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第12話 二人の勇者

 魔族との対峙から数日が経ち、担任の先生がガイ先生からリディア先生へと引き継がれた。この担任の引継ぎは俺がSクラスに所属することになったことのズレを世界が修正したため。この世界は少しのズレも許さないらしい。もともとゲームではレインはSクラスに所属していない。だが、この世界にレインとして転生した俺はSクラスに所属し日常を送っている。この些細な変化ですらガイ・ロッツという一人の男を犠牲に世界はズレを修正し、元のストーリーであるアメリア・レイスを主人公として成り立たせChronicle・Lineというゲームのストーリー通りに進行されるように辻褄を合わせる。


 この世界にとって俺は「一番の害悪」だ。ストーリーに抗うように今まで魔力を高め特訓してきた。そんな俺をこの世界が許すわけがない。ストーリーに背くようなら世界は俺を()()()()()()()()


 いろいろと考えながら日常を送っているが、日常というものは勝手に進んでいく。ゲームというものは重要なイベントなどの前後は描かれるがそれ以外の時だって登場人物たちは生活している。今は、武術・魔法の演習の時間だ。まだ入学したてでそれぞれの実力が測れていない。リディア先生も俺たちの武術・魔法の部分は把握はしているであろうがどんな性格で、どんな癖や戦い方を習得しているかなど細かなところまでは分かっていない。俺たちSクラスの生徒は例のダンジョン攻略で同じグループの連中の能力なんかはなんとなくは知っている。俺もガジルやミコト、アメリア、アレンの能力は知っているが、クラスにはまだまだ話したことのない者は多くいる。まあ、Chronicle・Lineの重要人物ばかりだから俺だけは全員の能力は把握してはいるけど・・・。


 リディア先生は今日の演習の内容を説明してくれている。


「今日の演習の内容だが1対1で試合形式のように戦ってもらいたい。私自身も君たちのことをもっと知っていきたいからな。ということで、組み合わせはこちらで勝手に振り分け試験の結果を参考に決めさせてもらった。まあ、気楽に戦ってほしい。試合は1対1で時間の制限はない。こちらで「そこまで!」と合図を出すまでだ。いいな!」


俺たちSクラスは「はい!」と全員が答える。


「よし!初めの組み合わせだが・・・レイン・スティール、()()()()()()()()()


「「はい!」」


しょっぱな俺かよ!相手はトビー・カルバートか。戦いづらい相手と当たったな。俺とトビーはある程度の距離をとり、向かい合って戦闘態勢に入る。


「これより、試合を始める。試合開始!」


リディア先生の開始の合図とともにトビーは杖を振るい俺の足元に植物のツルを出現させ俺の足にそのツルを絡める。


「厄介だな・・・。接近できねえ」


トビー・カルバート。種族はハーフエルフ。父が人間、母がエルフの家系に生まれた。幼少のころから魔力に興味を持ち知識を高め、母から譲り受けた高い魔力操作の技術を持ち若くして賢者と呼ばれている。だったかな。ゲームでのプロフィールは。こっちは接近しないと何もできないってのにこれじゃ、影に逃げられねえな。


 俺は姿勢を低くし、右手に持っている短剣で足に絡まっているツルを断ち切る。断ち切った同時に一気に接近する。


「ツルを断ち切ってしまえばこっちのもんだ。ステルス・・・」


俺はステルスの魔法を使い一時的に姿を消す。


「消えた?」


動揺してる、動揺してる。まあ、ステルスの制限時間は今のところ限界は5分。もっと魔力が上がれば発動時間も伸びるだろうけど。それにステルスを発動しているときは俺の攻撃は相手に当たらず通り抜けてしまって攻撃ができない。攻撃するのであれば一回ステルスを解除する必要がある。


「まあいい!こっちも本気で行くよ!レイン・スティール!」


「見えないなら、フィールド全体に攻撃するまで!プラント・ジャベリン!」


地面から無数の鋭いとげを持つ植物が突き出すように出現した。


「マジか!避けきれねえ!」


「うああああ!」


俺はトビーの攻撃を避けきれずステルスを解除され姿を現す。くそ!痛てーー!俺だって今まで特訓してきたんだ。こんなところでは終われねえ!根性見せろ!俺!俺は上空に飛び体勢を立て直す。今は晴れ。俺の影はある。


「影縫い!」


俺は自身の影を伸ばし自分の身体に巻き付ける。俺は影を足に巻き付ける。影が巻き付いた部分は身体強化と防御が上昇する。足のみ影縫いを集中的に発動させる。俺はトビーの出現させた植物を足場代わりに使いトビーに急接近し短剣をむける。


「そこまで!」


その時、リディア先生の言葉と同時に俺は攻撃を止める。


「勝者、レイン・スティール」


俺はトビーと握手をし試合を終える。


「次は負けないからな!ちょっと油断しただけだからな!」


「ああ!わかったよ」


トビーは悔しそうな表情になっていた。トビーはエルフの血をひいている。エルフは人間よりもはるかに寿命が長い。その為か成長も人間より遅いのだ。何百歳と生きているエルフは見た目はまだまだ20代くらいに見える。トビーは俺らと同じ年なのだから見た目は幼い子供だ。やべー、子供がいじけてるようにしか見えねえ。


その後も試合は行われた。


「次は、アレン・ルイス、ガジル・ヘイド前へ」


「「はい!」」


2人の真剣な表情と共に試合は始まった。剣士対騎士の戦い。矛盾とはよく言ったものだ。アレンは言うならば同年代で最強の剣士という矛、一方でガジルは騎士としての最強の盾。ぶっちゃけどちらにっ軍配が上がってもおかしくはない。今回の戦いにおいてはアレンが一歩上手だったようだ。アレンは身軽なことを活かしガジルの後ろをとり剣付突き付けた。


「そこまでだ!勝者、アレン・ルイス」


「いい戦いだったよ。ありがとう」


「おう!やはり冒険者学校に入学して正解だったな!強い奴がわんさかいるわ!」


「そう言ってもらえるならうれしい限りだよ」


「時間もないからどんどん試合は進めていくぞ」


リディア先生の審判の下、試合は進んでいった。


「ミコト・ムラクモ、()()()()()()()()()


2人は見つめ合い試合が開始された。この二人の戦いではミコトがちょっと不利になるだろう。ミシェル・アルノー。猫族の獣人、キュートな見た目とは裏腹に獣人特有の驚異的な運動神経と瞬発力を持っている。鬼人であるミコトは相手の心を自身の角で察知し相手の行動の上をとって攻撃を与えるのが通常の攻撃スタイル。だけど、相手はミシェルだ。ミシェルは獣人特有の「野生の勘」で戦う。ミコトにとって「勘」なんて抽象的なもの読めるわけがない。それに、ミシェルの武闘家としてのセンスにミコトは振り回される。


「そこまで!」


「参ったのう。全く読めんかったわ」


「ありがとうにゃ。楽しっかったにゃ!」


まあ、猫族の語尾が「にゃ」なのはベタだよなー。


その後も試合は続いていく。


()()()()()()()()()()()()()()()()


「「はい!」」


()()()()()()()()・・・」


「リディア先生!ハンナは今日ちょっと具合が良くないみたいです・・・」


「了解した。それじゃあハンナのところには()()()()()()()()、君が入ってくれ」


「わかりました」


「ありがとう。お兄ちゃん」


「ジーク・テイラーの相手は()()()()()()()()()


「了解ですわ」


()()()()()()()()()()()()()()()()()


「「はい!」」


次々と名前が呼ばれ試合が行われていった。そして、最後の組み合わせとなった。


「よし!次で最後だ。サレン・レイス、アメリア・レイス」


「「はい!」」


互いに見つめ合い先生の合図とともに試合は行われた。


「試合開始!」


その合図とともに二人の魔法が発動される。その瞬間、周囲は二人の魔法エネルギーがぶつかり合い暴風が吹き荒れる。まるで嵐の中にいるみたいだった。今の二人の実力は拮抗しているように今は見える。勇者候補として今まで生きてきてたサレン、同じく勇者として生きてきたアメリア。この二人が今ぶつかり合っている。今、彼女たち二人はこの試合の中「()()()()()


確かに、サレンには俺が、アメリアにはアレンがずっとそばにはいた。でも、俺ら二人では彼女たちの本気を受け止められなかった。「強すぎた」この言葉に尽きる。彼女たちの魔力はまだまだ増え続けている。でも、この冒険者学校に来て二人は出会った。


()()()()()()」だからこそ、今この瞬間に本気をぶつけ合い、楽しみ、笑っている。そして、決着がつく。手数の多さから今回はサレンに軍配が上がった。


「「あはははは!」」


2人は全力を出し尽くしたのだろう。地面に並んで横になった。試合が終わってもなお、二人は笑っている。これから二人は「ライバル」として切磋琢磨していくことだろう。俺はそう確信している。仲間がいてこそ成長する。俺はそう思う。


「勝者、サレン・レイス」


「次は、私が勝つ!」


「望むところ!」


そうして、今日の演習の時間は終わった。

よろしくお願いします。

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