2章 -33- き、貴様っ、何をした!?
「あ、貴方、何をしたの……」
衝撃波は耐えたのか、エルシアさんが先ほどまでと変わらない位置から声を発した。
周囲を見ると、飛んでいた多くの有翼人たちは大きく高度を下げていた。
衝撃波に吹き飛ばされたようだ。
メディーは南雲を抱えたまま平然と元の場所にいる。さすがである。
「あー、説明するとややこしいんだけど、とりあえず爆発させてみた」
原理を言えば、ミズキに上空で雲を集めてもらい、その水分をリドレが電撃で強制的に電気分解。
水素と酸素を発生させ、それをカグラが気流を操作して拡散しないように囲い込む。
それをかなりの規模で実施して、そこに俺の全力に近い魔力弾と、付随してホノカに圧縮し練りこんでもらった炎弾を混ぜ込んだものを撃ち込んだのだ。
正直、俺の魔力弾だけでもそこそこの爆発を起こせるかと思ったんだけど、相手の戦意をくじくため、とにかく派手にしようと思ったのだ。
リドレの提案が面白そうだったから悪ノリしたなんて事は、ないんだからね!
化学実験みたいで面白いとか、思ってないからね!
まあ、ちょっとやりすぎたと思うので、反省はしている。
だってこんなに威力があるとは思わなかったんだもん!
『たーまやーー!』
提案者のリドレは純粋に楽しんでいた。
でも今回は俺も実行してしまったので何も言えないのだ。
エルシアさんの質問に丁寧に答えても良いのだが、科学の説明からしないといけなくなるので、ここは省いておいた。
「あんな威力の魔法、見たことがないわ……」
わなわなと震えているエルシアさん。
そのまま休戦したいのだが、そうはなかなか上手くいかないようだ。
「くっ、それでも、当たらなければっ!」
呆然としていたエルシアさんだが、いきなり攻撃に転じた。
一瞬でトップスピードに達し、俺の攻撃を警戒してバレルロールしながらもほぼ真っ直ぐ突っ込んできた。
『もう受け止めるしかないんじゃない?』
(簡単にいうけどねぇ!?)
思考加速して見ていても動いて見えるその速度だ。
単純な物理エネルギーで言えばとんでもないものだろう。
それに加えて、エルシアさんの前面には“エアブレード”のようなものが多数展開されていた。
複数の刃を円錐状に並べて、一つの槍のようになっている。
自らを槍として、俺に直接突っ込む気のようだ。
もはや特攻である。
「死になさいっ!」
非常に避けたい気分だったが、ミズキの言うとおり、受け止めないと終わらない気がする。
「来いっ!」
“十二単”を展開する。
十二枚の結界を圧縮重ねがけする一面集中防御結界だ。
竜王種のドラゴン、ヴィーのブレスも防げたのだ。これならなんとかなるだろう。
というか、なってくれないと困る!
激突。
ギャリギャリと“エアブレード”の槍先と結界がぶつかり合う音が響く。
ものすごい速度での衝突もあり、初撃で表面の結界3枚が抉られたのでかなり焦った。
4枚目を割るころには失速し、5枚目で行き止った。
「うそ……」
完全に止まってしまい、しかも次の結界を破れない“エアブレード”を見て、ついにエルシアさんが完全に止まった。
戦意喪失と同時に、“エアブレード”も消え去った。
「これ以上攻撃したくないんだけど。ゲームは終わりってことで、いいのかな?」
考えたら、彼女に向かっては一度も攻撃していない。
これ以上も何もないのだが。
こちらとしては最大の攻撃手段を見せ、防御できることも照明した。
ここはもう納得して欲しい。
「くっ、私の負けよ……」
がくっと肩を落とすエルシアさん。
ついに負けを認めてくれたようだ。
別に負けを認めなくても休戦してくれたらよかったのだが、ひとまず終わりは終わりだ。
「ふう、これで一件落着」
良かった良かった。
と思うじゃん?
「うふふ」
ん?
今メディー笑わなかった?
ばっと振り返ると、メディーさんがニコニコだ。
き、貴様、何をした……?
……これって味方に思うことではないよね。
更新が遅くなり申し訳ありません。
しかもキリが悪くて短めでした。
速いうちに次もアップする予定ですので、何卒宜しくお願い致します。