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1章 -44- テンプレ的(?)撃退


 のだが……

「あぶっ!?」

「ぐあっ!?」

「ひぐっ!?」

 路地裏から飛び出そうと駆け抜けていった男たちが三者三様の声を上げながら路地裏に帰ってきた。


 というか吹き飛んできた。その勢いで地面を転がり、俺たちの前で止まる。

「なんじゃ。面白そうなことをしておるから食事を中断してきたのに、もう終わりなのか?」

 ヴィーだった。

 どうやら路地裏から飛び出してきた男らを殴って押し戻したらしい。

 “竜の目”でこちらの状況を把握し、追いかけてきたようだ。

「な、何なんだこのガキ!?」

「ひぃぃぃぃぃ、もう勘弁してくれぇぇぇ」

「何て力なんだよ!?」

 小柄な少女にあっさり殴り飛ばされて目をむいている3人。


「誰がガキじゃと? もう一発いっとくかの?」

 拳をボキボキ言わせながら路地裏に踏み込んでくるヴィー。

 男たちが震え上がる。

「おい、もう終わったんだよ。帰してやるところだったんだぞ?」

 あまりに可哀想なので助け舟を出す。

「えー、つまらぬのじゃ。少しくらい良かろう?」

 駄々っ子みたいなことを言っている。結局ガキじゃねぇか。

「ダメ。もう終わりです!」

 断固拒否する。

 男たちが俺を振り返った。その目になにやら感謝やら感激やらが見て取れるのだが気にしないことにしておく。

「そうよヴィー。もう終わりなのよ」

 メディーもそう言ってくれたのだが、

「いやじゃー! わらわも何かしたいのじゃー!」

 ただのガキだった。


「ヴィー、お座り!」

 メディーが少し声を張った。

 その声に魔力を感じた気がしたのだが、

「うぎゃっ!?」

 ヴィーが急に犬のような姿勢で座った。様子からして意に反して身体が動いたみたいだ。

 魔改造版“隷属の首輪”の効果だろう。

「うぐぐぐぐっ! 身体が動かぬのじゃぁぁぁぁ!」

 必死に抵抗しようとしているが、身体は思い通りに動かないようだ。

 ドラゴンって魔法が効かず、状態異常へもレジスト能力も高いはずなんだけどなぁ。

 メディーさんってマジで何者なんだろう。まあ、聞かないほうが身のためだと思うので聞かないけどね。


「仕方の無い子ね。あなたは加減が出来ないのだから大人しく座っていなさい」

 状況からメディーが何かをしてヴィーの動きを封じたと理解できたのだろう。男たちの目がメディーを恐怖の対象として見ている。

 先ほどいきなり出現した氷柱もそうだけど、怪力少女を言葉一つであっさり封じてしまったメディーは、もはや悪魔か何かのように見えるのだろう。


「殺さないように加減しながらわたしがやるから、そこで見てなさい」

 何をしようと言うのか。さっきからもう終わりって話してるよね?

 当然のように歩き出すメディーさん。

「だから帰すっつってんだろ!?」

 思わずつっこんだ。ツッコミの勢いでメディーさんの頭をはたいてしまった。

 男たちが凍りつく。魔法でではなく、その場の空気で。

 そんな危険な女を叩いて大丈夫なのかとその目が語っている。

 俺の精神も一気に冷え込んだ。つい気を抜いてしまったけど、メディーさんはラスボスみたいな存在だ。ノリで頭とか叩けるような人ではないという俺の認識。

 叩かれた勢いで顔を伏せた状態で固まっているメディー。

 これはヤヴァイかも知れない……と思ったが、

「あぁん。叩くなんて酷いわ。でも、ユータがそういうプレイがお好きだと言うなら従うけど?」

 にこやかに言うメディーさん。怖いにこやかさではなかった。普通に笑顔のご様子。

 むしろ少しご機嫌なくらいだ。何が嬉しいのか。

「断じてそんな性癖は持ってない!」

 メディー的には大丈夫なラインだったようだ。ひと安心。

 というか、彼女の発言が本当なら、むしろオッケーラインけっこう広いのでは?

 そういうプレイがオッケーとか、思わずいろいろイケナイことを考えそうになってしまうけど、今はそういう状況ではない。


「というか、帰すって言ってんじゃん。何する気だよ」

「あら、ちょっと頭の中をいじるだけよ。今後他の連中にも手を出されないように広告塔になってもらうだけ」

 にこやかにそんな事を言ってくる。

「……メディーも自重してくれよ」

 納得いかないわ……と言いながらしぶしぶ引き下がるメディーさん。

 男たちを見ると非常に複雑な瞳で俺を見ていた。


 凶暴な怪力少女 <<< 危険な魔法使いお姉さん <<< 俺


という図式が出来上がったようだ。しかし、恐怖を止めてくれた救世主のようにも見えるのか、その判断を迷っている様子だ。

「ほら、もう行っていいから、さっさと帰って大人しく寝ろ!」

「「「はいぃぃぃぃ!!!」」」

 3人はびしっと立ち上がり、俺に対してばっちり敬礼をして、全力で回れ右。先ほど以上の速度で路地から出て行こうとする。


「あ」

 ビクゥッ!!?

 俺がふと思い出して声を漏らすと、敏感に反応した3人が固まった。ギギギギとかいいそうな感じでこちらを振り向く。

「そうそう、俺たちには手を出さないほうが良いってさりげなく広めといて」

「「「イエッサー!!!」」」



 それにしても、今回は気を抜いていた。

 この街の人間は謎の女神信仰で非常に良い人ばっかりだけど、外から来ている人間はそうではない。

 多少ガラの悪いのも混じっているようだ。

 そしてトラブルは転がり込んでくるのではなく、俺の周りで拡大する。多少のレベルの問題が俺たちに絡んでくると、身近な人たちが多大なレベルに引き上げてしまう。

 今度から注意しておこう。


 しかし、ヴィーやメディーは自分で何とかするだろうけど、南雲が心配だ。

 今回は俺の背後に隠れっぱなしだったけど、常に一緒とはいかないのだ。

 そう考えると南雲の身の安全を考える策も講じておく必要があるのか。

 そんな事を思いながら宿に帰る俺たちだった。


まだまだ続きます。

やっとメインメンバーって感じですが、もっと仲間は増える予定です。

ぜひとも今後もお付き合いください。

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