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1章 -36.5- 魔女の焦り


 女は焦っていた。


(これは厄介ね……)

 先ほどからこちらの魔法攻撃が効果を出していない。

 単純な力押しでは通らないようだ。

 竜王種のマジックキャンセル能力は異常な強度だった。


 並みのドラゴンなら軽く相手をできるし、したこともある。しかし、この竜王種は別格だった。

 今まで戦ったことがなかったが、これほどとは想像もしていなかった。

 手を変え技を変え、攻撃を試してみるが、ことごとく弾かれている。


 しかも、今は小屋の上空で戦っている。

 あれは吹けば飛ぶような普通の小屋だ。

 あまり派手な技を使えば壊れてしまう。


(どうしようかしら)

 小屋への被害を考えて控えていたが、大技を使うしかないかもしれない。

 隙を見せることにはなるが、あのドラゴンの動きから考えれば隙を突かれるようなことはないだろう。

 そう考え、魔力を練り上げる。


「しまっ!?」

 気を抜いてしまったのが失敗だった。

 こちらが魔力の操作に意識を向けた瞬間、タイミング悪くドラゴンは標的を変えた。

 あの小屋を狙おうとしている。

(なんでっ!?)

 慌てて下を見ると、小屋のすぐ脇には先ほどの少年と少女がいた。

 あれを狙ったようだ。

 このタイミングからでは魔法を変更できない。

 結界を張ろうにも間に合わない。

 大事な小屋が……


「任せろ!」

 諦めかけた時、少年が叫んだ。

 何かする気のようだ。

 しかし、竜王種クラスの炎弾を受け止めるなど、普通の人間には不可能だ。

 少年からは魔力を感じたので、多少の魔術かなにかは使えるようだが、大した差はない。

 そう思ったのもつかの間、少年は12枚の結界を一瞬で組み上げた。

(なんなのっ!?)

 しかもその結界の強度はかなりのもののようだ。一見して密度が高い。


 その結界に炎弾が直撃する。

 一瞬で爆炎と爆風が巻き起こり、上空からでは見えなくなる。

 しかし炎は異常な速度で収束していった。


 煙も吹き散らし、地上が見えるようになった。

(あら……)

 小屋は残っていた。

 覚悟していた被害は一つもなかった。

「やるじゃない」

「どーも」

 少年は余裕の表情だ。

(先ほどの緊張した態度は演技だったのかしら)


 こちらも攻撃を再開する。

 大技は使えないが、さっきのように小屋を狙われると面倒だ。

 しかたないがちまちまと攻撃をするしかない。


 しばらく戦闘を続けると、ドラゴンが不意に動きを止めた。

「グルルルルル」

 低く唸りながら目を閉じた。

 ドラゴンの謎の行動に警戒し、手を止める。

 次の瞬間、空がカッと光ったかのように見えた。

 実際には、光ったのではなく、発火したのだ。ドラゴンの全身が。

 体中から炎を吹き出し、もはや炎でできたドラゴンのようになっている。

「何をする気なのかしら」

 ドラゴンなら何度か戦ったことがあるが、こんな動きは初めて見た。

 竜王種は他のドラゴンとはやはり違うようだ。


 見ていると、ドラゴンを覆っていた炎がじわじわと引いていく。頭から順に引いていき、上半身が見え背中が見え腰が見え、足元まで引いた。

(なんなのかしら……)

 自分の中で警鐘が鳴り響いている。危険だという事はわかる。

 しかし、何が起こるのか分からなければ、対応のしようもない。

 結界は張ってある。マジックキャンセル効果のある本体での攻撃でもない限り、ドラゴンの攻撃は通らないはずだ。

 ドラゴンが距離をとっている以上、炎弾などの遠距離攻撃か、全体を吹き飛ばす範囲攻撃、どちらかだ。

 どちらが来るのか……


 次の瞬間、爆発を伴ってドラゴンの姿が消えた。

「なっ!?」

 気が付いたときにはドラゴンの尾が目の前に迫っていた。


前々から挟みたかった女側の視点です。

今更ですが、割り込み投稿致します。お許しください。

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