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2章 -15- 悪くない。


 こっちの心の声を読んだのかのごとく、南雲が口火を切った。

「アタシに気を使ってるからそんな風に笑ってんでしょ!? そんなこと知ってるわよ!」

 バレてたらしい。

「アンタは学校でももっと堂々と笑って、好き勝手してたじゃない! 一人でも!」

 それはただの痛いヤツだと言うんだよ。

 大声で言いふらさないで欲しい……。

「 アタシのことなんて気にせず自由にしなさいよ!」

 南雲のボルテージはかなり高まったようで、周囲の様子などお構い無しに怒鳴っている。

「なっ!? だったらお前だって!」

 俺も気にせず怒鳴り返す。

「アタシはもうそんな資格ないんだから良いのよ!」

 しかし負けじと言い返された。

 まだそんなこと言ってるのか。

 南雲の中でこっちの世界に俺を道連れにしてしまったことは非常に大きい楔のようだ。

「アタシなんてもうアンタの持ち物の一つ、備品の一つなんだからほっときなさいよ!」

 なんという頑固さだ。悲観的過ぎるんじゃないだろうか。

 てか備品ってなんだよ備品って……あ、抱き枕ってこと???

 本気で自分は抱き枕ってジャンルだと思ってる???

 が、冗談はここでは言わない。

「グググ……」

「うぅ……」

 互いに唸りガなら睨み合う。


「そう言うなら、お前もお前らしく生きろよ。でないと俺が気持ち悪い。俺の気分を害する。お前のせいで俺の人生クラークなるね!」

「なっ!? そんなのズルイ!」

「ずるくない! 南雲が俺の持ち物だって言うなら、持ち主のためになるように生きたらどうだよ!」

「うううう……」

 すごい唸ってる。

「大体、こんな世界でいつもみたいにしてたら、すぐ問題になるじゃない!?」

「そんなの知るか。俺はお前が縮こまってるのが気に食わないの! お前がお前らしく生きて問題が起こるなら、俺がそんな問題片っ端から片付けてやる!」

 大体、ギャルが起こす程度のトラブルならたいてい片付けられる気がする。

 メディーさんとかヴィーとかの方が、よっぽど大きなトラブルを呼び込みそうだし。

 実際トラぶったし。

 それに比べたら南雲が何かしでかしても可愛いもんだ。

「むぅぅ……」

 そんなに納得いかないのだろうか。

 渋い顔で唸っているようにも見えるが、なんかさっきより緩んだんじゃないだろうか。

 心なし顔が赤いのだが、アレは怒りが原因だけではないのでは?

 そんな気がしてこちらのボルテージは下げてみた。

「俺は結構この世界を楽しんでるんだよ。ちょっとくらいトラブルが起こるほうが楽しいってもんだろ」

 そうだ。

 異世界生活と言えば、のほほんと生活するだけじゃない。

 何かしらトラブルが起こったほうがスリリングで楽しいのだ。たぶん。

 ガチのスリリングはごめんだけどな。

「俺、強いっぽいからな」

 なんとかなるさ。

「……………………わかったわよ」

 かなり渋々と言った感じだが、理解はしたと口にした。

「でも、アタシもアタシらしく気を使わないから、あんたもあんたらしくしてよ。気を使わないでよ、絶対。それが条件だからね」

「ああ、いいだろう! 俺が俺らしく生きてたらお前どんだけドン引くか見とけよ!?」

 宣言してやった。

 まあ、今までも大して自重はしていなかった気がするが、今後はより自由に生きていこう。

 俺の宣言に対し、南雲も大きくうなずいた。

「わかった。じゃあ、そういうことで」

 言うが早いか、南雲はふいっと踵を返し、ハラハラしながら外野で見ていたハリーの元へツカツカと歩いていった。

「?」

「?」

「?」

「?」

 俺もハリーたちも急な展開に疑問符を掲げている。

 ぴたっとハリーの目の前で立ち止まった南雲は、腰に手を当てて仁王立ちした。

「…………えっと?」

 目の前に立たれたハリーは戸惑っている。

「あんたマジウザイ!!」

「!?」

 いきなりの言葉の暴力だった。

「黙って聞いてればいつもいつも、好き勝手もてはやして! アタシがアンタの好みだったらなんなのよ! アタシはアンタに興味ないから! いちいち絡まないでくれる!?」

「…………………………」ガクガク……

 唐突な南雲の言い上げとプレッシャーに、ハリーは足をガクガクさせている。

 あれもうチビる一歩手前なんじゃないだろうか。

 半分白目むいてるし。

 あわれ、ハリー。冥福を祈る。


「あんたたちも!」

 今度はそう言って俺たちを取り囲んでいた通行人たちをぐるっと一周指差した。

「見せもんじゃないのよ!? さっさとどっか行って!!」

 商店街全体に響きそうなよく通る声で怒鳴った。

 それに当てられ、野次馬たちは一瞬で消え去り、商店街は無人となってしまった。

 服屋の店員が、奥のほうからビクビクと様子を伺っている。

 さすがギャルの圧力。

 マジぱねーっす。


「ふんっ」

 これで良いんでしょ?

 と言わんばかりの視線をこちらへ向けてきた。

「ぷふっ」

 思わず噴き出してしまった。

 これで良い。

 さっきの南雲の姿は、学校で見たことがあるものだった。

 自分の意見に自信を持って、力のこもった言葉を発する。

 悪くない。


知人のアドバイスで、読者の方に興味を持って頂きやすいよう、サブタイトル的なものを付けてみました。

蛇足だったらすみません。


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