避難の誘導を行っていた。
「住民の保護は完了した。後はこいつらだけだ!」
こいつらだけと言われてもな。数が多すぎる。それも全員戦闘に慣れてやがる。このままだとまずいな。リーブラの団員もだいぶ疲弊している。この現場にいる黒ずくめの連中だけで約60人。爆破はこの場所以外の場所でも繰り返されている。他の場所でもサレン、アメリアたちも現場に急行している。何が目的なんだ。ただ、暴れたいだけなのか。この数で街を襲う意味がない。俺はふと最悪のシナリオが頭をよぎる。このままだとセリーヌとサリーちゃんが危ない!
「ローレンス!リーブラの本拠地の警備はどうなってる!」
「この数の襲撃だ。さすがに本拠地の警備は薄くなっているはずだが・・・まさか!」
「ああ、その「まさか」かもしれない」
「こいつらの狙いは俺たち「リーブラ」だ!」
「だがこれだけの数が相手じゃ本拠地に戻れない。通信機で皆に知らせなければ!」
ローレンスが通信機で皆にこの事態を伝えようとするが通信機が反応しない。敵の誰かが通信妨害の魔法をかけているようだ。
「レインなら・・・戻れる・・・。レインのステルスなら誰にも気づかれずにリーブラまでたどり着ける」
「本拠地まで戻れれば・・・そこにある通信機でみんなにこの事態を伝えられる・・・」
「頼むよ・・・レイン・・・」
「わかった・・・」
俺はロビンのその真剣な目を信じて走った。
「お前がそんなことを言うなんて珍しいな。ロビン」
「レインは強い。だから信じられるよ・・・」
「お前が認めたのなら何も言わねえよ」
「さてと・・今はここを切り抜けるぞ!」
俺は走った。目的のためにひたすらに。ロビンは俺を信じてくれた。そしてみんな今、命を懸けて戦っている。今はいち早く目的を達成し皆に合流する!
俺がリーブラの本拠地にたどりついたとき・・・
「マジかよ・・・」
リーブラの本拠地は崩壊寸前だった。この状況を考えると通信機が使えなくなっている可能性が高い。気づくのが遅すぎたか・・・。俺はとにかく通信室へ向かった。
私は今逃げている。大柄の男が突如リーブラの本拠地を破壊し始めた。私はサリーちゃんを連れて逃げている。
このことを知らせるため私は通信室を目指しつつ逃げている。このことを知らせないと。あたりを確認し通信室までやってきた。
「サリーちゃん、ちょっとここで待っててね」
私が通信室で連絡をしようとした瞬間・・・通信室の扉が蹴り飛ばされた。
「ここで何してやがる!」
「・・・」
私はサリーちゃんを抱きかかえその場から逃げることだけを考えた。
「そのガキは俺のところから逃げたガキじゃねえか」
「そこの女には死んでもらうぜ!」
私は死を覚悟した。この状況で助けなんて望めない。ごめんね・・・みんな・・・。せめて・・・せめてサリーちゃんだけでも!
「くっ!」
生きてる・・・?私の目の前に見知った少年の後ろ姿が映っていた。これは幻覚だろうか。いや・・・違う・・・。
「レイン!」
「ああ!あとは任せろ!借りはきっちり返す!それが俺だ!」
「バカ・・・遅いよ・・・」
「悪いがここじゃ狭い。ぶっ飛んでもらう」
「あん?」
「影縫い!」
俺は足首に影縫いを発動し大柄な男を思いっきり蹴り飛ばした。男は壁をぶち破り吹っ飛んでいった。
その一瞬の隙をつき通信機で今状況をリーブラ全体に伝えた。
「セリーヌとサリーちゃんはここで休んでて。後は俺が何とかする!」
俺は吹っ飛ばした男のそばまで行く。男は吹っ飛ばされながらもすぐに立ち上がり戦闘態勢に入った。
「なかなかいい一発だったぞ」
「そりゃどうも。お前の狙いはリーブラだろ・・・」
「そこまでお気づきかい。だったらもうすべてをぶっ壊してやる!」
男は小さな瓶を開けその中身の液体を飲み干す。男はその直後唸りだした。男から放たれる魔力はもはや人間のそれではない。
「マジかよ・・・」
男の姿はすでにそこにはなくそこにいたのは「魔族」だった。少し人間らしい部分はあるが9割は魔族。また、アイツ(冒険者学校に現れた魔族)の関与を疑った方がよさそうだ。男はすでに自我はなくただ叫ぶだけの魔物となっていた。
俺の今の実力では到底かなわないだろうな。ぶっちゃけ死ぬかもな。笑えてくるわ。
「でもまあ・・・足止めくらいはしてやるよ!」
「影縫い!」
俺は体の魔力の循環を早める。車のエンジンのごとく爆発させろ。俺は今まで足にしか発動しなかった影縫いを全身に発動。やばいな!意外ときつい。長くはもたねえな。俺は短剣を持ち構える。
俺は短剣で男の前まで接近する。だが、俺の短剣は弾かれ全く効いていない。そのまま俺は殴られ吹っ飛ばされる。
「くはっ!」
戦え。体はボロボロ。魔力も残り少ない。短剣も今の攻撃で折れちまった。だがよ。
「こんなところで終わってたまるか。俺はまだ死ぬわけにはいかないんでね。この世界に「抗う」とレイン・スティールの運命に「抗う」と決めたのなら全身全霊で戦う」
俺は素手で目の前の敵に立ち向かう。1秒も無駄にするな。一瞬を無駄にするな。「勝利」という2文字に食らいつけ!まだ、体が動くのなら限界を超えろ!
「いくぞ!うらああああああああ・・あ・あ・・・」
意識が・・・くそ野郎・・・。
意識が飛びそうな中、俺は唐突に誰かに抱きしめられた。体中から力が抜けるが目を何とか開く。
「サレン・・・」
「よく頑張ったね」
「あとは、私たちに任せろ!レイン!」
「アメリア・・・」
そこには俺を囲むように皆の姿があった。
サレン、アメリア、アレン、セリーヌ、ローレンス、ロビン、それにリーブラの皆さん。
「よく踏ん張ったな!レイン!任せろ!」
「あとは僕たちの仕事だ・・・」
敵は皆が集合したことに腹を立てたのか暴れ狂う。
だが、これだけのメンツに勝てる見込みは「ゼロ」だ。
「最後は私が!穿て!ヘヴンズ・レイ!」
アメリアは拳を力を籠め始めた。その拳からは光魔力が籠められていく。その言葉と共に拳からは光の光線が放たれ敵の頭部を吹っ飛ばし敵は消滅していった。
事件は終息し敵はすべて捕らえられた。俺はリーブラの医務室で目を覚ました。今回の事件で死亡者はなし。セリーヌとサリーちゃんは怪我はしたものの命に別状はない。今回の事件も魔族の関与が確認された。
「まあ、一件落着だな!」
「よくそんな大けがしてそんなこと言えるな」
アメリアに的確なツッコミをされたが、まあいいだろ。
「あのーサレン・・・そろそろ抱き着くのやめてくれない?」
「やだー」
「レイン、助けてくれてありがとう」
セリーヌはもじもじしながら顔を赤くしていた。
「ああ!借りはきっちり返したからな!」
これからもたくさんの試練が待っていることだろう。だが、この世界に転生してきて、こんなに退屈しない世界もないだろう。俺は負けない。この世界にも、運命にも。それに、サレン、アレン、アメリア、セリーヌ、ミコト、ガジル、ローレンス、ロビンたくさんの仲間ができた。こんな最高の仲間と一緒にいられるんだ。これからも頑張らないとな。
その頃ケビンさんはというと・・・
「また、でかくやられたなケビン」
「ええ、イドリスさん」
「俺の息子が世話になったらしいな」
「レイン君には助かりました。会っていかれますか」
「いや、レインも元気そうで何よりだ。男ってもんはケガしねえと成長しねえしな!そんじゃ、戻るわ」
そう言ってイドリスは帰っていった。自分の父がすぐそこまで来ていたことなど知る由もなかった。
よろしくお願いします。