第13話 委員長セリーヌ・ローズ
俺は今驚愕している。
まさか、こんなことになろうとは思っても見なかった。
俺はサレンを甘く見ていた・・・。
数日前まで遡る。始めの頃はいろいろあったが、平常通り冒険者学校の日常が戻り始めていた。Sクラスは皆、名前と顔が一致してきてどんどんクラスのコミュニティが形成されていった。それによって、入学当初にあった緊張感はなくなりみんなの素の顔が分るようになってきた。クラスをまとめてくれる者や綺麗好きな者、いつでも寝ている者、読書をする者、勉強に勤しむ者など様々である。
ある日のホームルームでリディア先生から連絡があった。その内容は・・・。
「そろそろ、中間テストの時期が迫ってる。テストの赤点は60点未満なので赤点は取らないように!いいな!」
そう、中間テストが迫ってきているのである。中間テストは座学のみ行われる。ここで赤点をとってしまうと冒険者学校が休みの日まで学校に行って補習を受けなければならないのだ。休みの日まで勉強なんて俺はごめんだ。でも、俺だってレインに転生する前は学生だったわけで、冒険者学校の座学も教科書と授業をきちんと行っていれば赤点をとることなんてありえないだろう。まして、俺たちはまだ1年生なわけで、授業の内容だって応用的なことはやらない。基礎なのだからそこまで難しくはない。と思っていたのだが・・・。俺の前に顔が死んだ見知った顔が現れた。
「レイン・・・」
「お、おう・・・、どうした?サレンそんな顔して」
どうしたんだ?俺は少し驚いていた。いつもの元気はどうした。いつも俺のところまで走って抱き着いてくるくらい元気なのに。そして、サレンは、唐突に俺の目の前で土下座を披露した。
「レイン!いや、レイン様!どうか、どうか、勉強を教えてはくれませんか!」
唐突なサレンの土下座の披露にクラスがざわつく。
「わかった!わかったから土下座はやめろ!サレン」
「まずは、事情を聞かせてもらわないと、どうしたの?突然」
サレンに事情を聞くと、数枚のプリントを顔を赤くしながら渡してきた。俺の近くにいたアメリアとアレンも俺と一緒にそのプリントに目を通すと・・・。
「・・・」
「・・・あー」
「これは・・・」
そのプリントはこれまでの座学の時の確認テストの結果や小テストの結果だった。そのすべてのテストで一桁の点数という驚異的な点数を叩き出していた。アメリアとアレンも俺と同じ反応だった。
少し振り返ってみよう。サレンは幼少のころから俺のそばにはいた。俺が魔法の勉強のため本を読んだりしていても一緒だった。サレンは確かに魔力の保有量、操作技術その他もろもろ天賦の才能を持っている。まあ、その影響か。今まで、その天賦の才能で勝手にどうにかなっていたんだろうな~。その魔法がどんな効果でどんな場面で有効だとか、座学で教えてもらっている魔法の基礎なんかは感覚でできてしまう。だからこそ、テストなどで説明ができない。すべては感覚に頼り切っているから。
「3人ともそんな目で見ないでよー」
サレンは涙目になっていた。
「よし!何とかしよう。今日から中間テストまで一緒に勉強しよう!それでいい?サレン」
「ありがとう~!」
サレンは泣きながら俺に抱き着いてくる。抱き着くのはやめてくれ・・・。
それから数日が過ぎ勉強を始めたのだが・・・。
俺は今驚愕している。
まさか、こんなことになろうとは思っても見なかった。
俺はサレンを甘く見ていた・・・。
俺は思った。言ってはいけないと思うので心の中で叫ぶことにした。「手に負えねー!」
やばいな。どうしよう。勉強を教えると言ったのに手に負えないなんて言えない。サレンの奴、子供の頃に通ってた魔法教室で習うレベルのところからやらないと赤点回避なんてできねえ。まずいな。
アメリアとアレンは2人で勉強してるから話しかけづらいし、ガジルは・・・勉強できるとは思えん。ミコトは・・・、ミコトに話しかけようと思ったがもう教室にいない。廊下の方で俺に変顔しながら帰っていった。ミコトの奴、俺の心読んで関わりたくないから帰りやがった。よし!ここはトビーにお願いしよう。トビーは賢者と呼ばれるほ頭がいい。そう思い、トビーを尋ねたのだが・・・。
「やだね!この前負けたから、絶対ヤダ!」
いつまで根に持ってんだー!トビーのやつ。
「どうすっかなー・・・」
廊下で悩んでいると1人の女子から話しかけられた。
「どうしたの?そんなところで?」
「委員長・・・」
話しかけてきたのはセリーヌ・ローズ、クラスでのあだ名は「委員長」。
セリーヌ・ローズ。責任感が強く面倒見がよい。Sクラスの委員長を務めている。物事をはっきり言う姉御肌な女の子。その裏表の無さからクラスでの信頼も厚い。俺は、こんな適任をどうして忘れていたんだ!
「委員長!お願いがあるんだけど!」
俺は諸々の事情をセリーヌに伝えた。
「わかった!力になるよ!」
「でも、これは貸しだからね!今度返してよね!」
「ありがとう。委員長、もちろん!」
そうして、俺、サレン、セリーヌの3人の勉強会が始まった。
そして、月日は立ち、中間テスト当日がやってきた。あれだけやったんだ。何とかなるだろう。サレンの勉強を手伝ったおかげかいつも以上に勉強したため俺は今回の中間テスト、非常に自信があった。わからないところもセリーヌが教えてくれたりした。面倒見の鬼ですか!セリーヌありがとう。
それまた、数日が経ちテスト返却の日がやってきた。俺はその自信が裏図けるように全教科80点以上という驚異的な点数を叩き出した。
「マジか!」
「すごいね。レイン」
「何言ってんだ!アレンは全教科90点以上とか化け物か!」
「そんなこと言ったらあたしも化け物じゃない!訂正して」
ちゃっかりアメリアもアレン同様全教科90点以上を叩き出していた。こいつらマジバケモン。この後俺はさらに化け物どもに出会うのだった。セリーヌ、トビー全教科100点・・・。こいつらなんなの?そんなことは今はどうでもいい。
俺とセリーヌはアイコンタクトをしてサレンの元へ行き点数を聞いた。サレンは待っていたかのようにテストの回答を見せてきた。そこにはすべての教科が60点から70点の点数が書かれていた。
「ありがとう~レイン、セリーヌ~」
サレンは泣きながら俺とセリーヌに抱き着いてきた。
「よかったね!サレン」
「よかったな!」
そうして俺たちの激闘の中間テストが終わった。
その頃ガジルは安定の赤点をとり補習地獄を味わっていた。
「勘弁してくれーーー!」
よろしくお願いします。