1章 -57- 森のゆかいな仲間たち
「シルバニア・ファミリーだ」
森のゆかいな仲間たち!?
俺たちを襲ってきたあの盗賊たちはそんなほんわかした名前だったのか……
魔法も使えなかった当初の俺としては、かなり迫力を感じてたんだけど。
「君たちが倒したという盗賊は、そのシルバニア・ファミリーという大きな組織の一部に過ぎない」
シルバニア・ファミリーとは、元々シルバニア一族が始めた街の闇市の一つだったそうだ。それが規模を拡大し、いつの間にか巨大組織に成長していたのだとか。今では表通りには出店しないまでも、裏通りなどに堂々と店まで出しているとか。
店の方では合法のことしかしていないので取り締まることもできず、裏ではいろいろ悪さをしているらしい。
先日の盗賊たちのように、悪党を使って旅人や行商から商品を奪い取り、それを販売するのだとか。
他にもいろいろなことに手を出しており、困った奴ららしい。
近隣の街や都市にまで手を広げていて、貴族と癒着していることもあるらしい。
街を守る立場にある身としては昔から悩みの種なのだとか。
「そして、生かしたということは、君たちの情報が組織に持ち帰られたということだ」
組織に対して手を出した者に対しては報復があるかもしれないとのこと。
盗賊たちも無理に戦闘はしない。
物欲のために命まではかけないからだ。だから弱い奴しか狙わない。
そのため一般的に盗賊が負けた事例はないらしい。
あっても貴族や騎士などの力のあるものがいた場合で、そういった場合は後ろ盾があるので報復はされないのだとか。
しかし、今回は俺たちが個人的に勝ってしまった。
しかも全員生きているとなれば、報復もあるかもしれない。
てか、いろいろ装備品を頂いちゃったし、その恨みもありそうだ。
「いつ報復されるかもわからない。気を付けるように」
「ありがとうございます。気を付けます」
まあ、ミズキたちがいれば大丈夫だろうけど、警戒するに越したことはない。
裏組織と言えば、表向き存在を知られないような強者がいるかもしれないし、そういった者と戦って勝てるかは保証がない。精霊たちはまたのんきなことを言っているが、気は抜けないのだ。
「しかし、西から来たということは、王都の出身かね?」
食事を続けていると、今度は城壁警備隊の隊長さんから質問された。
このおっさん、名前なんだっけ。一度聞いた気がするけど、覚えていない。
てか王都ってどこだろう。この世界の土地勘は全くないし、あまり深堀されるとボロがでそうだ。
「えーと、王都ではないですね。だいぶ遠いところにある田舎の出身でして」
誰も知らない田舎から出てきたくらいに言っておくほうが良いだろう。
南雲も少し緊張している様子もあるし、ここは俺のほうでごまかしておこう。
「そうか。それは王都よりも西なのかね?」
「ええ、まあ」
あまり追求しないでほしいっす。
「帝国のほうか?」
「帝国? いえ、そっちではないです」
しかし、おっさんの質問には何か意味がありそうだ。
西の出身だとまずいのだろうか?
というか帝国ってのはなんだろう。別の国が近くにあるのだろうか?
「そうか。それは……」
城壁警備隊の隊長のおっさんは何かを言いよどんだ。
なんだそれ、余計に気になるぞ!?
しかし、口には出来ないことなのか、おっさんはそれ以上を口にしない。
なんなのだろう?
「ふむ。彼には話しても良いだろう。むしろ、出身地の安全に関わる話。むしろ此度の礼として教えてあげねばなるまい」
おっさんが口に出さないことに困惑していると、レイリーさんからそんな発言があった。
なんだ?
「しかし……」
おっさんが言いよどむ。
「我らの街を救ってくれた恩人に、身内の危機を教えぬ訳にもいくまい。これは私の判断だ」
それをレイリーさんが威厳たっぷりに押し切った。
しかし、身内の危機……西が出身とか言ったのは失敗だったかな? 変な気遣いをさせてしまっているようだ。
それでも、何か重要な情報っぽいので聞いておきたいところだが。
「それは?」
西に身内はいないのだが、一応真剣なポーズで話を聞いてみる。
「ああ。その前に確認だが、ユータ君は帝国の者ではないのだね?」
レイリーさんの視線が一瞬鋭くなった。
若干、魔力の動きを感じた気がする。
『気のせいじゃないわね。簡単な精神魔法、ウソをつけなくするようなものだったみたいね』
だった……ということは、もう対処済みなのね。
『先にメディーが対応したわよ』
おや。
メディーさんも一応こっちをカバーしてくれているらしい。
当の本人は優雅にデザートのプリンみたいなものを食べている。
しかし精神系の魔法とは。レイリーは精神属性の魔術師なのだろうか?
『いえ、簡易のもののようでしたし、威力は大したことではありませんでした。属性は他のものなのでしょう』
あ、なるほどね。属性ってのがあって相性があっても、他の魔術や魔法が使えない訳じゃないのか。
精霊さんたちの説明によると、属性の合わない魔法は使えないことが多いが、魔術に関しては多少使えるらしい。
さすが、誰でも使えるように体系化されたってだけはあるな。
地味に思考加速して一瞬の間に情報を整理して話しに戻る。
「いえ、違います」
「そうか。ならばよい」
レイリーさんはあっさり信じてしまった。
自身の魔術が妨害されたことに気付いていないのだろうか?
『メディーは妨害したのではなく、綺麗に効果を摩り替えてしまったようですね』
『面白いことをするわね』
精霊さんたちからしてもメディーの対応は上出来らしい。
どうやら、レイリーさんの魔術を打ち消すのではなく、きちんと成功したように見せかけたようだ。
ちなみに俺に掛けられた魔術は、結果的に「話したいことを話す」という効果になったらしい。
つまり、自由に話せるしウソもつける。
レイリーさん的には魔術が成功した手ごたえも反応もあったようだ。
うーん、よく分からんけど大丈夫ってことか。
「実は、まだ市民には公表されていないのだが、帝国との間で戦争が起こるかもしれないという情報があるのだ」
戦争……
あまり嬉しくない響きだな。
混乱を避けるため、一般には公開されていない情報なのだとか。
この街アルシアードも所属しているアレスタード王国へ、隣国バリガレス帝国から戦争を仕掛けられる可能性があるのだとか。
あくまで可能性というだけの情報ではあるらしい。
最近帝国内での軍事演習などに力が入っているということだけで、実際に政治的な攻防があったり、突発的なトラブルが起こっている訳でもないそうだ。
そういう曖昧さもあって、市民には公開されず、一部貴族や軍や防衛部隊のトップなどに身をおく者にだけ情報として知らされているらしい。
「なんだ、まだ想定の話ってことっすよね?」
「そうである。しかし王都より西というと、故郷へ戻るには時間がかかるだろう。故に、念のためな」
どうやらレイリーさんたちは親切で教えてくれたらしい。
その後、情報に関しては誰にも口外しないようにと念を押され、あの鋭い視線も飛んできた。
今度はメディーさんフィルターの効果で「話したくない相手には口外しない」という条件の魔術に変換されたようだ。かかった魔術自体も精霊さんたちの力で簡単に解除可能だとか。
もーまんたいである。
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