スカンク、折檻される
地下5階。
現在、順調に洞窟を攻略中。気になる事があるとしたら、メイド教授さんの足が少し遅いと思う。
でも大丈夫、ゆっくりと移動できて助かるから、何も問題ない。
のんびりと、メイド教授さんの横顔を見ながら移動しているけど…………。
うーん、顔とスタイルが完璧だなあ。
こう言う女性を確か、なんとかたんれいと言ったはず。えっと、きりん? いや、違うな。
むむむっ、あっそうだ、容姿端麗だ!
それにしても、足元まで隠れるロングスカートメイド服で良かった。
小動物とミニスカート、この組み合わせは非常に危険。
…………あれが見えてしまう。
ところで、スカンクがロングスカートの中に入るのは、セーフかな?
人間がやったらアウトだけど、小動物なら許される。
容姿端麗メイドさんの、スカートに入りたいと思うのは、男として間違っていないと思う。
きっとメイド教授さんも、笑いながら許してくれるはず。だって、俺はスカンクですから。
そーっと近づいて…………。
「レオン様、私の足元に来られるのは結構ですが、間違ってもスカートの中に入らないでください。ふふっ、折檻しますよ」
にこやかな笑みを浮かべ、メイド教授さんが俺を見つめてくる。だけど、目が笑っていない。
ぞわり。とんでもない殺気を感じた。え、笑顔が怖すぎる。
触るな危険、そーっと離れよう。
「ストップ! ふむ、丁度いいですね。レオン様、その場所から右斜め前に、3歩進んでいただけませんか?」
「きゅっ?(えっ、急にどうしたの?)」
意味を教えて欲しかったけど、微笑むだけで俺の質問に答えてくれない。
どうしよう、言われた通りに行動した方が良いかな?
えーと、1歩、2歩、そして3歩!
カチッ!
「うきゅーーう!」
からだにでんきがぁぁーー! しびれる~~。
《スキル『麻痺耐性レベル1』を獲得しました》
「おめでとうございます。新しいスキルを獲得できたようですね」
「きゅ~~っ(うるへぇ~~)」
「あの、体の具合はいかがでしょうか?」
「きゅっきゅーー! (しびれた体を、ツンツンするなぁーー!)」
正座で足がしびれた時の感覚が、全身を襲っているのに、ニヤニヤしながら突っついてくる。
「きゅっ! (動物虐待、断固反対!)」
「虐待ではありません。ふふっ、折檻です」
「きゅーーっ(ごめんなさぁーーい)」
「そろそろ麻痺は治りましたか? 動けないのでしたら、引きずって移動しますよ」
や、ヤバい。このままだと、また尻尾を掴んで引きずられる。ぐぬぬっ、何とかしないと。
動け、俺の体! 根性だぁぁーー!
ハァ、ハァ、ハァ、あれ? なんだろう、道の奥から気配を感じる。数は、1匹だな。
「きゅきゅっ、きゅっ(ねえ、道の奥から誰か来るよ)」
「そうですね。あらまあ、初めて見る魔獣ですよ。こんな時は、私に任せてください。スキル『鑑定』で相手の情報を調べてみます」
「きゅーっ、きゅっきゅ(おぉー! すごいなあ。ぜひ、お願いします)」
「はい、かしこまりました。えっと、いたずらシマウス、レベル5、好きな色はドブ色、血液型はガタ型、好きなメスのタイプは…………」
「きゅーーっ! (そんな情報、いらねぇぇーー!)」
魔獣の好きな色を教えて、俺にどうしろと?
あっ、いたずらシマウスが全力で逃げて行く。
「他には、えーと、些細な事ですが、スキル『逃走』を取得しているので、逃げ足が速そうです」
「きゅーーっ(それを早く言ってよぉーーっ)」
「あらあら、まあまあ、敵が逃げて行きますね。レオン様、私に任せてください」
えっ、何をする気なんだろう? 不安しかない。
俺の心配をよそにして、メイド教授さんが大きく息を吸い込むと、大声で叫ぶ。
「バカァーーッ! まぬけぇーーっ! あほぉーーっ! と、こちらのスカンクさんが、申しておりますよぉーーっ!」
「きゅきゅっ! (申してない、申してない!)」
全力で首を横に振ったけど、手遅れのようだ。いたずらシマウスが、土煙を上げ怒りの突進をして来る。
「いたずらシマウスは、スキル『人語理解』を取得しています。ですから、レオン様の思いを正確に伝えました」
「きゅきゅっ! (余計な事するのは、止めて!)」
「よそ見をしていると、危険ですよ。私は、スキル『ステルス』で隠れます。レオン様は、頑張って敵を倒してください。ファイトです!」
なんですと!? あっ、本当に透明になった。
…………見えない、どこにいるのやら。
おっと、危ない! 敵がスコップを振り回し襲ってきた。
フフッ、甘い、そんな大振り攻撃が当たるわけ無いだろぉーーっ!
スカンクの恐ろしさを思い知れ。
右、左、しゃがんで、ジャンプ! はっはっはっ、回避するの余裕余裕。
蝶のように舞い、ケツからビームを出す!
決まった。勝利!
《経験値150を獲得しました》
「さすがレオン様、無事に敵を倒せましたね。おめでとうございます」
戦闘が終わると、隠れていたメイド教授さんが、満面の笑みで話しかけてきた。
ぐぬぬっ、言いたい事は山ほどある。文句だって言いたい。
だけど、だけど…………。
チクショーー、美女には勝てない。