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2章 -17- 服を買う


 部屋を出ると、ドアに手紙が挟んであった。

 メディーからだ。

「朝までお楽しみの様だったから、わたしたちだけでお散歩に行ってきますだって」

 やはり今回もしっかり見られていたらしい。

 なんだよこれ。なんの羞恥プレイなんだ?

『あたしたちがいる時点で悠太の非羞恥プレイはないんだけどね』

『まあ、悠太も若い男の子ですから仕方ありません。人間としては正常です』

(意識したくなかったからもう少し黙っていて欲しかったんですけど!)

 分かってはいたけど気付かないふりをしていたかったんですぅ!

 脳内で精霊たちが口笛を吹きまくっている。うるさい。


 宿を出ると、すでに日は頂点を越えて西へ少し傾いていた。

 実は起きてからもう一戦してしまったのでかなり遅くなっていた。

「今日はどうする?」

 南雲が聞いてきたが、今日はすることが決まっている。

「まずは服屋だな。南雲の服を買おう」


 昨日ハリーに買ってもらったものも一応そのまま着て帰ったのだが、あそこまで激しく拒否ったので、今度会った時に返しておこうということになったのだ。

 なので結局、南雲が今着れる服はエルフの無地服だけだ。

 俺も服は買ってなかったので同じなのだが。


 昨日玄関先でやらかした服屋に行くことにした。

 あそこが一番服の品揃えが良かったらしい。

 なんだかんだで良く見ている。

「い、いらっしゃませー!」

 店員が引きつった顔で出迎えてくれた。

 昨日の南雲の迫力にビビッているのか、すごく丁寧に接客してくれている。

「遠慮なく好きなの買えよ」

「わかってるわよ」

 南雲は服屋の服を物色し始めた。

 そして物色しまくった。


「………………………………長いな」

 女子の買い物は長いと聞いたが、服だと特に長いんだろうな。

 服屋の服全部見ていく勢いで物色している。

 他にすることもないので別に問題ないのだが、自分の服はもう決めてしまったのですることがない。

 店内に聞こえる南雲と店員のおっさんの会話が聞こえてくるので、それを聞いていた。

「これ、どうかしら」

「良いですね。今流行の色でございます」

「でもデザインはこっちのほうが流行じゃない?」

「そうでございますね。おっしゃる通り、最近はこういう襟のものがはやって来ておりまして――」

「やっぱり……。あ、これ良いわね」

「おお、お目が高い。それは先日王都から入ったばかりのものでございまして、王都の流行の最先端でございます――」

 やはりギャルはセンスが良いらしい。

 店員の褒め方もお世辞っぽくなく、実際の情報を前提に会話をしているようだ。

 てか、街にきてそれほど日がたっていないのに、しっかりこの世界の流行を掴んでいる。

 こっちの流行なんて知らないとはどの口が言ったんだ。

 しっかり流行を掴んでるじゃんか。

 しかし、転世してこの短期間で、結構すごい才能なんじゃないだろうか。


「ねえ、これとかどう?」

「ん?」

 店の隅っこに椅子を借りて座っていた俺に、南雲が服を持ってきた。

「え、それ男物じゃね?」

「そうよ。アンタに似合いそうなやつ、たまたま見つけたから」

 確かに格好良さそうだ。この街のいけてる若者が着こなしている服っぽい。

 しかも上下セットで持ってきてくれてるので、そのまま着れば良い感じだ。

「こんなことを言っておられますが、しっかり探されていらっしゃいましたよ」

 ニコニコしながら店員のおっさんがそんな事を漏らしたが、

「うっさい」

「………………」

 すぐ脂汗を流しながら固まることとなった。


「高かったら減らすから……」

 と少し気にはしていたが、すごい量の服だ。

 3分の1は俺の服らしいので、全部が全部ではないようだが、いる? こんなに?

 まあ、遠慮なく選べと言ったのは俺だから、買うことは吝かではない。

「で、いくらになる?」

 店員に聞くと、すごい汗を流しながら金額を計算してくれた。

「え、ええと、これだけのものになりますと……全部で金貨8枚と銀貨3枚になりますが……」

「う、やっぱり結構するわね……」

 南雲が少し遠慮しそうになっていたので、問答無用で買うことにした。

「いや、全部買おう。これでいいか?」

 有無は言わせない。

 小銭袋に小分けにしていた純金貨を一枚取り出す。

「こ、これは純金貨!?」

「え、ダメだった?」

 純金貨意外は女神教の皆様から頂いたお金しかないので、あんまり使いたくない。

 エルフに貰った宝石もまだ換金していないし、せっかくだからこういう時に純金貨を崩しておこうかと思ったのだが。

「い、いえいえ! そんなことはございません!」

 どうやら純金貨ともなると、市民が普段使いするものではないらしい。

 白金貨ほど希少ではないが、目にすることはほとんどないそうだ。

 店員の視線は俺の小銭袋に注がれている。

 どうやら先ほど口を開いた時に中が見えたようだ。

 純金貨がざっくりと入っていたので驚いていたようだ。

「昨日は騎士様ともご一緒のようでしたし、貴方様は……」

 騎士様とはハリーのことだろう。あの格好だけを見ればそうも見える。

 しかし、俺に誰か聞いちゃうのかい?

 聞かれたからには応えてあげよう!

「我こそは! いたいっ!?」

 南雲に蹴られた。

 いや、まだ名前すら名乗ってないけど!?

 こういったところまで遠慮がなくなってるのかな?

 気を取り直して普通に名乗る。

「いや、ただの旅の者ですよ。ユータ・フルカワと言います」

「そ、そうですか。よければ今後ともご贔屓にお願い致します」

 俺と南雲のやり取り(一方的な蹴り込み)を見て顔を引きつらせつつ、丁寧にお辞儀をしてきた店員さん。

 見送りの際には「またのお越しを……」と言っていたが、本心で言えていたのだろうか。



 店を出てとりあえず人気のないところへ向かう。

 買った服の量が多いので、人目のないところで精霊さんの便利空間へ放り込むことにしたのだ。

 カラドボルグを入れたところとはもちろん別の空間にだ。

 てか、あれどうしよう。もうこのまま封印で良いんじゃないだろうか。

 あんなの実戦で使ったら、間違いなく死人が出る。

 やっぱり封印だな。


「それにしても意外と安かったな」

「そう?」

 ブランド服なんてあれだけ大量に買うともっとすると思っていた。

 二人分で上下15セットくらいはあったはずだ。他にも靴下やハンカチなど色々そろえていた。

 護身用に買った短剣を隠せるように、腰に巻く布なんかも買っていた。

 金貨一枚が一万円くらいのものだから、八万円ちょっとで済んだのだ。

 そう思って話をすると、

「あれ全部中古よ?」

 とのことだった。

 新品は王都の最先端の店に行かないとないのだとか。

 しかも相当高いらしい。

 そういった服を着れるのは、一部の貴族とか大商人とかの上流の人たちだけなのだとか。

「ふーん」

 最先端の服の話をする南雲の表情は楽しそうだった。

 そのうち着せてやれるように頑張ってみるか。

 まあ、何をどう頑張れば良いかはまだわからんけども。

 そう心に決めたのだった。


ついに悠太たちもお洒落な服装ができるようになりました。

南雲との関係も一歩前進です。

ところで昨夜の話はR15で大丈夫だったでしょうか?

今更どこまで書いて良かったのか若干心配です。


まあ、それでもこんな展開は今後も書きますので、何卒宜しくお願い致します。

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