1章 -60- メディーさん
「どうしてこうなんの~……」
英雄として名を馳せようとしてたのに、お尋ね者として名を馳せてしまいそうだ。
どういうことよ?
とりあえず街を抜け、メディーさんの小屋まで逃げてきていた。
ここは今、以前とは別の偽装がかけてあって周囲からは発見できないそうだ。そもそもお婆さんが住んでいたことになっているので、ここへ捜索の手が来る可能性は引くいだろう。
その上、移動中はメディーが認識阻害の魔法をかけていた。
とりま一安心。
「ねえ。どうしてわたしを差し出さなかったの?」
落ち着いてきたところでメディーさんが聞いてきた。
「なんで差し出す必要があんのさ」
「わたしと一緒にいると、あなたたちも悪者扱いになるわよ?」
「そんなの知るか。身内を売るくらいなら一緒に闇落ちだ!」
「………………」
不思議なものを見るような目で見られた。
どうやらメディーさん的には理解しがたい発想だったようだ。
なので伝えたいことはここで伝えておこうと考えた。
「俺にとってはメディーはメディーだし、50年前のメディア・グリードなんて知らん!」
まだ会ってさほど時間は経ってないけど、決して悪いだけの人ではないと思う。悪いところはないわけでもないけども。
それに意外なことに、俺の中の精霊たちの反応も悪くない。
「もっと昔にはもっと色々してるわよ?」
「それこそもっと知らんし。今のメディーがメディーで、俺の知ってるメディーだろ? 悪いことしたなら、その分良いことしてチャラにしなさい!」
この数日一緒に過ごして分かったけど、言ったことはきちんと理解してくれる。
殺すなと言えば殺さなかったし、放してあげろと言えば放してくれた。
宝物も大事にしていたりする。
昔はどうあれ、俺の知ってるメディーさんはそんなに悪い人間じゃない。そう思っているだけかもしれないし、俺の前でだけ猫を被っているのかもしれない。
それでも今はもう、仲間だと思ってる。知り合ってしまった時点でお友達だ。
裏切られたら裏切られたときだ。その時は俺が責任を持って何とかするしかない。
「そう……」
俺の答えを聞いたメディーは少し考えるそぶりをして、
「ふふふ」
笑いながら立ち上がった。
そのままテーブルを回り込んで、対面に座っていた俺の背後に立った。
「?」
「あなたって本当に面白い子ね。あなたのこと気に入ったわ」
そう言いながら後ろから抱きしめられた。
凄く甘い匂いがする。そしてすごく柔らかい二つの膨らみが背後に……。やっべー。
「ちょっ!?」
何故か焦っている南雲サン。どうしたんでしょうか?
「わたしみたいな何をするか分からない女、本当に連れて行って大丈夫かしら?」
「こうなったら責任もって俺が何とかします!」
ここまできたらやけくそだ。
結果的にだけど、街の外で隠居していた魔女を引っ張り出したのは俺なのだ。
それに俺なら何とか出来そうな気もする。
というか、するしかない気がする。
こんな危険人物は野放しに出来ないし。こんな美女を野放しにしたくない。
俺の答えを聞いて、嬉しそうに頷くメディーさん。
うん。嬉しそうならそれで良い。一緒に逃げて間違ってなかったと思う。
「ねえ、ユータ」
「?」
背後から抱きつかれたまま、耳元で囁かれる。
何だろうこの甘い感じ。すごいドキドキするよ!?
「わたし、本当の意味であなたのモノになってあげるわ」
「え……? 本当の意味でっていうのは……?」
「だって、セキニンとってくれるんでしょう? もう冗談はなしで、ユータの言うことならなんでも聞いてあげるわ」
背後からべったりと抱きつかれたまますんごい甘い声で言われる。これは非常にエロい。
今までもエロ度の高いメディーさんだったけどこれはレベル高い。高すぎる。
鼻血が出そうだ。いかん、一度冷静になろう。
メディーさんの妖艶さ、つまりエロ怪しい雰囲気のせいで、裏がありそうで怖いのだ。
「えーっと、なんでいきなり?」
素直に喜べないので質問しておく。
「前にも言ったけど、わたしを助けられる男ってそうそういないわ」
ドラゴン戦、ヴィーと戦ったときの話だろう。
「いやー、あれはたまたまで……」
「うふふ。そういうことにしておきましょうか」
そういうことにしておくんじゃなくて、そういうことなんです。
正直メディーと正面きって戦える自信もないし。
だってこの人怖いんだもの。
そう思ってごまかしていたら、意外と真面目な声で続きが言われた。
「それに、あなたといると、不思議と居心地がいいのよ。それに、あなたなら信用しても良い気がするの」
「そ、それはどーも」
普段のメディーさんの妖艶な雰囲気が素直に言葉を受け取りづらくしていて、嬉しいような、怖いような……。
しかし、先ほどの声にはすごく真摯なものを感じた。
なんとなくだが、さっきのは本音なんじゃないだろうかと思った。
今まで何十年もあの小屋で一人で暮らしていたようだし、悪いことばかりしていたみたいだし、誰かと仲良く、というのは今まで経験したことがなかったんじゃないだろうか?
どれくらい生きているのか不明な人だけど、家族と呼べる人はその人生でどれだけいたのだろうか。
危険人物扱いされているくらいなので、そうそういたようには思えない。
つっこみで頭叩かれたりとか、したことないんじゃないだろうか?
だからあの時、そういうコミュニケーションを受けて嬉しそうだったんじゃないだろうか。
そう考えると、メディーのことを信用してもいいのでは? と思った。
「これから宜しくね」
後ろから抱き疲れているので、メディーの表情は見えないけど、その声には満足そうなものが感じられた。
「こちらこそ」
だから俺もしっかりと応えておくのだった。
「ちなみにメディーさん」
「なにかしら?」
「俺の言うことを何でも聞いてくれるって……」
「ええ。何でも聞くわよ」
「ほ、ほんとに?」
「ええ、なんでもね」
この危険極まりないわがままバディのお姉さんに何でもお願いできるとか……。あ、鼻血出てきた。
ご評価頂いた方ありがとうございます!
未熟で申し訳ありませんが、今後も精進して参りますので宜しくお願い致します。
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しがない作品ではありますが、自分の作品の価値を知り、今後に活かしていきたいと思います!




