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1章 -31- 伝説の冒険者に、俺はなった。


「ご一緒に、女神像はいかがですか?」


 どこまで覗き込んでも透き通っていそうな瞳のお姉さん。

 ここは役所の受付だ。

 なんでポテトみたいなノリで女神像薦めてくんの。もうやだこの街。


 役所も結局同じだった。街中同様女神像に溢れている。カウンターや奥の事務机の上、果ては税金で作ったのか外には女神像まで立っていた。ご丁寧に女神様の素晴らしさを伝える説明看板まで出ている始末。

 信仰心は本物なのか、この女神像で町おこし!的なことは考えていないようで、本当に褒め称えるためだけに置いてあった。


 それはさておき、ここに来た目的を果たさなければならない。

 ついに俺の冒険者ライフが始まるのだ!

 オタクたるもの最近の流行には敏感だ。異世界転世。それはロマンだ。マンガを読んで、自分がもし転世したら……なんて考えたことが無いわけではない。まあ、本当に転世するとは思っていなかったが。

 そしてこの転世物には大体2パターンしかないのだ。無能力すぎて必死こいて生き延びていく苦労人パターンと、意味不明に強すぎて人生勝ち組パターン。


 俺にはどうやら精霊さんたちの力が溢れているので……

 ということは!?

 この世界で圧勝チートコース間違いなし!

 ご一緒に、ハーレムはいかがですか!? はい、喜んで!

 マジでこれからが楽しみでーす!

 俺は心底浮かれていた。


「では、ご職業はなんにされますか?」

 受付のお姉さんに聞かれた。

 俺はカウンターにひじをつき、横目でお姉さんを見た。

「冒険者で」キリッ

 ついにこの時が来た。

 ファンタジーと言えば冒険者。夢見た職業になれるのだ。

「え?」

「ん?」

 自信満々に答えた俺に対し、少し戸惑ったような受付のお姉さん。

 もしかして、俺には無理そうに見えるのだろうか。まあ、見た目はただの高校生だ。この世界においても学生というものはあるらしく、ハリーいわく俺たちの年齢だと本来学生のようだ。

 だから今回の身分証の発行は特殊なものらしい。

「……冒険者、で宜しいですか?」

「もちろんです」キリッ

 弱そうに見られるのはいささか不本意だが、弱そうに見えるやつが実は強かった的な展開はむしろ好きだ!

 何なら今すぐ不良どもに絡まれてもいい。さあ来いどーんと!

 しかし、そんなおいしい展開は来ないらしい。まあ現実ってそんなもんだよね。

 仕方ないのでお姉さんを安心させるべく自己申告してみる。

「お姉さん。そんなに心配しなくても大丈夫。俺、こう見えて強いんですよ」キリリッ

「はあ……」

 お姉さんの不安は払拭できないらしく、心配そうな顔をしている。

「本当に宜しいんですね?」

「ええ、もちろんです」キリリリッ

 さあ、伝説はここから始まる!!

 お姉さんは仕方ないかと言った表情で手続きを始める。

 まあ、仕方ない。変な街だが、おだやかな街なのは間違いないので、荒くれ者たちが絡んできて戦闘開始なんてことにはならないのだから。

 実力は隠していてもにじみ出るもの。伝説はこれからだな。


「はい、こちらで手続き完了です」

 あれぇ……???

 身分証は金属プレートのままだった。

 変わっているのは職業欄に“冒険者”と書き込まれただけ。光って数字が浮かび上がったり、能力値が表示されたりとかすることもない。というか職業にあわせたスキルの付与的なものも無かった。

 うん? 俺のイメージと違う……。


 南雲も手続きを終わらせて俺たちは役所を出た。

 ちなみに南雲はいろいろ説明を聞いて商人になっていた。ギャルの癖に手堅い進路だな。

「うっさい」

 はい、すみません。


 役所を出てきたところでガルドさんと遭遇した。

「おう、お前らじゃねーか。無事に手続きは出来たのか?」

 仕事上がりにたまたま通りかかったらしい。

「おかげさまで」

「そらぁよかったな。んで、お前ら職業は何にしたんだ?」

「アタシは商人です」

「おお、意外と手堅い仕事をするんだな」

 ガルドさんいわく、幅広く仕事のできる職業だそうだ。良くも悪くもどんな仕事でもできるということらしい。

 商人登録されていると、物販なども自由にできるそうで、自営業の人なども商人登録をしているそうだ。

「お前は?」

「俺? 当然、冒険者に決まってるだろぅ」キリッ

「え?」

 ガルドさんが固まってしまった。さっきの受付のお姉さんと同じようだ。

「ん? おっさんも俺が弱いと思ってるのか?」

「弱い? 頭がか?」

 うるさいわ。

「頭は良いとは言わないが、悪くは無いはずだ」

「…………」

 南雲は不審そうに俺を見ているが、それはスルーしておく。

「それじゃ何で、“冒険者”なんだよ」

「なんでって、そりゃ冒険するからだろ」

 俺の発言を聞き、ガルドさんは両手で顔を覆って天を仰いだ。

「ハリーが肩入れしてるから何かと思えば、お前もあいつの同属なのかよ!」

「ちょっ、誰が同属だ!」

 あんなザコキャラ勇者モドキと一緒にしないで欲しい。

「ありもしない職業を職業欄に書いちまう辺り十分同レベルだよ!」

 ガルドさんでも許さんぞ!と憤慨していたものの、聞き捨てならないセリフが聞こえた気がする。

「ん? ありもしない職業?」

 ありもしない職業……俺が選択した職業のことか?

 え? 今の会話の流れだとそうなりますよね?

「え、お前さん、そんな職業があると思っていたのか?」

 心底危ないヤツを見る目でこっちを見てくる。

 ちょっと待って。雲行きが怪しくないかい?

「え? じゃあハリーたちみたいなのを何て言うんだ?」

「ただのボンクラだろ」

 NOOOOOOOOOOO!!!!!


 この世界に、冒険者という概念は無かった……


最近書き直しばっかりで先が書けてないのでそっちが心配でなりません。

が、とにかく書いてるところに追いつくようにザクザク上げていこうと思います。

何卒宜しくお願い致します。

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