表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/137

1章 -6- 妄想ではなかった系


 突進してきた大イノシシに焦り、力んでしまったようだ。

 その結果、思った以上の威力になった模様。


「おっおー……」

 俺が右手から放った力に呼応し、吹き荒れた突風が地面を抉り、木々をなぎ倒し、突進してきていた大猪を止めるどころか遥か彼方へ吹き飛ばしてしまった。

 前方数十メートル先までは森自体がなくなり道が出来ている。

 初手で成功とは、俺のイメトレ(妄想)は完璧だったみたいだな。


「中二病なめんなよ」(キリッ)

 今更だがとりあえずキメてみた。


「あ、あんた何したの?」

「風神ごっこ」

「は?」


 一応危機は去ったと判断したのか、南雲も少しは落ち着いたようだ。

 適当に応えて現状把握に移行する。

 よく分からんけど謎の力を手にしたらしい。とりあえず身を守ることは出来そうだ。

 この感じで行けば、他の妄想技も使えるかもしれない。

『使えるわよ』

 とのことだ。


 だとしたら、思ったよりは安全に森を抜けられる。

 最悪さっきのを連発して強引に道を作ってもいい。技の発動で疲れとか感じなかったし、消費エネルギーは少ないのかも。

 緊急の危険は排除できたのだ。

 それよりも、だ。


(ところで俺は誰としゃべってるんだ?)

『南雲でしょ?』

(そっちじゃなくて、脳内のほう)

『『……………………』』

 相手が目の前にいるわけじゃないので表情は分からないけど、何言ってんだこいつ?的な空気が流れた。

 ……気がする。


『やはり悠太は信じているようで信じていなかったのですね』

『なんとなくそうだと思ってたけどね』

 呆れられたように聞こえるんだけど……

 何故か脳内会議の背後からブーブーと複数のブーイングが聞こえる。会話に入ってきていない“声”たちだろう。

 酷く攻められている気がする。

 なんとなく理由が分かった。

『仕方ない事です。元の世界では信じ難いことでしたし……』

 カグラが俺のフォローをしてくれている様子。

『ま、信じてなかったにしても助けてもらったことには変わりないしね』

 ミズキの発言もあり、背後のブーイングも消えた。というより、元々本気のブーイングには聞こえなかったけど。


(もしかしてただの妄想ではなかった系?)

 だとすると、結構えぐい状態なのでは?

『その通り系』

 俺が幼いころから会話をしていた自称神様とか精霊たちは、妄想ではなかったようだ。

 自分自身、中二病だと思っていた。

 だって精霊がいるとか、現代社会で考えられるかってことだ。脳内で会話が出来たとしても、それは残念な自分が無意識に作り出した設定だと思い込んでいた。


(ま、それならそれで良いか!)

 切り替えの早さも俺の美点だしね。

『改めてよろしくお願いします。悠太』

(よろしくな!)

 転世も精霊も本当だというのなら、さっさと納得して次のことを考えよう。

 もしも俺の妄想だと思っていたものが全部事実なら、早くいろいろ試してみたいし。



(ところで、何ではっきり話が出来るようになったんだ?)

 こんなに話しができるならもっと前から会話してみたかったものだ。

 以前も、山の中や神社に行くと、たまに“声”がはっきり聞こえることもあった気もするが、ここまではっきり会話が出来るのは初めてだ。

 以前は、こんな感じのことを言ってそうくらいに感じるだけだった。


『それはこの世界が魔力に満ちているからよ』

 ミズキが説明してくれた。

 元いた世界は、科学の進歩や自然の破壊に伴い魔力が限りなく薄くなっていたそうだ。その上、科学の発展に伴い精霊などの存在が信じられなくなり、力を失って消えかけていたのだと。


 そういえばこの話は聞いたことあった。

 出会ったばかりの“声”たちから、事情聴取で聞いていた内容だ。当時は自分の脳内で作り出した設定だと思っていたけど。


 それがこの世界では当たり前のように魔力があるらしい。大地や植物、空気中に至るまで、魔力に満ち溢れているそうだ。それらを自動で吸収して彼女たちの声が聞こえる程度に回復できたのだとか。


(あれ? てことは魔力が溢れてくる能力とか要らなくね?)

 本当に貰えたのかは謎だが、白い空間のクソ女神からもらった能力を考える。

 この世界においては思いっきりハズレを引いたかもしれない。

『そうでもないですよ。自然の魔力には濃い薄いがありますから』

 場所を選ばず力が使えるハズとのこと。

 しかしそもそもその魔法?の使い方を知らないのだが。

 ぜひとも使えるようになりたいものだ。


 なんとなく自分の存在について理解をしてきたところで酷い揺れに襲われた。

「……る川! 古川!?」

 意識を外に戻すと、南雲が必死の顔で俺を揺さぶっていた。

「な、なんだよ」

「だって話しかけても反応しないし、目もうつろでヤバイ感じになってたし……」

 ヤバイ感じってなんだよっ。

 まあ、半分おかしくなったようなものだとは思うけど。

 しかし次の行動を考えることも必要だな。

 このまま森の中に突っ立っていても仕方ないし。


「ひとまず動くか……」


まだ続きます。


今更ながらに、以前アップした分を消す方法が分かりましたorz

ここまで来てしまったので、こっちで続けて参ります。

今後とも宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ