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2章 -20- お仕事?


 俺たちは宿の食堂でかなり遅い昼ご飯を食べて、街に出た。

 なんのかんのしているうちに、すぐ夕方間近になっていた。

「あれ?」

 空を見ると、日は見えているが黒い雲も多く出ていた。

 あそこに見えるのは積乱雲だろうか。

「夕方には一雨きそうだな……」

 とりあえず降りだすまではまた街を回ることにした。

 観光としてはだいたい見終わってきたのだが、そういえばまだケンシロウたちを見つけていない。

 そろそろ本気で探してみるか。


(なあミズキ。ケンシロウたちの気配って分かるか?)

『んーそうね。興味なかったからあんまり覚えてないんだけど……なんとなくなら』

 精霊さんたちは興味の有無で対応がぜんぜん違う。

 アレだけ濃いキャラクターでも、すでに忘却されかかっているらしい。

『たぶん、この街の中にはいるわね』

(ざっくりだなー)

『まあ、近づいたら分かるわよ』

 さいですか。

 ひとまず街中を歩き回ることには変わりないらしい。

 結局いつものようにぶらぶらすることとなった。




「あっ!?」

 街中を歩いていると、誰かが驚いた声を上げた。

「ん?」

 声のほうを見ると、ハリーがこちらを見て固まっていた。

 正しく言えば、南雲を見て固まっている。

「ああ……」

 南雲もどうしたものかと少し困った顔をしたものも、まあ良いかとこっちに視線を送ってきた。

「あれね」

 周囲の人に見えないよう、南雲の背後に隠れながら、さらに自分の服の中に手を突っ込んで精霊さんの便利空間へ手を突っ込んだ。

 ハリーが南雲へ買っていた服を取り出す。

 人目を気にすると取り出しにくかったので、今度偽装用にリュックでも買おうかな。

「ほい」

 取り出した服を南雲に手渡すと、南雲はツカツカとハリーに歩きよっていく。

 ハリーは固まったままだ。

 本当にアイツは勇者を目指す気があるのだろうか。

「えっと、こないだはちょっと言い過ぎた気がするけど、オブラートに包んでも本心だから。ごめんね?」

 そういいながら、服をハリーの手に持たせた。

「………………」

 前回よりは優しいその対応に、ハリーは無言で頷きまくる。

 まあ、内容はぜんぜん易しくないけれど。


「せっかくだから一緒に回りませんか?」

 その横で俺はエリーさんとマリーさんへ声を掛ける。

「え、ええ、いいわよ」

「そ、そうね。せ、せっかくだから」

 エリーさんとマリーさんはメディーのほうをちらちらと見ながら一応同意はしてくれた。

 これは完全にビビッているな。


 街中を歩くフォーメーションは、昨日とは異なっていた。

 南雲とメディーががっつり俺の左右を歩いている。

 ヴィーは相変わらずふらふらしていて、エリーさんとマリーさんが保護者をしている。

 ハリーは一人ぼっちで後ろをついてきていた。

 可哀想ではあるけど、むしろ今はそっとしておいてあげたほうが良いかもしれないので、放置しておいた。


 出店を冷やかしたりしつつ、街中を歩く。

 日も傾いてきたころ、街中の店々が一斉に店じまいを始めた。

 何回見ても異様な光景だな。

 さっと戸締りをした店主や店員たちは店を出て、みんな同一方向へ進みだす。

 みんな手にピンクの棒やら団扇やらを持ち、気合十分だ。

 街中の誰もがめぐたんに会いに行っている。


『あ、ゴリラたちの反応があっちのほうに……』

 ゴリラ?

 あ、ケンシロウたちのこと?

 名前も覚えていないご様子だな。

 ミズキが示したのは人々が進む先だった。

「あー、そっか。アイドルさいこー!とか言って出てったんだったな」

 めぐたんは洗脳していなかったようだが、他の誰かが同じような洗脳をしていたのだとしたら、ライブに集まるのは当然だった。

 あの空間が嫌すぎて、その発想が抜け落ちていた。

 しかたないので、今回は行ってみるか。




 ライブのある広場まで行くと、急に声をかけられた。

「ハロー、ジャパニーズ。めぐたんシティはどうデスカー?」

 先日のアメリカンガールだった。

 この世界の人とも少し違う白い肌に金髪、青い瞳。身長は俺と同じくらいでスタイルも良い。

 歳は俺よりちょっと上だろうか。

 相変わらず陽気な感じで話しかけてくる。


「いや、そんな名前の町じゃねえよ」

 すでに手遅れなレベルで汚染されているが、街の名前まで変えてしまっては終わってしまう。

「オヤ? ユーたちは洗脳されてないんデスネー」

 俺のリアクションを見て少し目を細める女。

「そういうあんたもなー」

 前回警戒しようと思っていたので、今回は最初から気は抜いていないのだ。

 あの日めぐたんはライブ会場から出た俺たちに目を付け追ってきた。

 逆に言うと、追いかけたのは俺たちだけだ。

 他にあの会場を抜け出した人はいなかったか、本気で欺いて抜け出していたか。

 抜け出さなかったにしても、俺たちを囮にした可能性はある。

 考えすぎかもしれないけども。


 でもそういうのは異世界ものでよくある展開だ。警戒するに越したことはない。

「これは興味深い人たちデスネー。ワタシはケイト・アーガルドでーす。アメリカ生まれのアメリカ育ち、今はこの世界でフラフラしてマース」

 ケイトと名乗った女は自己紹介をしてきた。

 名乗られたからには、名乗らねば。

「我こそっいたっ!? ……ユータ・フルカワでーす。日本人でーす……」

 突っ込み速くなってない?

 ちょっとくらい名乗りを上げさせてくれてもいいんじゃないですかー?


「で、こっちが南雲、メディー、ヴィー。これがハリー。お二人がエリーさんとマリーさん。まあ、ハリーたち3人はまだこの街に来たばっかりだからね」

「そうなんデスネー。じゃあ、オモシロイのはアナタタチー」

 変に目を付けられそうだったので、一応ハリーたちは除外しておく。

 ケイトも察したようで、ハリーたちを除いた俺たちを指してそう言った。


「おい、どういう意味だ!? ………あ、いえ、なんでも無いです」

 ハリーが空気も読まず口を出そうとしていたので、南雲に睨まれていた。

 相変わらず南雲は空気を読む。俺が警戒していることに気付いてくれているようだ。

「ケイトはここに何しに来たんだ?」

「お仕事デース」

 仕事?

 だいたいこういう時の仕事っていうのは、悪事ってのが定番だよね。


新たにブックマークありがとうございます!

今後とも宜しくお願い致します。

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