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2章 -11- この肉美味いな。ガジガジ……


「で? 何しに追ってきたわけ?」

 俺はまだまだある大きな肉の塊をガジガジしながら話を振った。

 ハリーたちはとりあえず隣の席に陣取った。

 座ってた人たちがいたのだが、メディーさんがにっこり微笑んだだけで席を譲ってくれたのだ。

 美人のスマイルってすごいね! 目が赤紫色に光ってたけど、それは見なかったことにしよう。


「まあ落ち着け」

「どこをどう見たら焦ってるように見えるんだ?」

 ガジガジ。

「………………」

「ハリーに追われたところで怖くないし」

「わざわざ言わなくても良いだろう!」

 思わず立ち上がるハリー。

「黙ってたから、言って欲しいのかと思って」

「違うわ!」

「まあ、落ち着けよ」

「こっちのセリフだったよ!?」


 俺が肉をモグモグしていると、ハリーは気を取り直したのか席に着いた。

「正直に言うと、君たちを追ってきたのは個人的な興味だ」

「っ!? そっちの趣味!?」

「ちがう! 君たちの強さに興味があるだけだ!」

 ちゃちゃを入れるのはこれくらいにして置いてあげよう。まったくもって話しが進まない。

「アンタがちゃちゃ入れるからでしょう」

 そうですた。

「アルシアードでのゴブリン戦、君たちの強さは異常だった。あのガーディアン騎士団長、セシリア・オルレイよりも圧倒的に強いと言える」

 前回のゴブリン戦の際、ハリーたちは近くで見ていたのだった。

 そういえば、その後は街の復興や領主との面談などでハリーとは会えてなかったな。


「勇者を目指す、僕のパーティにふさわしい人材だ!」

 ぶふぅっ!?

「ちょっ、汚いぞキミ!?」

 思わずモグモグしていた肉を噴出してしまった。

 女性にかけると色々まずいので、とっさにハリーのほうを向いたのだ。

「いや、正しいように聞こえるが、人のいない方向だってあっただろう!?」

 おっと、また心の声が漏れていたようだ。

「まったく!」

 ハリーはぷんぷんしながらナプキンで顔を拭いている。

 拭き終わっても気になるのか、お手洗いに顔を洗いに行って戻ってきた。

「遅いぞ、ハリー」

「キミのせいだろ!」

 文句を良いながら再度席に着くハリー。

 てかさっきからぜんぜん話しが進んでいないな。

「それもキミのせいだ」

 じーざず。


「で、俺がハリーのパーティメンバーだって?」

「そうだ。今はまだ、君の方が強いだろう。しかし修行を積めば、いずれかならず僕のほうが強くなる。そして偉大なる勇者として、この世界の真の戦いに望むのだ!」

 なんだか気合が入っていらっしゃる。

 しかし、ついに自分が弱いことを認めたのか。今は、とは言っているが。

 少しは成長したようだ。

 そう、思い上がってはいけないのだ。上には上がいる。

 だから俺も自重しよう。

 ハリー以外には。

「なんだよ、その真の戦いってのは?」

 ハリーが言った、この世界の真の戦いってフレーズが気になった。

 真の戦いと言うのは、これから起こるかもしれない戦争のことだろうかとも思ったが、何か含みを感じたのだ。

(わかる?)

『サー?』

 精霊たちに聞いても満足な回答はなかった。

 というか、こいつらはどこの世界でも世情に疎い。

 興味がなさ過ぎるのだ。

「む……。今はまだ言えない」

 聞いてみるも、ハリーは口ごもってしまった。

 何だよ。誘うだけ誘っといて、真実は話せないとか。

 気になるじゃん。

 しかし、結構真面目な顔をしていたので茶化すのは止めておいた。


 やっぱり聞きたいなと思ってどうしようか考えていると、ハリーが先に口を開いた。

「貴女は、本当にメディア・グリードなのか?」

 視線をまっすぐメディーさんに向けて問いかけている。

 領主の館でこそ本名を明かされたが、町では一度も本名は名乗っていなかったはずだ。

 メディーさんの話だと、賊を採り逃したと言う失態を民衆に漏らすはずはない。

 となると、ハリーはこの名前をどこで入手したのやら。

「そうだけど。だとしたらどうするのかしら?」

 メディーはハリーに目も向けずお上品に食事を続けている。

 ナイフとフォークで綺麗に食べ分けている。残っているトマトとグリーンピースが苦手と見た。後で残さず食べさせよう。

 というか、そんな好き嫌いしながらよくその美貌を維持できるもんだな……。

 一方ハリーの緊張のレベルは一気に高まった。

 かなり緊張しているようだ。


「捕まえると言ったら……っ!?」

「メディー」

 ハリーの後ろに回った俺が声をかけるとメディーはにこやかに言った。

「大丈夫。元々寸止めの予定よ」

 そう言って自らの手をひらひらと振った。

「「えっ?」」

 エリーさんとマリーさんの呪縛が説ける。

「なんでっ!?」

「うそっ!?」

 エリーさんとマリーさんは、自分が持つナイフがハリーの首元へ向けられていることに驚いていた。


 ハリーが「捕まえる……」と言いかけた時点で、メディーが魔法を使った気配があった。

 魔力が動いた先には、エリーさんとマリーさん。

 魔力の動きくらいはここ最近で何となくつかめるようになっていた。

 しかし何をするかまでは分からない。が、メディーさんのことだから予想はつく。

 思考加速を最大限高めて、机を吹き飛ばさないように丁寧に動く。

 俺が近づいたころには、音もなくエリーさんとマリーさんがナイフを持って立ち上がっていた。

 ハリーの両サイドにいた彼女たちが、それぞれ手に持ったナイフをハリーの首元へ伸ばす。

 スローモーションの視界の中で、俺は難なくそれぞれのナイフを摘んで止めたのだ。

 確かに、ナイフがハリーの首に触れる直前で減速はしていたようだが……。


 ハリーが驚愕の表情でメディーを見ていることで事態を察したのか、エリーさんとマリーさんも顔を青くして冷や汗を流し始めた。

「もう。ちょっとしたお遊びよ。うふふ」

 割と無邪気に笑っているメディーさん。

 怖いわ! やっぱりこの人怖い!


昨晩更新しようと思って寝落ちしていたぶんです。

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