2章 -18- 二度目の夜
夕方、メディーたちと合流した。
連絡などは取っていないが、メディーの魔法でどこからでも俺たちの位置を把握できるらしい。
夕飯の前ぐらいに自然と俺たちの前に現れた。
「どこ行ってたんだ?」
「うふふ。ちょっと美味しいものを食べにね」
そう言って指差したのは貴族の館が並ぶエリアだ。
心労になりそうなので、詳しくは聞かないことにした。
「ところで、昨晩はとってもお元気だったようだけど?」
「む……」
面と向かって言われると恥ずかしいよね。
見てたにしても触れないで欲しいぜ。
「あんまり覗かないで欲しいんですがぁ……」
ほんと、俺のプライバシーってないんだろうか。
俺は仕方ないにしても、南雲も恥ずかしいだろうし。
「あら、見せ付けていたのはナグモちゃんでしょう?」
「え?」
思わず南雲の方を向いた。
「ん」
南雲サンは照れるでもなく、堂々としていた。
俺の視線に対し、謎に少し頷いている。
あれ? 思ってたリアクションと違いますがな?
南雲はそのまま視線をメディーに向けた。
「メディーさん、後でお話があります」
「うふふ。メディーでいいわ。ミキ」
んん?
なんだこの気配は……?
少し緊張感(俺だけ?)のある夕食を終え、各自の部屋に戻った。
俺は自室に戻り、水浴びをすることに。
メディーとヴィーは自室に戻り、南雲も今はそっちに行っている。
今まで、南雲からメディーに話しかけることはほとんどなかった。
あったとしても日常会話の最低限くらいで、俺を間に挟んでのことだ。
それが今回、隣の部屋にまで乗り込んで話をしている。
俺の気付いていない何かトラブルでもあったのだろうか?
(何かあったっけ?)
脳内に相談してみるも、
『さあね?』
『人間の考えることは分からないので』
といった回答しかない。
相談相手としてちょっと役に立たなかった。
水浴びから出てもまだ南雲は戻っていなかった。
昨日の今日なので、またいちゃいちゃしたいと思っていたので若干寂しい。
いや!
毎晩エロいことしようとすると、身体だけが目的なの!?とか思われて良くないのかもしれない。
ここは一つ冷静に行こう。
今まで毎晩乳揉んどいて今更な気はするけど、冷静に。
冷静にだ。
ベッドに座ってそんなことを考えていると、ノックの音がした。
「へーい」
南雲が戻ってくると思っていたので鍵はかけていない。
「ただいま」
やはり南雲が戻ってきた。
「おかえりー」
あれ?
服はさっきのままだが、ほんのり髪が濡れている。
メディーたちの部屋で水浴びを済ませてきたのだろうか。
「お邪魔するわね」
続けてメディーが入ってきた。
「え?」
「うふふ。今日からご一緒させていただくわ」
ご一緒?
良く見ると、メディーの髪もしっとりと濡れている。
「?」
状況が飲み込めず、南雲のほうを向く。
と、すでに南雲は服を脱ぎ始めていた。
おいおい、メディーさんがいらっしゃいますが!?
いつも壁越しに視られてるからって潔すぎるのでは!?
「ちょっ!?」
戸惑う俺を置いてきぼりにして、南雲は下着一枚になる。
そのままベッドに座る俺のひざに馬乗りになった。
何度見ても見飽きない南雲の綺麗で豊かな膨らみが、俺の目の前にさらされる。
「これはとっても贅沢ね」
ついつい南雲に見とれていると、耳元で声がした。
「へ?」
いつの間にかメディーが俺の背後に回っていた。
そのまま腕を前に伸ばして、俺の肩の上から首元を抱くように引き寄せられる。
メディーの甘い香りとともに、背中に触れる特大のマシュマロみたいな何か。
南雲のそれよりも一回り以上大きく、しかししっかりと立体的で、でもとても柔らかいそれ。
前にも背中越しに感じたことはあったが、今感じるそれは以前より直接的に感じる。
気のせいでなければ、俺の着ているシャツしか間に挟まっていない気がするんだけど……。
「ほあっ?」
思わず変な声が出た。
「ぷっ、なにそれ」
南雲に笑われてしまった。
すごく恥ずかしい。
「い、いや、状況が理解できないんですが!?」
首を曲げて後ろを見れば、やはり下着一枚のメディーが俺に抱きついていた。
「今晩からは、わたしもお相手して欲しいわ」
メディーが甘い声でそんな事を言う。
「わたしもかまって欲しいのよ。ユータが良ければだけど」
耳にキスされそうな距離でそんな事を言われると、脳が溶けてなくなりそうだよ!?
しかし、頑張って理性に働いてもらう。
冷静にいかねばならんのだ!
「お、俺が良ければって……、南雲?」
俺は昨晩南雲と一緒になったばっかりだ。
恋人になったとか付き合おうとか、そういう明確な話はしてないけど、やっぱり昨日は心まで繋がったような、そんな感じがしていたのだ。
あれ? そういえば俺と南雲の関係って結局どうなってるんだ?
致しちゃったけど、致しちゃったけど?
いや、それより今は目の前の状況だ。
目の前の南雲の大きな胸に手を伸ばしたい……いや違う!
女の子と致しちゃった翌日に、別の女性とってどうなのよ!?
本音を言うともう欲望のままに思考を放棄して天国に直行したいのだが、女の子の気持ちをないがしろにしてはいけないのだ!
ラーブ・アーンド・ピィーース!
愛は!?
愛はそこにあるんか?
あいふるー。
じゃなくて!
助けを求めるように前を向くと、南雲と目があった。
「アタシは良いわよ。アンタ、ハーレムが夢だったんでしょ?」
「ぇえっ?」
そんなこといつ言ったっけ!?
「こっちの世界に来て、最初のころ……いつも……」
……。
確かにこっちの世界に来て最初のころは、異世界ハーレムふー!とか考えていたかもしれない。
それこそ南雲を抱き枕にしたころなんかにも。
寝言で言っていたらしい。
結構な頻度で。
何言ってんの?おれ?
「いいから、楽しみなさい」
そう言って南雲もぐっと近づいてきた。
「そうよ、わたしのことも好きにして良いから」
メディーも前に回した手で、俺の顎を撫でる。
「だからって、展開早すぎない!?」
「むしろずっと待っていたのだけど」
そんな事を言い出した。
「だって、せっかくユータのものになったのに、トマトを食べろなんて変な命令しかしてくれないんだもの」
「いやいや」
「それに、ミキとばっかり楽しんでるんですもの。わたしも寂しいわよ」
毎晩見せつけちゃって。とか言ってるけど、毎晩覗いていたのはあなたですよね!?
許可も出してないのに!
しかし、
「ほ、ほんとに良いのか?」
「良いわよ」
「ええ」
前後から帰ってくる確かな返事。
こうなったら、楽しんでしまいましょう!
長い夜の始まりだった。
朝に続き昼の更新ですが、夜のお話でした。
まっぴるまからすみません。




