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1章 -38- ハアハア


 落ちていくドラゴンを追いかけるように俺も地上へ向かう。

 轟音と供に、ドラゴンは地上へ墜落した。


「嘘でしょぅ?」

 いつの間にか後を追ってきていたお姉さんも地上へ降りてきていた。

「はぁ、はぁ……なんとか……」

 地上でどれだけの動きができるかは謎だが、自由に飛び回られるよりはマシだろう。

 それに、地面を使って踏み込んだほうが、拳の威力も上がるのだ。土があればミザリーのサポートも期待できるだろう。ここからのほうが状況は良いと思いたい。


「グルルルルル」

 やはり、落ちた程度ではダメージにならないらしく、ドラゴンは立ち上がってきた。二足歩行で立ち、尻尾でバランスをとっているようだ。

 気持ちフラフラしているように見えるのは、まだ頭部へのダメージが残っているからだろう。

 攻めるなら今だ。


 ミザリーが土を操り、ドラゴンの足元を固定した。

 動きの止まったドラゴンへ突っ込む。

「おらおらおらおらおらおらおら!!!」

 どこぞの背後霊が出てきそうな勢いで拳を叩き込んだ。

 ボディを連打しつつ不意に隙をついて頭部へ打ち込む。もっとも、ドラゴンの腕は身体に対して小さく、隙もなにもガードはがら空きだ。俺の拳は全弾命中している。

「グァア……、グアアァ……」

 ドラゴンから情けない声が聞こえてきた。そして、


《も、もうやめて欲しいのじゃ!》


 直接脳内に声が響いた。

「え?」

 いつもの精霊たちの声とは違い、内からではなく、外から響いてきた気がする。

 しかも聞いた事の無い声。

「なんだ?」

《参ったのじゃ! 参ったのじゃ!》

 思わず手を止める。

 物理的に音を聞いているわけではないので音源方向とかは不明だが、何となく前方から聞こえている気がしたのだ。


「もしかして、お前か?」

 攻撃が止んだ瞬間、首と尻尾を身体に巻きつけ、翼で身体を覆い、完全に丸くなってしまったドラゴン。

《そうじゃ。わらわの声じゃ。さすがにもう攻撃は止しとくれ!》

 脳内に響く声は慌てふためいた感じだった。

「なんだお前、しゃべれるのか」

《直接話を出来るようにするから、しばし待っておくれ!》

 そういうとドラゴンの身体が光り始めた。そしてみるみるうちに縮んでいき、人型の姿となった。


 全身あざだらけの少女がそこにいた。

 絵づら的にNGな感じだ。

 え? あれやったの俺? ボコボコなんだけど……

 身長は低めで、スレンダー。無いわけでないが大きくも無い胸元。赤色の髪が鮮烈に太陽光を反射している。子供っぽさを残しながらも切れ長で鋭い瞳に、犬歯を覗かせて不敵に笑う口元。どう見ても美少女だ。ボロボロだが。

「わらわはゴトバルド山のドラゴン。竜王種のヴィレンターナと申す」

 全身あざだらけで、口からは血を垂らしながらも不敵に名乗った少女。

 驚くことに、やっぱり先ほどのドラゴンだそうだ。

「マジで?」

「驚くことは無かろう。古来からドラゴンは人の姿にもなるものだ。神話でも謳われているだろう?」

 驚く俺に、まあ、一部のドラゴンだけだがと追加説明を入れたヴィレンターナ。

「話しには聞いたことあったけど、わたしもお目にかかるのは初めてね」

 お姉さんも驚いたように言った。

 500年以上は生きてそうなお姉さんでも見たことないとか、そりゃ驚くのが普通でしょ。

 あれ? そういえばこのお姉さんの名前まだ聞いてなかったな。普通に会話に参加してきてるけど。

 まあ、今は空気を読んでスルーだ。


「人の姿を持つドラゴンは、ドラゴンの中でもごく一部の上流種だけだったはずだけど」

「そうじゃ。竜王の血筋のみがその力を持つ。わらわも竜王の血を引く者じゃ」

 ふふん、とふんぞり返る。

 しかしそのぼろぼろの姿では威厳もない。

 というか、あのあざを作ったのはやっぱり俺なのだろうか? 少女をぶん殴ったと思うと気が引ける。

 割とっちゃいそうな勢いで殴ってたんだが、死んでなくて本当に良かった。


「で、そんなドラゴン様が何しに来たんだ?」

 俺は内心をとりあえず置いておきながら聞いてみた。その質問にヴィレンターナが目を輝かせた。

「お主に会いにじゃ!」

 それでわかるじゃろ?的な顔をしている。意味不明だ。

「俺? なんで?」

「忘れもせん、お主に貰った強烈な一撃……。夢にまで見てしまってのう……」

 恍惚とした表情でうっとりと語りだした。


 いわく、ドラゴンとはその類まれなる耐久性故に痛みを知らぬ種なのだそうだ。その中でも竜王種ともなれば、一生の間で痛みを知らぬまま老衰する者も少なくないのだとか。それほどの絶対的な種だった。

 にも関わらず、俺の拳はヴィレンターナにダメージを与えたのだそうだ。

 あの初遭遇時の一撃は、一見ノーダメージのように見えたが、しっかり体内に衝撃を伝え、内臓を破壊していたのだそうだ。それ故にその場での追跡を諦めたのだと。

「あんな感覚、初めてじゃったのじゃぁ……」

 恍惚度合いが増していき、目の焦点がおかしなことになっている。心なしかハァハァ言ってるし。中学生なりたてくらいの外見だが、ちょっとアダルティな感じになってきた。見てはいけない系の顔な気がする。

「で、俺に会ってどうする気だったんだ?」

「それはちょっと遊んでもらおうと――」

 遊びでこれかよ……。周囲を見回すと戦闘の余波で森の各地が抉れている。

 ドラゴンの遊びレベル高えよ! 付き合ってられない。

「――思ったんじゃが、思った以上に食らってしまって、これ以上はさすがのわらわもまずいと思ったのじゃが……あぁ、それにしても効くのう。翼も折れてしもうた……ハァハァ……これが痛み……ハァハァ……」

 自分の身体を抱きしめるようにしてクネクネハアハアし始めた。


 ヴィレンターナのハアハアが怖くなってきたので、とりあえず帰ることにした。

 無言できびすを返し、ハアハア言っているヤツがあっちの世界から復帰する前に脱出を試みる。


本日ブックマークして頂いた2組の方、ありがとうございます!

今後も頑張って更新していきますので、宜しくお願い致します。


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