1章 -54- 事後処理
歓声が上がった。
ゴブリンたちを無力化し、こちら側の勝利が確定したのだ。
「凄いなあんたたち!」
「何者なんだい!?」
「握手してくれ!」
「「etc……」」
おっさんたちが集まってきて、次々に俺たちをもてはやしていく。
「俺? 俺に誰だか聞いちゃう?」
仕方ないなぁ。
バッとポーズを決める。香ばしいポーズをとりつつ宣言する。
「我が名は悠太・古川! 神をも打ち倒し、 魔王すらも従える! 破壊者にして救世主である!」
「あんたそれ、まだやってたの……」
南雲サンの目が冷たい。何でだろう?
そこからはものすごくバタバタだった。
怪我をした人たちの治療と、動けなくなってるゴブリン及びゴブローの拘束、連行。街の人たちへの誘導など警備隊やガーディアンの人たちがせわしなく動いている。。
俺たちは、騎士団長さんことガーディアン隊長、城壁警備隊の隊長、そして知り合いということでガルドさんと話し合いとなっていた。何故かハリーたちも来ている。
「まずは礼を言いたい。我らの危機を救ってくれたことを」
セシリア・オルレイと名乗ったガーディアンの隊長さん。真面目そうで礼儀正しく良い人だ。ちょっと硬すぎるくらいのイメージを受ける。というか頭も固いのだろう。さっきの直線的な作戦と言い……
城壁警備隊の隊長さんはおっさんだったので名前は聞きそびれた。そんなにたくさん名前は覚えられないのだ。
「私のミスで隊を危険にさらしてしまったが、君の活躍で一人の死者も出ずに済んだのだ。感謝してもしきれない」
確かにアレは危険だった。腕は良さそうなのにちょっともったいない。団体戦より個人戦に特化できるタイプの人かもしれない。
まあ、こういう仕事は力がある人が出世していくのだろう。よっぽど指揮能力に問題がなければ個人戦で強く実績のある人が指揮をするのも普通の話だ。仕事だから仕方ないのかもな。
それからひとしきり感謝の言葉を述べられた。責任感が強そうなので、助けられたことを重く捉えてそうだ。
「しかし、君たちは何者なのだ?」
感謝や謝罪ばかりで話しが進まないからか、警備隊の隊長さんが話を割って問いかけてきた。
「ん? 我が名は悠太・古川! 神をも……痛っ!?」
背後から蹴られた。犯人は南雲だろう。こういう時って大体俺の背後にいるし。
「そ、それは先ほど聞いたが……」
おっさんも苦笑いをしている。じゃあ何が聞きたいんだよ?
「私も気になっている。先ほど貴殿が使っていたのは魔力による身体強化ではないか?」
セシリアさんも気になっていたのか、話に参加してきた。
まあ、セシリアさん自身も使っていたから気が付いたのだろう。
「あの身体強化は、我々ガーディアンや一部の特殊な部隊にしか伝わらない術のハズだが。どこで学んだのだ?」
え、そうなの? 初耳っす。魔力を纏うとか中二病の必須スキルかと思ってました。赤松先生のとこの10歳のネギ坊主ですら使ってる。
「えと、独学なんだけど」
嘘ではない。マンガ読んで学んだんだもの。独学だよね。
「それに、彼女が使っていたのは、魔術のようには見えなかったが……魔法か?」
メディーさんは話に興味がないのか関わる気がないのか、そっぽを向いてぼーっとしている。
「え、そういうのって見た目で分かるの?」
思わず聞いてしまった。
「君はそんなことも知らないのか?」
後ろで聞いていたハリーが呆れたように言ってくる。
周りの人間が驚きで固まっているので代表して言ってくれたようだ。余計なお世話だ。代表しなくていいよ!
どうやらこの世界では当たり前の話だったらしい。
魔法とはより直感的に魔力を扱うもので、精霊などの力を借りるか、長い年月をかけて修行を行い会得するものである。そのため、簡易の魔法は詠唱や魔法陣、術式がなくても使用できたりする。大きい魔法だとそれなりの準備がいるようだが。
対して魔術は誰でも使用が出来るように体系化したもの。媒体や術式を使い魔力を変換することで事象を改変する。つまり、使用時には大なり小なり初期動作があるのだとか。
まあ、魔術に関してはその術式の多くが、貴族や王族などごく一部の人間やその庇護下にいる魔術師にしか公開されていないのだとか。なので、一般人が知らない魔術も多数あるとされていて、未知の魔術技術がある可能性はあるのだとか。一般公開されないのは戦争防止のためらしい。てか、反乱防止だよね。それ。
「杖も、マジックアイテムもなし、詠唱も無しであの規模の魔法をなどと聞いたことがないのだが」
「それを言ったら、ユータ君にヴィー君も素手で戦闘に参加していたようだが」
「本当に人間なのか?」
一部人間じゃないのもいるけどややこしくなりそうなので言わない。
「人間ですよ」
俺は。
嘘ではない。思考速度とか尋常じゃない感じになってたけど、俺はまだ、人間だよね。
「ん? 人間と言えば、あのゴブリンロード(?)はどうなったんですか?」
あの良く見ると日本人だったゴブローさん。一応捕らえるときに人間だったとみんなも気づいたようで、一応人間の犯罪者扱いで牢屋に入っている。その関連でゴブリンたちも一応別の牢屋に入っている。
本来捕らえた魔物は処分か研究にまわされるのだそうだが、ゴブローの指揮に従っていたり特殊な事例が多くて扱いに困っているようだ。
「ああ、彼は危険ですので魔道具による拘束の上、牢屋に入れたまま尋問をしています。しかし、我々の知らぬ言語を使用しておるようで、まだ何を言っているのか分からないのです」
やっぱり尋問は難航しているようだ。
「そのことなんですけど、もしかしたら俺の地元の言葉と似てるかもとか思いまして」
「なんと!?」
「本当ですか!?」
隊長さんとセシリアさんが驚いている。
「いやー、戦ってるとき、何となく言ってること分かる気がして」
というか普通にわかっちゃうのがイヤだけど。
「事情聴取ならお手伝いできるかと」
昨晩上げようと思っていた分です。
寝落ちしてました。




