1章 -46- 女神様の教えだからさ!
痛い食事を終了後、とりあえずさくっと宿を出た。
だって居たたまれない。
考えると朝食も外で取れば良かったのだ。今ごろ気づいても後の祭りだが。
目的も無く宿を出たので、とりあえずは散歩と言うことにした。
それにしても、朝食後すぐに宿を出たのでまだ朝が早い。
昨日見ていた街中とは少し様子が異なるのが新鮮だ。
朝市みたいなのも出ているし、出勤中なのか昼や夜よりせかせかと人が歩いていく。
ビジネススーツこそいないが(いる訳ないが)みんな仕事着だったり制服だったりで仕事人といった感じだ。
誰もが胸ポケットに例の女神様像を入れているので違和感が半端無いけど。
メディーも街中はしばらくぶりだったようで、女神信仰の流行に驚いていた。
街の広場までやってきた。
開けた空間の真ん中に女神像が立っていて、そのまわりで多くの人が手を合わせて女神像を拝んでいる。
広場の外周には出店やベンチが並んでおり、多くの人で賑わっている。
「ん? なんかあいつ日本人ぽいな」
その広場の大きな女神像の一番前で手を合わせている男がいた。
黒髪で平坦な顔。
全体的に堀の深い西洋人的な顔が多いこの世界ではすぐ目に付いた。
大学生くらいの見た目で凄い太っている。デブだ。そしてニキビとメガネ。まだ割と涼しいのに汗もかいている。
もちろん胸ポケットには女神像。
典型的な……
『あいつ精神汚染かかってないね』
『そうですね。犯人っぽいですね』
ミヅキさんとカグラさんがなにか申している。
この街を覆う謎現象の犯人だとでも言うのだろうか。女神信仰の元凶。
いやいや、こういう犯人ってもっと捜し歩いて情報集めて見つけるもんじゃん?
朝の散歩で出会うわけないし。絶対違うだろ。ありえなーい。
「ユータ。彼、女神様にお詳しいんじゃないかしら」
メディーさんまでそんなことのたまい出した。
「キモッ」
南雲サンのはただの感想だ。
「マヂで?」
真犯人発見の巻?
どうしよう。
精神攻撃はレジストできるみたいなので、とりあえず話しかけてみるか。
「あのー」
「うひ? どうしたでござるか?」
ござる……
てか「うひ?」って何だよ! どういう返事だよ!?
振り返った男はやはり日本人のようだった。
一応こちらの言葉で話しかけたけど、こちらの言葉でも会話できるようだ。
特に慌てた様子もなく、きちんと対応してくる。
何となく、俺の嫌な想像が的中していた気がしてきて凄く嫌な気持ちになってきた。
「お宅がこの女神信仰の犯人さん?」
とりえず直球で聞いてみる。
「犯人? 言い方が気になるが、拙者がこの女神信仰の立役者でござるよ」
拙者……ござる……
って、どう見ても忍者系の体系じゃねえよ! 侍でもねえよ! よりによってなんでそれ選んだんだよ!?
そして残念なことにこいつが犯人のようだ。
立役者とか言ってるし。
「ええと、いろいろ聞きたいんだけど、何でこんなことを?」
聞きたくなかったが聞くしかない。
予想通りの返事だったらこいつをひっぱたこう。
むしろ敵意を持って攻撃してきてくれるくらいの方がよっぽど良い。
何かたくらみがあって、この町を支配しようとか、世界をこの手にとか。
絶対にその方が良い。
決して澄んだ瞳で語らないで欲しい。
何故ならこいつは精神攻撃をする側で、されていないのだから。
これはもう絶対世界征服志願者だ。間違いない。
走馬灯のように俺の頭の中を思考がよぎってくる。なんで走馬灯なんだろう。答えを聞いたら死ぬの?
男が口を開くまでの一瞬が異様に長く感じる。そこまで俺の意識は現実を受け入れたくないらしい。
「何でって――」
ついに男がしゃべり始めた。
「女神様の教えだからさ!」
真性かよ!!!
休みなので日中の更新してみました。
キリが良かったので短めになってしまいました。
この続き部分も速めに更新しますので、宜しくお願い致します。




