1章 -50- おっしゃる通りでございます。
準備をして、街中を駆けていく。
急ぎなので南雲はおんぶだ。宿に置いていくことも考えたが、混乱状態だとどこが安全かも分からない。一緒にいる方が良いと判断した。魔力を身体に流し、強化して一気に駆け抜ける。
メディーは謎の飛行術ですぐ横をツイィィィィとついてきて、ヴィーは普通に走っているが俺と変わらない速度を保ってついてくる。
ミズキたちからの情報をまとめると、現在城門を突破されてから30分ちょっと経っているらしい。
突破されたのは街の貴族たちが住んでるエリアに近い門で、俺たちが泊まっている宿から離れた門だった。
だからこっちまでの被害に時間がかかるってことか。
被害が遠くても街中の情報は早く駆け抜けるようで、被害が出たエリアから逃げるように住民たちが走ってくる。
ぶつからないようにしつつもとにかく急いで走り抜ける。
「死人が出ないようにな! ゴブリンも殺しちゃだめだよ! たとえゴブでも五分の魂ってね!」
走りながら重要事項を伝えておく。
やっぱり動物愛護団体とかに訴えられそうなことはしないほうが良いし、したくない。
生き物は大事にしよう。
「あら、ゴブリンもダメなの?」
害獣だって、よっぽどのことがないと射殺しないのだ。そう気安く生き物は殺しちゃいけない……
あれ? でも城門突破されてるって事はよっぽどなんじゃないの?
警備隊の人とか、大丈夫なのだろうか?
「なるべくね! なるべく! 汝殺すこと無かれだよ!」
「仕方ないわねぇ」
そんな会話をしながらも走る。
あ、今追い抜いたのハリーたちかな。まあいいや。
現場に着いた。
完全に乱戦状態だった。
城門は完全に破壊され、出入り自由な状況だ。
小柄で浅黒くてぼてっとした腹の人型の何かが何十匹とうごめいている。
あれがゴブリンか。小さいけど見た目キモイな。そして汚い。
城壁警備隊がわらわらと集まり、ゴブリンたちを押し返そうとしているがなかなか上手くいかないようだ。
「不思議なゴブリンね」
メディーさんが不思議そうに言った。
通常のゴブリンは棍棒くらいしか武器は持たないそうだが、ここにいるゴブリンはみな楯や短剣、槍を持ったやつまでいる。しかも5匹ずつで連携して攻撃をしていたりする。
やはり普通のゴブリンじゃないらしい。
むしろ、城壁警備隊の方がチームワークを崩され、右往左往しているように見えるくらいだ。
やはり、ゴブリンロードと呼ばれている特殊固体が指示を出しているのだろう。これは警戒が必要だ。
「なっ!? 坊主! なんでこんなところに! さっさと逃げねえか!」
ガルドさんも戦闘に加わっていた。息を整えるために交代して下がってきたところで目が合った。
「俺たちも参戦するよ」
「はあ? 武器も持たずに何言ってる。これは遊びじゃないんだぜ。下がってな!」
………………確かに。
俺、まだ武器持ってなかった。手ぶらだ。
むしろ南雲サンという荷物を背負っているくらいだ。
何で昨日武器買いに行かなかったの? 武器くらい持っとこうよ冒険者(笑)でも!
横に並ぶメディーもヴィーも武器は持っていない。
ガルドさんの鋭い指摘に反論できず固まってしまった。
「俺たちは武器を持ってきたぞ!」
ショックを受けている俺の横からハリーが飛び出してきた。
三人とも冒険者スタイルで、それぞれ剣と弓と魔法の杖を持っている。うん。どう考えてもこれが闘う準備だよね。
片や、こちらのチームは誰も何も持っていない。どう見ても一般市民だ。これは装備を見直す必要があるな。
「ハリー坊……、ちっ。坊はそこの坊主たちを守っててくれ! もうすぐガーディアンも到着する!」
ガルドさんはそう言い残して戦闘に戻っていった。
「何故俺を戦闘に参加させない! ……しかし、ナグモさんをこんな戦場に置いて行く訳にも……」
ぶつぶつ言いながら突撃は諦めたようだ。
「私たちもサポートするからね!」
マリーさんとエリーさんもふんすふんすとやる気をあらわに言ってくる。
ほっこりするけど、この人たちのサポートで大丈夫だろうか。不安である。
まあ、確かにガルドさんの言う通りだ。準備不足の俺たちが参加しても足を引っ張るかも知れない。
それに、ガルドさんたち城壁警備隊の人たちも頑張って闘っており、決して防戦一方という訳でもなさそうだ。
陣形こそ綺麗に組めてはいないが、交代で戦闘に入り、体力を温存しながら回せている。
途中途中で雷撃や炎弾などの簡易魔術を放って敬遠しつつ、剣や槍で直接押し返す。
加えて、城壁警備隊より力のあるガーディアンが参戦に来てくれるのだ。問題は無いだろう。
見えている範囲のゴブリンは40匹前後。これくらいなら何とかなる。ゴブリンロードは様子見なのか、特殊な個体は見当たらない。100匹はいるって話しだったので、残り60匹くらいは残しているのか。
んー、これだけ大規模に攻めておいて、様子見ってあるのか?
遅くなりました。
宜しくお願い致します。




