2章 -7- とりあえず放置。それでいい。
「まあ、わかった。めぐたんの事情は把握した」
ひとまずはこれで良いことにする。
めぐたんの思考回路には大いに問題はあるものの、事情は理解できた。
緊急性のトラブルではないし、まあ、いいだろう。
この街はこの街で、アイドルを中心にすることで何気に良い感じで回っているようだ。
めぐたんファンクラブ鉄の掟により、エルケンリアードの街から争いはなくなり、誰もがめぐたんに嫌われないように善人として頑張っているようだ。
精神干渉にしても自分をアイドルとしてもてはやすだけにしているようだし。
まあ、この間のオタクと違って多少の貢物をさせているようだが、膨大な献上品は受け取らないようにしているようだ。その理由は、ファンが破産していくと今後の貢物が安定しないからだそうだが、まあ、無理をさせないのであればギリ良いか。街中の人間がファンであるため、一人当たりの貢物が少なくても、かなりの贅沢ができるそうだ。
恋愛などに関しても普通にできるようにしているようだ。めぐたんはラブだが、それはアイドルとしての好きであって、恋人を作ることに問題はない認識にしているらしい。
元々、この町は荒んでいたそうだ。
街に活気はなく、不良たちが闊歩していたそうだ。
政治も不正が多く、貴族の横暴がまかり通っていたらしい。
これらの話は後で街の人たちからも確認したが事実だった。
洗脳の件はこのまま放置しても問題ないだろう。それ自体が問題ではあるけれど。
それに、今、街の人たちも生き生きしていていいのだ。
偽者でも熱くなれるアイドル(生きがい)があるというのは良いことらしい。
ライブで盛り上がり、ファン同士での交流も生まれ、アイドルグッズの需要などで経済が回っているようだ。
偽者でも民衆を従える英雄は必要だと、とあるサイボーグの少佐も言っていた。
というか、何が幸せなのかはわからないけど、面倒なことは放置することにしただけだけど。
「じゃあ、お前がケンシロウたちも洗脳したのか?」
ひとまず事情を理解した後、一応思い出したので話を聞いてみた。
「洗脳って言わないでよ。ファンになってもらってるだけよ! ……で、ケンシロウって誰?」
精神をいじって強制的にファンになってもらうことを洗脳以外のなんと言うのだよ。
俺は何も間違っていない。
「エルフの森の近くで、ムキムキのおっさんたち5人を捕まえなかったか?」
「はあ? エルフの森ってどこよ。わたしはここに来てから街を出たことはないわよ?」
「ん?」
どういうことだ?
「てか、エルフっているのね。あれでしょ? ファンタジーの住民みたいな」
めぐたんのリアクションを見る限り、嘘ではなさそうだ。
実際、ここでアイドル活動をしているめぐたんが、わざわざ街を出る理由がない。
他の街に遠征ライブとか言い出したら別だが、それなら方向的にアルシアードに来ていたか今行っていないとエルフの村の近くを数日前に通ることはない。
俺たちがアルシアードの街を出たのは今日のことなので、それだと話が通らない。
「てことは、めぐたん以外の人物がケンシロウたちを洗脳したってことか?」
いったい誰が、あんなヘンタイどもにわざわざ手を出したんだ?
まあ、ケンシロウたちもこの街の方角へ向かったらしいし、街中を散策していればそのうち会えるだろう。
こういう時はケータイがあったら便利なのになぁとも思わなくもない。
けど、ケータイがないから会えるかどうか分からないというのも、それはそれで面白いものだ。
やっぱり人生ゆとりが大事だよね。
めぐたんは自分の家があるらしくひとまず帰っていった。
また何か話しがあれば、毎日夕方に広場でライブをしているとのことだった。
まあ、用はないだろうし、あの変に盛り上がる空間には足を踏み入れたくないので、行くことはないだろう。
今日はそのまま、このめぐたんの隠れ家に泊めてもらうこととなった。
例のごとく、隣の部屋が急遽空きになったそうだ。
またメディーさんの目が赤紫に光っていたことは気にしないことにした。
気にしたら負けである。
こんばんは。
本日も読んで頂いてありがとうございます。
今後とも、宜しくお願い致します。
今日はもう少し更新しておこうかと思います。




