2章 -10- アルシアードから追ってきた者
武器屋を後にした俺たちはその後も街の商店街を散策した。
宝石屋などにも寄ってみたが、うちの女性陣の反応は微妙だった。
「別に。いらない」
「ユータから貰えるのなら嬉しいけど、ここにあるような安物はわざわざ買ってもらうほどのものでもないわねぇ……」
「わらわは興味ないのじゃ」
メディーの発言には宝石店の店主が顔を真っ赤にしていたが、メディーがつけている首飾りや指輪の宝石を見て、今度は真っ青になっていた。
買いもしない俺たちに親身になって色々説明してくれたのだった。
しかしメディーさんよ、いちいち敵を作りそうな発言をしないで下さい。
その後も色々と店を回ってみた。
どこもめぐたん一色だが、それに慣れれば普通の街だった。
人も良いし、商店街もそこそこ賑わっている。
広場には出店なども並び、ワッフルのような菓子や、フルーツの切り売りなどが並んでいた。
そういったものを食べたりしつつ、街を観光したのだった。
「ふわー、今日も観光堪能したなー」
夜の宿屋の食堂で、俺たちはくつろいでいた。
この街に来てから四日目の晩だった。
エルケンリアードの街はアルシアードの街と同じくらいの規模だったが、今回は結構観光を楽しむことができた。
アルシアードのときは、思いがけず途中で逃げ出す羽目になったからだ。
今回は割りとのんびり回れていて、ゆっくり堪能している。
まあ、娯楽の少ないこの世界では、観光地という観光地は存在しないのだが。
それでも俺と南雲にとっては初めての世界だし、ヴィーにとっても街中は珍しいようだ。メディーも久々の街中で少しは楽しんでいるようだった。
晩ご飯はステーキを食べていた。
もらい物のお金しかなかった以前と違い、今回は気兼ねなく食べたいものを食べられるので気持ち良い。
相変わらず南雲は少なめだったが。
メディーは上品においしそうなものだけ食べている。好き嫌いは許しませんぞ。本気で残そうとしたらオネガイしてみよう。俺のいう事は何でも聞いてくれると言っていたし。
ヴィーは食べすぎである。しかも早い。好き嫌いがないのは良いが、もっと噛んで味わってほしいものだ。
それにしても美味い。
こっちの世界のご飯は、味付けが元の世界とは違い少し物足りない。
しかしその分素材の味を活かした料理が多いのだ。
特に、今食べている肉料理は素晴らしい。
何の肉かは知らないが、かなりの肉厚で一口かじるごとに肉汁が染み出してくるのだ。
「うめー」
実際には筋張っていたりして少し硬いのだが、庶民派の俺にはこれくらいが食い応えがあって良い。
ガジガジ……。
レアに焼き上げ香辛料を振っただけのシンプル料理だが、それがまた良い味を出している。
ガジガジ……。
「やっと見つけたぞ! ユータ・フルカワ!」
ガジガジ……。
ああ、美味い。
「探したぞユータ・フルカワ。ずいぶんと探し回ったのだ」
食事中の俺たちに声を掛けてきたのはハリーだった。
アルシアードの街から追って来ていたらしい。
エリーさんとマリーさんも一緒である。
「うん。知ってた」
美味しい肉をガジガジしながら、さらっと答えておく。
「ん?」
ハリーがどういうことだ?と疑問符を浮かべたので、追加説明を述べておいた。
「昨日の昼ごろこっちに着いてから、俺たちのこと探してたっぽいな。この街の中を東から西へ向かってたよね」
やっぱりこの肉美味しいな。モグモグ。
ちなみに西まで行った後、北へ回って南まで一周していたはずだ。
「 ……何故知っている?」
「見てたから」
ガジガジ。
街中を歩き回って大変そうだったなぁ。
特に、あの豪華な騎士様装備はごついので、この時期暑かっただろう。
森の中なら木々が日差しをさえぎるが、街の中は大変暑いのだ。
「見ていたなら会いにこいよ!」
「酷いわよ、ユータくん!」
「そうです!」
マリーさんとエリーさんからも顰蹙を買ってしまった。
しかしこればっかりは許して欲しい。
俺たちだって観光したかったのだ。
「だってさぁ、アルシアードから追っ手が来たら警戒するでしょうよ」
領主のレイリーさんちでトラブル起こして逃げてきたのだから。
メディーさんが働いていた過去の悪事でひっ捕らえられそうになったところを窓まで割って逃げてきたのだ。
追ってきたなら警戒はすると言うものだ。
まあ、ハリーたちが汗だくで歩き回っているのを見ながら、もちろん観光は楽しんだけど。
そういえばヘトヘトになっているハリーを見ながら飲んだフルーツジュースは美味しかったなー。
「おい、今本音まで漏れていたぞ」
「「ぶーぶー」」
おっと?
俺の本音はどこから漏れてるのだろうか。
耳か? へそか? いや、普通に口だな。
だって意図的に言ったんだもの。
「アンタもたいがい良い性格してるわね」
南雲にも言われてしまった。
それほどでも。
「褒めてない」
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