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2章 -31- 紅い飛行機みたいだぜ


「っ、んぅっ」

 腕組みしたまま空中に立っているような姿勢のお姉さんから、甘い声が漏れた。

 マジで性感帯だったのかな?

 なんにしろ、良い!

 おいしい声、頂きましたぁ!


 と、調子に乗っていると、顔を赤くしてすごい形相のお姉さんが振り向いた。

 目が怒りすぎて怖い。視線だけで殺されそうだった。

「……」

 無言のまま、手刀が降りぬかれた。

 ただの手刀ではない。魔力が乗せられていた。

 “エアカッター”どころの威力じゃない。“エアブレード”といったところか。

 横薙ぎの一閃だったので、真上に逃げる。

 まあ、そもそも足の裏で爆発させるので、真上が一番逃げやすいのだ。

 上下左右どこへでも逃げられるように、もっと訓練が必要だな。

 まだバランスは完全とは言えない状況だ。


「………………」

 攻撃を避けられたお姉さんは、無言のまま顔を赤くしている。

 あれは性的な赤さでもなく、恥ずかしさでもなく、ひどい怒りによる赤さなのだろう。

 怒りすぎて表情が抜け落ちている感じで無表情になった。

 怖い。


「ええと、降参、してくれません?」

 さっきので、速度差を理解してくれると嬉しいところだが。

 あの表情から察するに、あえて攻撃(?)を受けた訳ではなさそうだ。

 実力差は見えただろう。

「………………」

 無言だ。

 エルシアさんは無言である。

 怖い。

 マジ睨んでくる。


「ええと…………うおっ!?」

「………………」

 無言のまま“エアーブレード”が飛んでくる。こっわ。

 今度は距離があるので、エアバーストで回避した。

 続けて何個か飛んできた。

 怖い。回避する。


「………………」

 表情の抜け落ちたままのお姉さんが、高度を合わせるべく飛び上がってきた。

 目がマジだ。あれはマジだ。


 追撃されるので逃げ回る。

 問答無用で“エアブレード”が飛んでくる。

 一つ一つが結構な威力のようだが、気軽にポンポン投げてくる。

 言うだけあって、かなり強いようだ。

 あんなの当たったら首が飛ぶどころか身体が真っ二つになってしまうわ!

 マジでヤバイ。


 しかもエルシアさんの速度は俺を追うようにどんどん上がっていく。

 最初こそ油断したようだけど、次第に俺の動きを目で追うようになっていた。

 お互いがお互いの後ろを取ろうと、大空を飛び回る。


 あ、今俺、雲を引いたな。

 空気抵抗を減らすため、風を纏って飛んでいるので体から直接ではないものの、その風のフィールドの後ろに雲が……。

 こんな空中戦、一生に一度しかお目にかかれないぜ。とか誰か言わないかな?


 空中を右へ左へ飛びまくる。

 爆発を利用して鋭角に飛び回る俺に対し、エルシアさんは滑らかに空を飛ぶ。

 飛ぶために翼を動かすわけではないので、バタバタと羽ばたいたりはしていない。

 むしろ、空を泳ぐように優雅に飛んでいる。

 まあ、その合間合間で“エアブレード”が飛んでくるので、恐怖だが。


『もう少し思い知らせてあげた方がいいんじゃない?』

 ミズキさんがそんなことをおっしゃる。

『そうですね。このままだと終わりませんし』

 カグラも同意のようだ。

 確かに、逃げるばっかりでは何も変わらない。

 恐ろしいことに、エルシアさんの魔力はぜんぜん底が見えない。

 アレだけの威力の魔法を連発しているにも関わらず、飛行速度もそのままに、攻撃の手も緩んでいない。

 行くしかないのか……?


 逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ……

 ボクが行きまーーす!(笑)


「んっ」

 甘い声、頂きましたぁ!


 瞬間的に思考加速をさらに強化し、“ファイアバースト”を最大に、彼女の背後に回る。

 恐ろしいことに、これだけ思考加速をしていもて、エルシアさんは止まって見えない。

 でもまあ、回り込めなくはなかった。

 そして首筋を撫で上げたのだ。


 一度目は完全な不意打ちだったが、今度は少し抵抗したのか、声は小さめだった。

 そこは残念である。


 当然、振り向きざまの攻撃が来る。

 避けて距離を取るべく下がろうとした。

 が、

「うおっ!?」

 空気が引き寄せられた。

 彼女に向かって周囲の空気が一気に流れ込むように集まった。

 その流れに乗せられ近づきそうになる。


 なんとか逃げ切り、エルシアさんの方を見ると、その手元に空気の揺らぎが見えていた。

 焼けたボンネットの上の空気が揺らめくような感じだが、その比ではない。

 向こう側が捻じれて見えるレベルの揺らぎだ。

 今引き寄せた空気を一点に集めたのだろう。

 あれはヤバそうだ。


「………………」

 相変わらずお姉さんは口を開かない。

 だから怖いって!


 無言で空気の揺らぎが投げられた。

 もちろんこちらへ向かって。


 ドッ!!!


 かろうじて避けたが、直後に爆発した。

 圧縮された空気がはじけ、衝撃波がばらまかれる。

 カグラが“エアディフェンス”を発動させてくれたので助かった。

 衝撃波の範囲は結構なものだったので慌てて南雲の方を見たが、しっかりメディーがカバーしてくれていた。

 まあ、余波くらいは任せておけば大丈夫か。


 視線を戻すと、エルシアさんが眼前まで迫っていた。

 とっさに飛びのいた。

 ついでとばかりに足元の爆発を大きめにしておいて、爆炎で目くらましも兼ねておく。

 しかし彼女の放った“エアブレード”で爆炎はあっさり切り裂かれ、霧散してしまう。

 爆発で真上に跳んだ直後、真横に逸れる。

 さっきまで俺がいた場所の真上に“エアブレード”が飛んで行った。

 まあ、予想されるよね。あぶねー。


 しかし、これでは防戦一方だ。

 エルシアさんは女性だし、攻撃しづらい。

 うん。下手に攻撃をして、痣でも作ってしまったら大変だ。

 どうにかして矛を収めてもらえないだろうか。


「エルシアさーん、そろそろ引き分けって事でどうでしょうかー!」

 怖いので少し距離をとって話しかける。

「うるさい! そんなもの、認めないわ! 私より速い者なんて、認めない!」

 言うが早いか、一瞬で間を詰め、俺の首を切り飛ばそうとする。

 思考加速のおかげで若干スローに見えているとはいえ、下手をすれば殺される。


 マジで怖い。


飛空挺でしたっけ???

個人的には、豚が一番好きですね。

自分が好きで覚えているだけで、有名なシーンでなかったらすみません。

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