表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/137

1章 -51- 大丈夫だ。問題ない。


「これは何事でござるか!?」

 オ拓も走ってやってきた。腹が重そうだ。

「ゴブリンに城門を破られたらしい」

 ひとまず戦闘に参加できないので、その間にオ拓に事情を説明していく。

「人々が怪我をしておるではござらんか!」

 お宅は必死の形相で戦闘を見ている。

 人が怪我をすることが許せないようだ。拳を強く握り締め、少し肩が震えている。

 やはり、ある意味真性の教祖様だ。人を助けたくて仕方がないようだ。

「オ拓、お前が行っても無駄に死ぬだけだぞ?」

「わかっているでござる。そんなことは百も承知でござる」

「お?」

 オ拓は悔しそうに唇をかんでいる。

 意外と頭なしに突っ込むことはしないようだ。

「この状況でただのデブが参戦しても、ただの足手まといでござる。マンガでよくあるシチュエーションでござる」

 なるほど。マンガ的展開で理解していると。

「ま、なんとかなるよ。幸い致命傷っぽい人はいないみたいだし」

 それに援軍も来るらしいし。なんとかなるようならなんとかして欲しい。



「道を開けよ! 我らも参戦するぞ!」

 凛とした声が戦場を駆け抜けた。

「ガーディアンが来てくれたぞおお!!」

 城壁警備隊のおっちゃんたちも士気が上がった。

 どうやらガーディアンというのが到着したようだ。声からして騎士団長は女性らしい。

 白馬に乗った騎士団長を先頭に、騎馬隊が突き進んでくる。

 そして城壁警備隊が避けた中央部分に突撃した。


「作戦って無いのか……」

 思わずもらした俺の独り言に、ハリーが応えた。

「ゴブリン相手にそんなもの必要か? やつ等は頭が酷く悪いんだぞ?」

 その頭が悪いゴブリンさんが楯と武器持って隊列組んで戦っているんだが?

 しかも本来の活動時間ではない朝方という時間を狙って奇襲をかけてきている。

 本当に考えなしで大丈夫だろうか。

 それに、敵が頭悪いからって、わざわざそのレベルに合わせる必要も無いし。

「まあ、地元住民が言うなら間違いないんだろう」

「アタシ、嫌な予感するんだけど」

 こういう状況では珍しく南雲が俺の背中で話しかけてきた。俺も同感である。


 ガーディアンの突撃で、ゴブリン隊の陣形が崩れかけた。

「ゴアアアアアアア!!」

 その瞬間、ひときわ大きな咆哮が聞こえ、街の陰からゴブリンたちが飛び出してきた。

 門とは逆の、内側から。

「えーーー」


 ちょっと、精霊さん方?

(分かってたよね?)

『分かってたわよ』

 だから言ってくれよ!?

 アレだけの大群が街に入っていれば、当然ミズキたちの警戒網には感知されてたはずだ。そう思って問えば、当然のように帰ってくる返事。うむ。精霊さんたちとは“大丈夫”とか“問題ない”って言葉の基準を今一度よく話し合っておう。


「なにぃっ!?」

 ガーディアンごと城壁警備隊はゴブリンに囲まれてしまった。

 厳しい状況じゃね?

 さすがの騎士団長さんもなにぃ!?とか言っちゃってたし。

 ゴブリン隊の長槍で馬を刺され、騎馬隊が次々に地上へ落とされる。団長さんも地に落ちた。

 むしろまだ死人が出てないのが奇跡だ。


「ナグモさんは僕が守るから安心して!」

 乱戦がさらに混乱し、ハリーが張り切って南雲の身を守る宣言をしている。

 その横にオ拓もいるのだが、ハリーの目には入っていないようだ。

 ガーディアンたちを押し囲んだゴブリンたちの一部がこちらに気づいて接近してきた。

 それに気づいたハリーが俺とナグモを隠すように前に出た。邪魔だ。

 こちらに近づいてきたゴブリンは4匹。

 南雲を背中から下ろす。ちょっと不安そうだが我慢してもらおう。

「一人一匹で」

 ハリーもヤル気みたいなので、メディーとヴィーに指示を出す。

 これくらいは余裕だろう。さっきから戦闘を見ているが一対一なら問題なさそうだ。


「え?」

 剣と剣をぶつけ鍔ぜり合いに入ったハリーの横で、加減に加減を加えて拳を突き出すと、俺の前の一匹が吹き飛んで行った。その横で、同じく拳を突き出して試合終了のヴィー。反対側では氷漬けになったゴブリンが一体。メディーさんだ。

「遅いぞハリー。さっさとしてくれよ。それとメディーさん、それ死んじゃうやつだから別のにしてあげて」

 楯に阻まれ苦戦しつつもなんとかゴブリン一匹を倒したハリー。せっかく倒したと言うのに、愕然としている。どうしたんだろう? そっとしておいてあげよう。

 エリーさんとマリーさんも支援をしようとしたポーズのまま固まっている。

 そしてハリーに倒されたゴブリンは体を大きく切り裂かれ致命傷のようだったので、回復魔法をかけた。

 大きな出血だけは止めておく。

「なにしてるんだ!?」

 我に返るハリーくん。

「だって痛そうだし」

 回復させすぎると動き出しそうだったので、完全回復はさせていない。

「ふふ」

 後ろでメディーさんが笑った気がして振り返ったが、なんでもないと首を振られたのでとりあえずスルー。

「メディーは後衛で援護お願い。あと南雲の護衛。気が向いたらオ拓とハリーたちも助けてあげて! ヴィーは俺と一緒に前線だ!」

「わかったわ」

「承ったのじゃ」

「なんで僕まで護衛対象なんだよ!?」

 レベル的に?

 怒っているハリーを置いて前に出る。


 さすがに混戦になり、大怪我をする人が出始めた。よろしくない。

 特にガーディアンなどは非常に強い力を持っているようで、ゴブリンたちを蹴散らしているものの、数に押されて大技を出せず、行き詰っている様子だ。雰囲気的に彼らは魔力での身体強化もしてそうだ。

 戦闘の合間を縫って負傷者に回復魔法をかけていく。しかしこのままでは埒が明かない。

 俺についてくるヴィーがその辺のゴブリンを殴り飛ばしているが、数はまだまだいるのだ……ん? ヴィーってもう20匹くらい吹き飛ばしてない? すでに2割減?


「ガッガッガッガッガ」

 その時、ズシズシと、街陰からひときわ大きいゴブリンが笑いながら歩き出てきた。

 戦場の空気が変わる。

 浅黒い肌に醜い顔、太った身体、蟹股の足に汚い笑い声。一般的には小さいわりに力のあるゴブリンだが、こいつは身体もでかい。人間と変わらないサイズだ。という事は力も相応に強いに違いない。

 あれがゴブリンロードか。

 ゴブリンを指揮し、自らも強靭な力を持つと言う。

 特に、今回のゴブリンロードは謎の言語を使って的確な指示をするという話しだった。

 今の戦闘の様子を見ると、かなり細かい指示まで出せるのだろう。

 得たいの知れない迫力がある。

 これが、ゴブリンロード…………。


ついにゴブリンロード戦始まりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ