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2章 -13- どうやら話はそれだけだったようなので、俺たちは席を立ったのだった


 とりあえずカラドボルグ(?)は精霊さんの便利空間に放り込んでおいた。

 一応完全密封、完全分離なので、俺自身にも、俺の中の精霊さんたちにも悪影響はないそうだ。

 物好きな精霊の一人が興味を持っていたので、壊さない程度にならつついてみることを許可しておいた。

 一応、その便利空間の中で暴発しても俺に被害は無いそうだし。

 ただし、死なないようにだけは良く言っておいた。

 というか、少しでもリスクがあるなら今すぐにでもメディーさんのバッグの中に押し込みたい。


 まあ、とりあえず格好良い武器を手に入れたので良しとするか。

「良いわけないだろ!? 今のは伝説上の聖剣だぞ!? というか、今どこにしまったんだ!?」

 ハリーが鼻息荒く突っかかってくる。

「聖剣というか、魔剣じゃね?」

「どっちでも良い! さっきのは伝説の勇者グレンガードが最初持っていたとされる聖剣だ。伝説の中では何故か旅の途中から聖剣を使わない時期があり、いつの間にか新しい聖剣を持っていたのだが……」

「うふふ」

「うふふじゃないよ! グリーンピース食べなさい!」

「もう……」

 そう言いながらぼそぼそとグリーンピースを食べ始めるメディーさん。

 この光景を見ていたらちょっと信じられないが、ほんとにやっちゃってたんでしょう。マジで。


「それにしても、なんでそんなことまで知ってるのかしら?」

 500年ほど昔の話らしい。

 ……やっぱりメディーさんって……!? なんでもありません!

 視線が怖いよ視線が。年齢のことを考えるのは止めておこう。

「今の時代にそんな話を知っている人はほとんどいないはずだけど?」

 視線をハリーに戻したメディーが話を進める。

「う、……王都の図書館で読んだんだよ」

 子供のころに王都に行った際、その禁書庫に忍び込んで読んだのだそうだ。

 マリーさんも頷いているので、内容はハリーと共有していたようだ。

 エリーさんはさっきの騒動で気を失っている。

 意外だったのは南雲で、少しクラクラしたとは言っていたが耐えていた。

 転世時に魔力を生み出す能力を貰っているかもしれないので、その分魔力への耐性があるのだろうか。

「しかし、貴女が実在するという事は、やはりあの伝説も事実だったということなのか……」

 ハリーは何かを言いながら自分の思考の中に入っていってしまった。


 んー、気になるような、気にならないような。

 ハリーが言っていると、全てが重大に聞こえないのが残念だ。

 残念勇者が語ると全部、ごっこ遊びの中二設定に聞こえてしまうのだ。

 その気になって聞いてしまうほうが恥ずかしいというか。

 うん。今日はもう寝よう。

 さっきの騒動で気も張ったし、なんかどっと疲れたわ。


「ま、そういうことで、また明日!」




 翌朝、いつものように南雲の体温を感じながら目を覚ます。

 今日は南雲が俺の頭を抱えるように寝ていた。

 起きた際、目を開けようと思ったら、柔らかい圧力にまぶたを押されて目が開かなかったという謎の初体験をしたのだった。


 着替えて朝食を済まし、宿を出るとハリーたちが待ち構えていた。

「え、まだなんか話あったっけ?」

「むしろまだ何も話は終わっていないはずだったけどね!?」

 朝から騒がしいヤツだな。

 とりあえず場所を移して話をすることにした。


 街の賑わいから少し離れた小高い公園の休憩所に集まっている。

「まず先に、窓の件と彼女の件で、レイリー様より伝言を預かっている」

「ああ、領主のおじさんね」

 領主からじきじきに伝言を預かるとは、やはりハリーも何かしらの立場がある人物だったようだ。

 まあ、王都の図書館とか一般人が行けるとも思えないしな。俺たちの身分証を作ってくれた件もある。

「窓代は確かに受け取った。多大に釣りが出るのでそのうちこっそり寄れとのことだ」

 あれ?

 意外な伝言だった。

「そんな顔をするな。次の伝言を聞けば分かる」

 俺が変な顔をしていたので、ハリーにそう言われた。

「メディア・グリードに関してはお主に任せる。だそうだ」

「は?」

「あら、領主様公認の仲ということね」

 メディーさんが何か言っているがスルーしておく。

「どういうこと?」

 話を聞くと、一応納得は出来た。

 あの領主、レイリーさんはきちんと現実を見て敵の力量を計れる人だったらしい。

 ゴブリン戦の際のメディーの力と、祖父から聞いていた恐ろしい力、そして老執事からも話を聞いていたらしく、一般兵レベルでは何人集まってもメディア・グリードを止めることは出来ないと理解していたそうだ。

 ガーディアンを全員そろえてぶつけても難しい。

 むしろ、本気で戦えば多くの死者を出すとさえ判断していたそうだ。

 しかしあの場では、街を守り、一族の誇りを守らなければならない立場上、引くことは出来なかった。

 そのため、何事も無く逃げ去ってくれたことで内心ほっとしていたそうだ。

 しかもその去り際に、メディア・グリードの頭を押し下げてお辞儀までさせていったのだ。

 食事の際のあのやり取りから俺のことは信用しても良いと判断したそうで、そのまま任せてみようと考えたらしい。

 いや、信用してもらえるのは良いんだけど、それメディーさんがレイリーさんの“真実をしゃべらせる魔術”を改竄していた結果なんだけど。いいのかね?

 まあ、結局あの場で嘘はついてないし、信じてもらっても良い気はするけど、たった一度の面談で人を信じるとは、レイリーさんという領主は結構な大物なのかもしれないな。

「まあ、そういうことなら分かったよ。元々そのつもりだったし」

「そうよね」

 メディーが嬉しそうに俺に寄り添ってくる。

 うん。今日も良い匂いがするよこの人。

 まじエロい。


「それで、パーティメンバーのことなん――」

「断る」

 喰い気味に言ってやった。

「いやまて、話はさ――」

「断る」

 俺がハリーのパーティーメンバーだなんて考えたくも無い。

 逆もまた然りだ。

「どうやら話はそれだけだったようなので、俺たちは席を立ったのだった」

「おい待て! というかわざわざ口で言うなよ!?」


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