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2章 -14- 南雲の火種


 後ろで騒いでいるハリーを無視して、俺たちは街へ買い物に出た。

 今日は何を見ようかと物色していると、ついてきたハリーは南雲に話しかけ始めた。

 というか口説き始めた。

 適当にあしらわれているようだが、めげずに食い下がっている。

 まあ、放っておこう。

 エリーさんとマリーさんは、メディーが怖いようで少し距離をとっており、代わりにあっちこっちきょろきょろしているヴィーに保護者のようについて動いている。

「あれはなんじゃ!?」

「あれはねえ、魔光器よ」

 気になるもの全てに質問をするヴィーに、二人がかりで説明をしてくれている。

 うん、ちょうど良いのでお任せしよう。

 そのガキみたいなお方も実はドラゴンで危険極まりないのだけど、知ったら卒倒しそうなので黙っておこう。

 そのまま説明係から世話係、そして教育係に昇進して欲しい。


「そうだナグモさん! 服を買いましょう!」

 のんびり街を歩いていると、ハリーのそんな声が聞こえた。

「そんな地味な服じゃなく、南雲サンにはもっと似合う服があるはずだよ!」

「いや、別にいいんで……」

「そんなこと言わずに、僕が買ってあげるからさ!」

 そう言って強引に南雲の手を引いて近くの服屋に入っていった。


 しばらくすると、南雲は店から出てきた。

 服装が変わっている。

「本当にそれで良いのかい?」

 ハリーが後から続いて出てくる。

 南雲の服に関して心配しているようだ。

「別に、これで良いですから」

 南雲はそう言いきって話を切ろうとしている。


 まあ、今までのエルフの質素スタイルよりは幾分良い。

 やはり南雲にはお洒落な服が似合うのだ。

「やっぱり似合うじゃん」

 俺も声をかけておく。

「別に。こんなのどれでもいっしょでしょ?」

 南雲は俺の視線を受けて、少しばつが悪そうな顔をした。

 なんだよその態度。

「俺も服買ってやるからさ、もっと似合う服探そうぜ!」

 とりあえず明るく言ってみた。

「別にいいって言ってるでしょ」


「………………」

 これは、意地を張っているんじゃないだろうか。

 南雲の悪い癖が出てる気がする。

 また俺に遠慮をしているんじゃないだろうか。

 転世に巻き込んでしまった罪悪感から、俺の金で何かを買うことに遠慮している。

 食事にしても、南雲は安いものばかりを頼んでいた。元々食も大きくないのだろうから小さいものを頼んでいるのかとも思っていたが、もしかするかもしれない。

 それに、ここ数日の買い物で、南雲は自分の物を一つも買っていない。

 この四日間、ずっと気になっていたのだ。

「お前、まだ遠慮してんのか?」

「……別に」

 ダウトだ。


 ここにきてまだ気を使ってやがりますよこの南雲サンは。

 何でそこまで気にするのか俺には理解できない。

 良いじゃん別に。本人が良いって許してるんだから、気にするなよ。

 ギャルならギャルらしくもっとあつかましく欲しいもん欲しいって言えばいいだろ。

「俺は気にしてないから、良いって言ったろ?」

「……あんたが許しても、自分が許せないのよ」

 やっぱりまだそんなこと言っている。

 前にも何度か話をしたけど、いい加減こいつも頑固だな。

 というか気にされてるとこっちが気にしてしまうだろ!

 何度話をしてもこの点に関しては受け入れてくれないのでいい加減疲れてきた。

「いちいち気にされてるとさ、目障りなんだよ!」

 南雲の頑固な態度に思わずいらっとしてしまった。

 しまったな……とは思ったが、言葉にトゲが混じってしまった。

「っ! ……ごめん」

 俺の怒気を感じた南雲はちじこまってしまった。

 だから俺に気を使うなっての!

 本来のお前なら俺に逆ギレするくらいの勢いがあっただろうが!

「ごめんじゃねぇよ。そんなのお前らしくないだろ?」

「だ、だって、アタシらしくなんて……」

「だああああ! 良いから、いちいち俺に気を使うなよ!」

 思わず少し熱くなってしまった。

 大きな声を出してしまったのだ。

「あ、アンタだってアタシに気を使ってるでしょ!?」

 あれ?

 まだ弱腰だけど少し怒っている。

 俺の熱に感化されたのか、ちょっとは気合入ってきたのだろうか?


「は? 気なんて使った覚えないですけどぉぉ!?」

 せっかくなので、こっちも乗っかっていく。

「嘘よ! アンタ、普段だったらハリーさんからかうくらいのノリがデフォじゃん! 落ち着きすぎだし、アタシに対して優しすぎよ!」

 な!?

 優しすぎで文句を言われるとは思わなかったぜ。このやろう。

 というか普段って、お前にいじめを吹っかけられたときに適当に返していただけじゃんか!?

 それをデフォととられるのはちょっと心外である!


 しかし、良い感じで南雲のボルテージが上がってきた。

「あんたねぇ! 前々から思ってたんだけど、そのへらへらした笑い方気に食わないのよ!」

 キレた南雲がそんなことを言い出した。

「何だと!?」

 人の笑い方にまでけちつけるのかよ!

「お前だって、こっち来てから大人しいじゃないか! 俺以外にキレてるところ見てないぞ!?」

 こいつは元々もっと声の大きい女だった。

 キレれば誰であろうと食ってかかるような気の強い女だったはずだ。上級生の男子や先生相手に口論していたのをよく見たものだ。

 この世界に来てからと言うもの、南雲が俺以外の人に強気に出ているところを見たことがない。

 まあ、元の世界のように法が守ってくれるわけでもないし、見知らぬ世界だということもあるのだろう。

 それでも縮こまりすぎじゃないかとずっと思っていた。

 俺への引け目もあるのかもしれない。

 そんな南雲を見ていたからこっちだって安心できるようにへらへら笑ってたって言うのに。

 こっちの気も知らないで!


「知ってるわよ!」

 へ?


人気作品からしたらまだまだかもしれませんが、沢山の方に見て頂いてうれしく思ってます!

本日はさっきの時点で400件以上のアクセスがあったようです。

皆様、お読み頂きありがとうございます。

今後も頑張って書いて参りますので、何卒、宜しくお願い致します!

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