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1章 -42- テンプレート襲来


 夕食の時間。

 俺たちは宿の食堂に来ていた。



 あれから森の中を歩き、程なく城門にたどり着いた。

 列に並ぶと、メディーさんの美貌が人目を引きまくったが、美人過ぎるが故か声をかけてくるヤカラはいなかった。

 メディーに限らず南雲も美人だしヴィーも美少女と言えばそうだ。しかし溢れ出るエロスのレベルが違うので、視線はやっぱりメディーさんが一番集めていた。

 門まで到達すると、身分証の内容でまた笑われつつ通行許可をもらい、南雲も普通に通った。

 そこで問題になったのがメディーとヴィーだ。

 身分証など持っているのだろうかと不安に思ったのだが、何事もなくメディーが身分証を取り出した。二人分。

「さっき落としていたわよ」

 と言いながら手渡していたが、どう見てもヴィーは何だこれ?な顔だった。

 ちらりと見ると、身分証には文字が入っていなかった。名前も職業も空欄だ。

「どうぞ」

 にも関わらず、メディーはその身分証を堂々と手渡す。

 その瞬間、メディーの赤紫の目が光った様な気がするが気のせいだと思うことにする。

 その後、文字のない身分証を見て何事もなかったように通してもらえたのだが、問題はないのだ。

 俺の視線に気がついたメディーがうふふと笑っていたが、何もなかったのだ。うん。問題なし!


 そして宿屋に帰ってきて、今度はメディーとヴィーの部屋を確保した。

 俺たちの隣の部屋は誰かが入っていたハズだが、急遽空きになったとか。

 宿屋の受付で話しをしていたメディーの目が光っていた気がするが気のせいだ。


 何事もなかったかのように部屋に荷物を置きに行ったメディーとヴィー(荷物もないのに何故かついて行った)。

 その後、奥から「いきなりなんなんだ!? ここは俺たちの部屋なん…………」とか聞こえてきた気がするけど、すぐに静かになって荷物を片付けるような物音が響いていたので、きっと気のせいだ。


 部屋から戻ってきたヴィーが何か喚いていた。

「うううーーー、これをとって欲しいのじゃぁぁぁ」

 涙目で首元の何かを引っ張っている。首輪だった。

「なんだそれ」

「うふふ。ちょっと特殊な“服従の首輪”よ」

 ドラゴンにも効果が出るよう魔改造した“服従の首輪”らしい。

 その効果は名の通り。主従関係を構築し、絶対服従にするもの。

 そもそも“服従の首輪”なんて危険なものの存在も初耳なのだが、ドラゴンって魔法効かないんじゃなかったっけ?

 そう思って聞いてみたものの、返ってきたのは答えではなく、

 「だって危険でしょう? この子」

 うふふと笑いながら当然のように言うメディーさん。

 まあ、確かにまたドラゴンモードでじゃれ付かれたらたまったものではないが。

「何故じゃぁ! 何故わらわでも外せんのじゃー!?」

 必死に取り外そうとしているが、びくともしていない様子だ。

 魔法耐性のあるドラゴンに効果があるという異常事態とドラゴンの腕力をもってしても千切れない首輪に慌てふためいているヴィー。

 やっぱり怖い、このお姉さん。

 この短時間で思ったことだが、この魅惑のお姉さんにもブレーキがあったほうが良い気がする。

「俺はそれをメディーに付けときたいよ」

 思わず言葉が漏れてしまった。

「あら。ユータに付けてもらえるのなら喜んで付けるわよ」

 そんなこと言っているが、この人なら100%効果が無効化されると断言できる。

「……やめとく」

 何かしらの抜け道を使ってレジストしそうだ。

「あら、残念。でもそんな首輪なしでも“服従”してあげるから安心してね」

 ウィンク一発。

 鼻血が出た。



 そんなこんなで食事となった。

 相変わらず美女ぞろいの俺たちは、周囲の視線を集めている。

『嫌な視線も混じってるわね』

『そうですね』

(そうなのか?)

 ぶっちゃけ、ぶってるだけの中二病一般市民には“嫌な視線”だとか“殺気”だとかは感じらないのだ。

 ミズキたちが警戒を始めた。

 正直俺には危険はかぎ分けられないが、精霊さんたちが言うのならそうなのだろう。

『興味本位だけじゃないのがいるわね』

『ええ。これは手を出してきそうですね』

 マジか。

(どうするんだよ)

『寝込みを襲われても面倒だし』

『誘い出しましょう』

(大丈夫なのか?)

 ミズキたちいわく視線の主はただのろくでなしらしい。宿に入っている旅の荒くれ者たちだ。

 視線を隠せてないあたり、力量が露呈しているそうだ。

 そもそも、俺の周囲数キロには危険な気配はメディーとヴィー以外にないらしい。

 同じテーブルで飯食ってるヤツが一番危険てどうなのよ。


 しかし、旅の荒くれ者って……

 役所に行った時はちょっとテンション上がって期待しちゃったけど、実際これから相手をすると思うと気が引ける。

「はあ……」

 思わずため息が漏れた。


「うふふ。ユータ、少し外に出ない?」

 そんな俺に、にこやかに話しかけてきたメディーさん。その笑顔がなんとなく怖い。

 どうやら彼女も視線には気付いているようだ。さりげない動作で視線の元を指してきた。

 考えることはミズキたちと同じらしい。


「ああ、良いね。南雲も一緒に行こう」

 まだデザートを食べていた南雲にも声をかける。

「え? なんなの?」

 事態を飲み込めていない南雲だったが、ゼリーみたいなデザートをさっと流し込み、困惑しつつも席を立った。

 メディーさんと南雲を連れ立って宿の食堂を出る。

 ヴィーはまだ食べていたので店においてきた。あいつは見た目的にも、実力的にも大丈夫だろう。

 俺たちは宿屋を出て、街中を歩き出した。


 まだ日が暮れてからさほど時間はたっておらず、街中には人が溢れていた。

 活気のある町で、夜でも出店などが並んだままで、そこかしこで良い匂いが漂ってくる。

 街を歩く人たちも明るく、いろんなところで挨拶などの声が聞こえる。


「あそこがいいんじゃないかしら」

 程よい路地を見つけてメディーさんが提案してきた。

「お、いいね」

 俺も同意して路地裏に入っていく。

 人気がなく、ちょっとしたトラブルに対応するならもってこいだ。

 マンガとかでも良くあるシチュエーションにぴったりだ。

 路地に入ってすぐ、背後に足音が続いて入ってきた。

「ようよう、お兄ちゃん。美人はべらせてどこに行くんだーい?」

 本当にテンプレだなっ!?


更新実行ボタンを押せてなかった疑惑……


更新遅くなりました。

もしも待ってくれていた奇特な方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません。


ブックマークも新たに1件、ありがとうございます!

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