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2章 -23- おじゃる!?


 それよりも事情聴取が進まない。

「で、お前ら何してんの?」

「は、はいいいいいっ!」

 ビビリすぎて答えになっていない。

 恐怖の姉御が出てきたと思ったら、急に空から氷の柱が降ってきて地面に突き刺さり、更に姉御に似たのがもう一人出てきたのだ。

 良く分からないけどパニック状態なのだろう。

「ほら、何してたのか答えなさいよ」

 ミズキも質問をする。

「は、はいぃ。お、俺たちはそこのめぐたんを誘拐することになってまして……」

 誘拐することになってましてってどういうことだよ。

『人が来ますね』

 ん?

 カグラの注意と同時にミズキの姿が掻き消えた。

 俺の中に戻ったらしい。

 路地の先を見ると、複数の人影が入ってきた。


「遅いと思ったら、何してるデスカー!?」

 ケイトだった。

 複数の男たちを連れて歩いてくる。

 みなガラの悪そうな男たちだ。

「おっとー。ユータが邪魔をしていたんデスカー?」

 ケイトは俺を見つけるとやれやれと言った感じで聞いてきた。。

「おー、まあね。ケイトの邪魔するつもりは無かったんだけど、こいつら俺の知り合いでさあ」

「そーなんデスカー。じゃあ、その人たちイラナイので、めぐたんクダサーイ」

 ケイトは相変わらず陽気な感じでめぐたんを差し出すよう要求してくる。

 今回はごまかす気は無いようだ。

「ちょっと! いくらわたしが可愛いからって、誘拐なんてダメよ!?」

 めぐたんが狂ったことを言い出した。

「うっせえ!」

 べしっと頭を叩いた。

「痛いっ! ちょっ、アイドルの頭を叩くなんて何事!?」

 何事でもないよ。良くある事だよ。

「オー、ユータは酷いデスネー。さあ、めぐたん、そんな人よりワタシたちと来るデース」

 ケイトが両手を広げて迎え入れるような体勢で言う。

 本人だけ見ると結構良い人っぽく見えるのだが、その背後に並んでいる男たちが普通じゃない。

 着ている服とかは普通なのだが、纏っている雰囲気がカタギじゃない感じだ。

「え、遠慮しときます!」

 さすがのめぐたんもその辺は分かるのか、ちょっと腰が引けていた。

「そーデスカー? 自らワタシたちに協力してくれるなら、めぐたんなら幹部にしてあげるんデスガ」

 ケイトが残念そうに言う。

「幹部になれば、美味しいもの食べ放題デスし、楽して好きなもの手に入れ放題デスヨー?」

 なんの幹部か気になるところである。

 しかしこの雰囲気だと、悪っぽい組織とかの幹部だろうな。

 楽して何でも手に入るとか胡散臭い。

 胡散臭いけど、欲に弱いめぐたんは引っかかったりしないだろうか。

 頭弱いし、ちょっと心配だな。

「そんなの願い下げよ!」

 お、意外と大丈夫だったか。

「この世にアイドル以上に楽して生きていける生活なんてないのだから!」

 力いっぱい断言しているが、それも間違ってるからな?

 まあ、今は拒否するみたいだし、理由はこの際放置しておこう。


 それにしても、楽して何でも手に入るなら、俺も入れてもらおうかなー。

「ケイトー、代わりに俺を幹部にしてくれない?」

 どうせ今の俺はぷーたろーである。ありもしない夢職業“冒険者”なのだから。

 この際手に職持つと言うのは良いんじゃないだろうか?

 悪の組織でも……なんて。

「んー? ユータはダメデース。なんか良い人っぽいので入団出来まセーン」

 拒否られた。

「えーーー」

 一応適当に残念がってみた。

 まあ、入れたら入れたで、内側から情報を集めてどうにかできないかと思ったので、残念は残念である。


「ところでさ、何の組織なわけ?」

 答えが返ってくるかは分からないが、一応聞いてみる。

 それにまだ悪の組織と決まったわけじゃないし。

 あんな見た目だが、ボランティアグループかもしれないじゃん!?

 人は見た目で判断しちゃだめですよね。

 なんか以前に同じような話をした気がするけど。

「聞かれたなら答えてあげまショウ!」

 おっ、意外とノリが良い。

 ばばっと手を広げ、ケイトはちょっと役者がかった立ち姿になった。

「聞いて驚け、見て笑え……、あ、間違えたデース」

 おいアメリカ人。なんでそのネタ知ってるんだ?

「聞いて恐れヨ、瞠目セヨ! 我らこそ、シルバニア・ファミリーが活動部隊の一つ、アウトバッターズでアル!」

 びしぃっとポーズを決めたケイト。

 お、俺も名乗ったほうがいいかな?


「シルバニア・ファミリーだと!?」

 ちょっと迷っている間に事態は先に進んでしまった。

 さっきまで地面に突っ伏していたハリーが起き上がってきたのだ。

 ミズキが消えたので、縛りも消えたのだろう。

「シルバニアの者が何を企てている!?」

 どうせめぐたんの精神系能力を悪用しようとかそんなところだろう。

「それは秘密デース♪」

 ハリーのリアクションに何気に嬉しそうなケイトはウィンク付きでそう返してきた。

「くそっ、何を企んでいようと、この僕が! 貴様らの好きなようにはさせない!」

 余裕の態度を崩さないケイトに対し、闘志を燃やし始めるハリー。

 セリフだけ聞いてるとしっかり勇者っぽいんだけどなぁ。


「王子様っ!?」

 あ、ハリーに釣られたバカが一人。めぐたんだ。

 先ほどまでは気にしていなかったのか、今初めて気付いた様子だ。

 まあ、豪華な騎士の甲冑にマントをひらめかせ、すらりと仁王立ちして敵を指差し戦う意思を示すその姿。

 見えなくは無いのだろうけどね。

「…………」

 めぐたんの声が聞こえたのか、一瞬こちらを見たハリー。

 さりげなく襟首を正してから、改めてこちらを向いた。

「大丈夫だお嬢さん。ここは僕がなんとかしてみせる! 安心してそこで待っていてくれ」

 今こいつ、ちょっと調子に乗ったな?

 本当は王子様ではなく勇者様と言われたかったんだろうけど、さっきの間はそれを許容するかどうか考えてたんじゃないだろうな。

 まあ、調子に乗るなら乗るで良いや。

「じゃあお願いしまーす。王子様―」

 頑張ってもらいましょう。

「えっ!?」

「え?」


我ら閻魔大王様の一の子分!


こういうのも、どこまで大丈夫なんでしょうか・・・

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